いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

インデックス投資のいちばんの難点は「面白くない」ことだと思う。


anond.hatelabo.jp


すごいなあ、羨ましいなあ、と思いながら読みました。
僕が経済とかお金とか資産運用に興味を持ち、株を買いはじめてから、まだ1年半くらいしか経っていないのですが、何度も「もう少し早く、お金を運用する」という意識を持っていれば……と思っています。
とはいえ、実際に全く何もしていなかったかというと、15年前くらい、結婚する少し前くらいに、投資信託とか、元金保証の10年ものの保険商品とかを銀行の人に勧められるままに買ってはいたんですよね。
投資信託は毎月分配金が出るタイプのもので、調子が良いときは、年に5%くらいの分配金が出ていたのですが、どんどんジリ貧になっていきました。分配金なしの複利のものにしておけば……と今さら嘆いても後の祭り。それでも、損してはいないのですが。
10年ものの元金保証をうたった保険はもっとひどくて、10年後に戻ってきたのは、元金+元金の0.1%のお金でした(元金保証でよかった……とも思ったけど)。
銀行が勧める金融商品というのは、基本的に銀行が儲かるものなんですよね。

考えてみたら、「スマホ以前」は、資産運用というのはけっこうハードルが高いものでしたし、株がスマホで買える時代になったのも、この10年くらいのものですよね。そもそも、スマホが普及したのがこの10年くらいですし。
(日本でiPhone3Gが発売されたのが2008年7月)

www.itmedia.co.jp


株の1単元が100株に完全に統一されたのは2018年10月です。

www.jsda.or.jp


冒頭の増田さんは、すごく先見の明があったのだなあ、という気がします。

僕が買った15年前くらいの時点では、「毎月お金がもらえる投資信託のほうが良いですよね!」って言われて、「そうですね!」って即答するくらいの知識しかありませんでしたし、そもそも、投資なんて怖いな、と思っていたのです。
いや、自分でやってみると、本当に怖いんですけどね実際。


fujipon.hatenablog.com

 コロナ禍のなかで、いちばん株価が下がっていた時期は、一日に何回か株価を確認するたびに、10万ずつ資産が減っていきました。
 「更新」のワンクリックで資産がマイナス10万!
 そういう状況になると、「良い会社の株」とかはあまり関係なく、どの銘柄も死屍累々、という感じだったのです。
 「地合い」が激烈に悪化すると、泡沫投資家にできることなど、何もありません。
 可能な選択は、さっさと「損切り」して、少しでも多くの現金を手元に残すか、「長い目でみれば、人類は経済成長を続けていく」という信念のもとに、今持っている株を塩漬けにして、いつか来るはずの「復活の日」を待つか、しかない。

 自分で体験するまで、僕は「じっとしている間に、どんどんお金が減り続けている状況」が、どんなにきついか、まったく想像できていなかった。


僕は、コロナショックは、これまでの感染症の歴史を考えても、人類が滅亡しないかぎり長くても数年くらいで収束していく、と考えてはいたのです。
大きな戦争や恐慌に比べれば、悪影響は限定的で、回復も早いだろう、と。

でも、コロナ下で、多くの人々が生活苦を訴えているにもかかわらず、株価がそれをあざ笑うかのごとく上がっていくとは、全く予想していませんでした。
 
アメリカを中心とする世界各国、とくに「先進国」では、公的資金を市場に投入する(企業の株を買い支える)ことによって、株価の下落を防ぎ、不況を避けようとしたのです。
その結果として、たくさんの人が仕事を失い、収入が減り、多くの企業も減収・赤字決算となったにもかかわらず、株価はコロナショックで急落したあとは上昇傾向が続き、最近は「この30年間の最高水準」で日経平均は推移しています。

いいのかこれ。実体経済とあまりにも乖離しているのではないか?

そういう状況だからこそ、みんなが「投資で稼ぎたい」と前のめりになってお金を株式市場にジャンジャンつぎ込み、さらに株価が上がっているのです。
なんておそろしいチキンレースなんだ、と思うのと同時に、ネットで「億り人」なんてイキっている連中をみると、「なんでこっちはコロナのリスクを負って日々きつい仕事をしているのに、むこうのほうが稼いでいて、バカにされているんだろう……」と悔しくもなるのです。


