いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

はてなの株が2倍になった。……そして暴落した。


はてな匿名ダイアリー』に、こんなエントリがありました。
anond.hatelabo.jp


このエントリが公開されたのは、2025年6月13日の午前11時10分でした。
僕も自分の持ち株のポートフォリオを眺めていて、「最近、『はてな』の株価、けっこう上がってきているな」と思ってはいたのです。まあ、1単元(100株)だけだし、買値が2553円なので、「含み損がいつのまにか10万円を切っているっ!」というくらいの感じだったのですが。

はてな株』に関しては、配当金もずっとないし、いまはIT系の企業が、IT系であることを理由に高く評価される時代でもないので(最近のIT株はたまに新規公開時にものすごく上がることはありますが、しばらくして確認してみると公募価格を割り込んで悲惨なことになっている場合も多い)、もはや「自分が『はてな』の株主気分を味わうためだけに1単元だけ所有しているファンアイテム」という認識です。

なんのかんの言っても、『はてな』で長年書いてきたし、愛着もある。



fujipon.hatenablog.com

2023年2月の終わりに、『はてな』の決算内容について、(いちおう)株主として、けっこう一生懸命に読んで、分析してみたエントリが上記です。

はてな』の側に立って考えてみると、『はてなブログ』『はてなブックマーク』『はてな匿名ダイアリー』って、「最近はずっと頭打ちで、今後も成長は期待しにくい業務」なのだと思います。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3930/ir_material_for_fiscal_ym/124500/00.pdf

これは、2022年7月期の株式会社『はてな』の決算説明資料なのですが、『はてなブログ』『はてなブックマーク』は、「個人向けサービス:コンテンツプラットフォームサービス」と位置付けられています。

詳しくは開示されている資料を読んでいただければ、なのですが、ちゃんと読む人はほとんどいないと思うので、「コンテンツプラットフォームサービス」の概観をまとめるとこんな感じです。

2022年4月期のコンテンツプラットフォームサービスのユーザー数は、1,183万人(対前半期末成長率:+1.4%)

業績動向:前期比▲7%の減収。 2021年の初夏頃の検索流入減少傾向から変化無く、 アドネットワーク広告・課金の両方で伸び悩み。

ちなみに、2022年4Q(3か月間)の『はてな』の売上7億6700万円の中で、コンテンツプラットフォームサービスは1億1800万円(約15.4%)です。
金額的には、少なくともこの3年間、新型コロナ流行期には、ほぼ横ばいの数字となっています。

「ブログサービス全般が斜陽化しているなかでは、『現状維持』でもよく頑張っているな」というのが実感です。


このときから約2年あまり。
時代を彩った大手ブログサービスが閉鎖されていくなかで、『はてな』は、『はてなブログ』『はてなブックマーク』など、「個人向けサービス:コンテンツプラットフォームサービス」を継続してきました。
『note』の躍進もあって、『はてなブログ』はけっして順風満帆ではないと思うのですが(『はてな』の個人ブログの課金サービスも話題になることは少ないし)、競合は減ってきて、ブログを書く側にとっても使いやすさは洗練されてはいるんですよね。
読んでくれる人が少ない(減った)のが、悩みの種ではありますが、これは『はてな』のせいというより、僕の自己責任でしょう。


さて、冒頭のエントリが出る前の時点で、『はてな』の直近の株価は、1700円近くまで上がっていたんですよね。
そして、2025年6月13日の場中(株式市場が開いている時間帯)に、決算が発表されました。

kabutan.jp


僕はリアルタイムで確認したわけではないのですが、この結果だけみたら、「おお、なかなか良いんじゃない」という感じなんですよ。
しかしながら、市場の評価は厳しかった。

結局、6月14日の『はてな』の終値は前日比マイナス273円(‐16.31%)の1401円。株価のチャートをみると、今年の5月中旬の1300円くらいからどんどん株価が上がってきたのが、ズドーーーンと急降下しました。

これ、そんなに下がるような決算なのかね、とは思うのだけれど、株価って、好決算でも「材料出尽くし(もう上がりきってしまって、今後に期待できない)」とかいって下がることがあるし、逆にひどい決算で「悪材料出尽くし」として、底値になったと上向きになることもあるのです。


はてな』の今回の決算説明資料を確認してみます。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/3930/ir_material_for_fiscal_ym/175399/00.pdf


