いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「腐ったミカンの味」だったポカリスエットと「個人的清涼飲料水史」


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 インターネットでの発信を長年やってきて感じるのは、パッと思いついたことを書いて、すぐに反応をもらえる面白さ、がある一方で、そういうコンテンツは長持ちしないというか、すぐに忘れ去られてしまうものだよなあ、とうことなのです。
 一時的にPVを稼いだり、話題になったりすることはあっても、何か大きなものを変えるのは難しい。
 僕はまともな論文をほとんど書けなかった人間なので、なおさらそう思います。

 「経験や情報を蓄積すること」そのものが、けっこう他者との差別化につながるところもありますしね。
 そういうのも、AIやビッグデータの解析で、優位性がどんどん失われつつあるのかもしれませんが。

 冒頭のエントリを読んで、いちばん印象的だったのは、ポカリスエットの話だったんですよ。
 
pocarisweat.jp


 ポカリスエットって、1980年のデビューだそうですが、当時の僕にとっての「ジュース」は、家にお米屋さんが届けてくれる『プラッシー』が王様で、たまに友達と駄菓子屋でこっそり瓶のコーラを飲んで「ビリビリするなあ」とか思っていました。わたしには御坂美琴って名前があるのよ!
 当時、コーラのキャンペーンでヨーヨーが流行ったんだよなあ。コーラを飲むと、骨が溶ける、とか言われていたっけ。
 
 いまとなっては、「ああいう味」を当然のものとして受け入れているポカリスエットなのですが、デビュー当時に飲んだ小学生たちは、「なんだか、よくわからない……腐ったミカンのような味……」とか言っていたのです。どちらかというと、「美味しい」というよりは、部活などの練習中に飲むことが許されたのが画期的だった、ちょっと甘味がある飲み物、という感じでした。

 1980年のデビューから40年、というのは、清涼飲料水界では本当にすごいことなんですよね。
 思えば、今もメジャーなコーラやファンタ、三ツ矢サイダーキリンレモンなどは、子どもの頃からずっと存在していたのです。


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「千三つ」
 年間売上高、約4兆円の市場をめぐって、約500社・4200工場がひしめき合う清涼飲料業界は関係者から、そう呼ばれている。
 一年間に登場する新商品は、1000点前後に及ぶ。しかし、その年に生き残れるのは、3つくらいしかないからだという。

 「定番」がものすごく強くて、新商品にとっては厳しいのが、清涼飲料業界なのです。


www.asahiinryo.co.jp


三ツ矢サイダー」は、135年の歴史があり、今でも「定番」として君臨しつづけています。


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 カルピスが発売されたのは、1919年の7月7日ですから、もう100年以上になるのです。


 僕が子どもの頃から、40年あまりのあいだで、「甘いジュース」はあまり好まれなくなり、「お茶」がペットボトルで飲まれるようになりました。
 当初は「家で入れればタダなのに、わざわざお茶を自動販売機で買って飲む人がいるの?」なんて言われていましたが、健康志向や食事と一緒に飲みやすい、ということもあり、夏は家の冷蔵庫に冷えた麦茶、よりも「ペットボトルのお茶」のほうが一般的になっています。「作れば無料(原材料費はかかる)」とは言っても、その「ひと手間」って、案外めんどくさいものなんですよね。

 この40年間に新たに「定番」になった「甘いジュース」って、僕の記憶では、ポカリスエットアクエリアス)、なっちゃんオレンジ、カルピスウォーターくらいなのですが、カルピスウォーターも、発売時には「カルピスの原液を水で薄めるだけでつくれるものを、わざわざお金を出して買う人がいるのか?」と社内でも否定的な意見が多かったそうです。
 もちろん、配合や水質などは厳選されていましたが、僕もここまで息が長い商品になるとは思いませんでした。というか、今は、「原液からつくったカルピス」のほうが珍しいくらいです。


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 こういう本を眺めていると、鳴り物入りで売り出されて話題になったり、一時は爆発的な人気を誇っていたりしたジュースも、たくさんあったのを思い出します。

 アンバサ、メローイエロー、いまでも時々見かける、はちみつレモン、桃の天然水……ファンタも、定番以外にけっこういろんなフレーバーが出ては消えていったんだよなあ。つぶつぶオレンジ、とかも流行りましたよね。
 ドクターペッパーレッドブルのような、けっこう癖が強いけれど、一部で熱狂的なファンに支持され続けている飲み物もあります。

 スーパーやコンビニの新商品棚をみていると、「炭酸入りコーヒー」みたいな、「これは、どこを狙っているのだろう……」というのもときどきあって、数カ月後には投げ売りされているのを見かけます。開発担当者は知恵を絞っているのでしょうし、「定番商品」も時代に合わせて少しずつリニューアルし続けているそうなのですが、時代や世代の変化に比べると、清涼飲料水に対する人々の好みは極めて保守的なのかもしれません。

 
toyokeizai.net
2017年、スーパーマーケットでの売上を集計したランキングだそうなので、コンビニや自販機でのデータを含めると変わってくるのかもしれませんが、売れているのは、意外性がなさすぎるほど定番商品ばかりみたいです。

個人的には、子どもの頃によく飲んでいた『プラッシー』や、僕の地元でよく見かけた、後味がすっきりしたクリームソーダ『スマック』とかをまた飲みたいなあ、と、当時の懐かしさ込みで、思い出すのです。


カルピスをつくった男 三島海雲

カルピスをつくった男 三島海雲

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