公的資金を使って、「株価を維持する」という政策が本当に正しいのだろうか?
とはいえ、コロナ禍のなかで、「積極的に大規模公共事業を推進して雇用を確保する」なんて政策はやりにくいでしょうし、「お金配り」にも限界がある。「企業を助ければ、そこで働いている人たちも救われる」という考え方は、まさに「日本的」ではありますが、これより良い方法があるなら教えてくれ、と言われたら、僕には思いつかないのです。

ひとつ言えるのは、新型コロナは、これまでの戦争や疫病とは異なる「格差をさらに拡大するカタストロフィ」になっている、ということです。


fujipon.hatenablog.com


「r>g」の傾向は、さらに拡大していく一方です。



けっこう脱線してしまいましたが、冒頭の増田さん(はてな匿名ダイアリーの著者)の凄さは、「インデックス投資」がこんなに話題になる前に、その有効性を意識し、目先の分配金にとらわれずに、着実に資産を増やす選択をした、ということなんですよね。


money.rakuten.co.jp


個人的に、インデックス投資のいちばんの難点は「面白くない」ことだと思うのです。

「何もしないで資産が増える」と言う売り文句は、魅力的に聞こえるのだけれど、株価の上がり下がりに一喜一憂したり、自分の判断で買った株が暴騰したり、というようなアドレナリンがじゅるじゅる出るドラマが、インデックス投資には存在しません。

お金が増えた減ったって、命の次っていうくらいで、なんのかんの言っても、人生のアクセントとしては最強クラスなんですよ。
そういう世界を知ってしまうと「何もしない」というのは、かなりの忍耐を必要とするのです。

上がっているときは良くても、下がっているときは、「もうやめようか」と考えてしまいがちだし、人生、急にまとまったお金が必要なことはけっこうあります。病気や事故は、誰にでも起こりうる。

そして、今、2021年2月はじめというのは、ある意味「1990年代はじめのバブル崩壊、2008年のリーマンショックをはじめとする日本経済のあまりにも長い停滞期の果てに出現した、この30年間でいちばん株価が上がっている時期」でもあるのです。

上がり続ける株価はない。ただ、ここがピークかどうかもわかりません。
みんなが「まだ上がる」と信じて買い続けているあいだは、上がり続ける、とも言える。
実際、ものすごく長い目でみれば、人類の経済活動の規模は右肩上がりが続いているわけですし。

ひとりの人間にとっての時間の感覚としては、3か月だって含み損(株価が買った価格よりもマイナスになっていること)に耐えるには、けっこう長い期間ではあるのです。10年待てば回復するよ、とか言われても、10年後まで生きている保障はないし、あの世にまでお金を持っていくこともできない。食べたいものを自分で噛んで食べ、行きたいところに自分の足で生ける時間は、案外短いものでもあります。

そういう意味では、僕の人生は、無駄遣いまみれで、まとまったお金は残せていないけれど、それなりに楽しんでもきたので、そんなに悪くはなかったのかもしれませんね。こんなことを書くと、死亡フラグが立ちそうですが。

僕はウェルスナビというロボアドバイザー(AIによる投資システム)も1年半くらい前から利用しているのです(「お試し」程度の金額です)。
去年の春、コロナショックの時期には投資額から大きくマイナスになって、毎朝溜息をつきながらグラフを眺めていたのですが、今は20%くらいのプラスで推移しています。

以前、有名投資家とAIが投資成績で勝負したが、ほとんどの投資家よりもAIのほうが高いパフォーマンスを示す、という話を聞いたことがあります。
個人投資家の9割は株で負ける、とも。

これからどんどんAIの精度が上がっていけば、「人間が、一攫千金を狙って自分でやろうとすればするほど負ける」だけではないのか。


景気のいいことばかりネットでは書かれますけど、「勝った人や当たった人は喜んでSNSでアピールするけれど、ダメだった人は沈黙している」だけなんですよね。

ネットで派手にアピールされている投資とか出会いとかギャンブルとかの「大成功した話」は、たいがい、「それに寄ってくる人から搾取したい」という連中の撒き餌だと考えておいたほうが良いと思います。

世の中って、たいがい「つまらないやり方のほうが正解に近い」のですよね。
インデックス投資とかはうまくいく確率が高いけど、一撃でぼろ儲け、みたいなFXや仮想通貨、株の信用取引は、「面白いけどものすごく危ない」。

もっとも堅実な投資って、「継続的に仕事をして収入を得て、毎月少しずつでもお金を稼ぎ、貯金(または投資)し続けること」なんですよね。それだと、「不労所得で生きていける資本家」に成りあがるのは、ほぼ不可能なのだとしても。


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お金が増える 米国株超楽ちん投資術

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