ようやくクリアしましたSwitch版『バディミッション BOND』。
とはいっても、「そんなゲーム、出ていたの?」という向きも少なからずいらっしゃるのではないかと思うのです。
アドベンチャーゲーム大好きな僕も正直、体験版を遊んでみるまでは「わざわざ買うほどでもないなあ」「グラフィックも、ちょっと子ども向けな感じだし……」という感じだったのです。
体験版がけっこう面白かったというか、続きが気になるし、これならすぐにクリアできそうだな、最近あんまりゲームをクリアしてないしな、たまにはエンディングでも見るかな、と購入したんですよ。
家庭用ゲーム機のアドベンチャーゲームって、いわゆる「ノベルゲー」意外は、まあだいたい、6〜7時間くらいで終わることが多いじゃないですか。
昔のコマンド入力式マイコンアドベンチャーゲームみたいに、何をやるのかはわかっても、『ATTACH』という言葉を思いつかない、なんていうハードルもないですし。
あらためて考えてみると、テレビゲームの世界で、RPGとADVの人気に決定的な差がついたのって、この2つのジャンルが、ファミコンでどう進化していったか、が大きいのではなかろうか。
結局、『ポートピア連続殺人事件』から劇的な進化を遂げることがなかったAVGと、『ドラゴンクエスト』から、見せ方、ストーリー、ゲームシステムと多彩な分岐と発展をみせたRPG。AVGの場合、レベル上げにかかる時間がなかったため、プレイ時間が短くなりがちだったのも、ゲームが少ない時代には、マイナスだったのではないかと思われます。アドベンチャーゲームがその後、「ファミコンAVG的なコマンド総当たりのフラグ立てゲーム」から脱していったきっかけは、「魅力的なグラフィックと多数のキャラクターと膨大なテキストを用意して、物理的に『読む時間』をかけさせることによって、長いプレイ時間を提供する」というスタイルを確立したことだったんですよね。
その最高峰のひとつが『シュタインズ・ゲート』だったわけです。
アドベンチャーゲームは、長年「けっこう理不尽な謎や、いきなり登場するダンジョンなどで、短くなりがちなプレイ時間を長くする」ようになっていたのです。それが、ある時期から、「テキスト量で圧倒する」ような作品が主流になってきました。
『シュタインズ・ゲート』はその代表作なわけですが、あらためて考えてみると、「それなら、わざわざゲームでやらなくても、アニメにしてしまえば良いのでは」ということにもなるんですよね。実際、『シュタインズ・ゲート』は、ゲームの後につくられたアニメも大ヒットしたというか、アニメからゲームに入ってきた、という人も多かったのです。あの「何をどうやってもうまくいかない絶望感」は、自分でプレイしているからこそより深く味わえるもの、だったのは事実ですが、基本的には、表示されるテキストをひたすら読み続ける、という、活字耐性がないとつらい感じのゲームではあるのです。
『バディミッション BOND』は、ヒントが多い親切設計だし、そんなにテキスト量に圧倒されることもないし、キャラクターが個性的で、アメコミっぽい動きもあるし、「そこそこ楽しめて、短時間で終わりそうなアドベンチャーゲームだなあ」って思っていたんですよ。
正直、もうすぐ半世紀を生きようとしているオッサンの僕には、7〜8時間でエンディングが見られるようなゲームのほうが好ましく感じられることが多いんですよね。
『スカイリム』とか、あの「世界」を概観しただけで、「すごいなあ!……でもごめん!無理!10代のときに君に会いたかった……」と。
ところが、この『バディミッション BOND』、休日を半分くらい使えばエンディングを見られるだろう、と思っていたのは甘かった。いや、甘すぎた。
ゲームそのものは難しくはないのです。ヒントは満載だし、(たぶん)やられたり、失敗したりしてゲームオーバーは無い親切設計。
ものすごい量のテキストが迫ってくるわけでもない。むしろ、いかにもマンガ的なキャラクターの動きをしっかり見せてくれます。
豪華声優陣が、ほぼフルボイスで演じてくれてもいるし、難しくはないけれど簡単すぎることもない謎解きも多彩です。
僕はとりあえずのクリアまでに30時間、いろんな要素をコンプリートするのに、便利なスキップ機能を駆使してプラス5時間かかりました。
とくに理不尽な目にもあわず、スムースに進めたはずなのに、この大ボリューム。テキスト量だけではなくて、『逆転裁判』の捜査のようなモード(あれほど長くはないけれど)があったり、潜入ミッションは、ちょっとした3Dアトラクションのようになっていたりして、飽きさせないんですよ。
ストーリーも、4人の仲間たち魅力的かつ、どこまで信用していいのかわからない危うさもあって、最後まで楽しめました。
「仲間」なんだけど、ベタベタしすぎない関係性も心地よい。
より完璧なミッションクリアを目指して、サブストーリーを開放していく要素もあります。
僕は「トゥルーエンディング」よりも、「通常エンディング」のほうが好きだったんですけどね。
このゲーム、見た目と第一印象で損をしているというか、「アドベンチャーゲームの新作」というだけで、「どうせ人気マンガ家や声優を起用しただけの、すぐ終わっちゃう惰性アドベンチャーゲームなんだろ?」って思われているのではなかろうか。
アドベンチャーゲームというジャンルも、アメコミ調の絵やキャラクターも、合わない人がいるのは致し方ないのですが、アクションゲームを腕を磨いてクリアしていくほどのやる気はなく、超大作RPGを最初からレベル上げしていくのもつらい、という大人、あるいはアドベンチャーゲーム好きには、貴重なタイプのゲームなんですよ。「体験版」が配信されているので、少しでも興味を持ってくれた人は、ぜひ体験版をプレイしてみてほしい。無料ですし。
あまり話題にもなっていなかったので、期待値が低かったこともあるのでしょうけど、本当によくできていて、面白いゲームでした。
僕としては、こんなに面白くて、丁寧につくられていて、気軽に遊べてボリュームもやりがいもあるアドベンチャーゲームが全く売れないとなると、もう、家庭用ゲーム機で子どもも遊べるアドベンチャーゲームは作られなくなってしまうのではないか、と危惧しているのです。
せっかくだから、もっと多くの人に触れてみてもらいたいし、続編とかにつながってくれないものか。
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