(このpdfの決算資料、すごく読みやすくつくられているので、興味がある方は自分で目を通していただければと思います。

トピックス
• 受託サービス: 2024年3月末より開始した、マンガビューワのアプリ版「GigaViewer for Apps」を搭載する集英社
の大型マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」運用に伴う当期業績貢献が着実に進行。
• 新サービスtoitta:AIを活用した企業向け発話分析ソリューションサービス「toitta(トイッタ)」を2024年10月に本格
リリース。急速に成長中。
• Mackerel:新課金体系を2024年11月に開始。平均的に+4%前後の価格切り上げ。
• 暗号資産関連サービス:バリデータとして参画することとしたパブリックチェーン「JOC (Japan Open Chain)」がIEO。
早速バリデータ売上を計上。Web3領域での新サービス/新機能を構想する。

現在の『はてな』の収益を支えているのは、売り上げ・収益ともに、出版業を中心とする法人(企業)顧客向けに、ブラウザやアプリでマンガ・小説などを閲覧・購読できるサービスや、一般ユーザーが投稿できるサービスの開発・運用を受託し、供給する「テクノロジーソリューションサービス」なのです。


そして、今回好業績であるにもかかわらず、『はてな』の株価は暴落しました。
少年ジャンプ+』アプリのような大型案件の受注が今後もコンスタントにあるかは疑問です。『カクヨム』などにも『はてな』のサービスは使われているのですが、電子書籍系のサービスも、とりあえずひと通り行きわたってきた印象で、今後の成長性に不安がある、ということなのでしょう。

安定して高収益・高配当を継続している大企業ならともかく、無配当のIT企業である『はてな』の場合「成長性」が乏しいとみられれば、どうしても売られてしまいます。


ちなみに、僕をはじめとする、「はてな民」の心のよりどころである「コンテンツプラットフォームサービス」(『はてなブログ』『はてなブックマーク』などの個人向けのネットサービスは、「近年はなんとかユーザー数は横ばいで、減収傾向」という状況です。

前年同期比▲10%の減収。登録ユーザー数推移は引き続き堅調だが、引き続きアドネットワーク広告で減収。2021年の初夏頃以降で減収トレンドが続く。


ブログサービスが斜陽だ、なんてことは、実際に利用している僕も、実感せざるをえないのです。
これを書いている僕自身も、他の人が書いたブログを、ほとんど読まなくなってしまいました。
もはや、「金儲けブログ」すら、死に絶えた(というか、稼げなくなったから、日常系・日記系よりも、早々に滅んでしまった)印象です。


売上をみても、近年『はてな』で成長しているのは、マンガアプリなどの「テクノロジーソリューションサービス」です。
「コンテンツプラットフォームサービス」の10倍近い売上で、『はてな』の収益源となっています。

逆に「コンテンツプラットフォームサービス」は、『はてな』にとって、思い入れのある祖業ではあるけれど、もはや、経営的にはあまり重要ではないし、いろんな問題が起こるリスクも高い。成長性も見込みづらい、という厳しい状況に置かれています。
むしろ、『はてな』が『はてなブログ』や『はてなブックマーク』を続けているのは、「道楽」とか「長年のユーザーへの感謝と未練」みたいなものなのかもしれません。

純粋に一株主としてみれば、「もう、コンテンツプラットフォームはあきらめて、テクノロジーソリューションに人的リソースを振り分けて成長を目指したほうが良いんじゃない?」と考えるほうが自然です。

もう、『はてな』も、何も考えずに、有り金でビットコインを買えるだけ買ってしまったほうが株価上がるんじゃね?とか最近の市場をみていると思うのですが、そんなのわれらが『はてな』じゃないわけで。
(そもそも、ビットコインを大量所有して株価を上げている企業なんて投資するには怖すぎると思うのですが)

ちなみに、冒頭のエントリは「個別株を積み立て枠で買っている」とか、「成長投資枠(年間240万円)だけだとしても『はてな』全振りは大富豪の道楽以外には考えられない」ので、かなり釣り要素が高いと思います。

しかし、この決算でこんなに売られるのなら、僕の『はてな』株の含み損(いま11万円くらい)が解消される日は来そうにないな……でも、株価はもう諦めてるから、ブログサービス続けてくださいお願いします!(と「お願い」しないといけない状況なんだと思う)


fujipon.hatenadiary.com
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