いつか電池がきれるまで

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Nintendo Switch『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』感想


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 今年の1月24日からオンラインで配信されている、この『偽りの黒真珠』。当初は3DS用だったそうなのですが、時勢にあわせて、Switchでのリリースとなりました。定価は1000円(税込)。


 知るひとぞ知る(というか、けっこう有名)な、ファミコンアドベンチャーゲームの最高峰(だと思う)『オホーツクに消ゆ』へのオマージュが散りばめられまくっているんですよね、この作品。
 キャラクターデザインが荒井清和先生で、主人公+若手の刑事に、親友だという若い女性が出てくるし、導入部からオープニングまでの流れとか、『オホーツク』世代にはたまりません。
 この勢いで、堀井雄二さんがロケハンしたまま発売されることがなかった、日本で2番目に有名な未発売ゲーム『白夜に消えた目撃者』もつくってもらいたいくらいです(ちなみに1番有名未発売ゲームは『ブラックオニキス』『ファイヤークリスタル』の続編出ある『ザ・ムーンストーン』です(僕の個人的な見解だけど)。


 この御時世に、あえて、ほとんどひらがなのテキストに、コマンド総当たりでフラグを立てていく、30年くらい前のコマンド選択式アドベンチャーそのままのシステム。変わったのは、当時は「電話」をかけていたのが、「スマホ」になってことくらいでしょうか。たしかに、みんながスマホで検索できる時代の刑事ドラマって、けっこう難しそう。実際の国家権力の人は、調べるときにスマホで検索しながら捜査しているのだろうか、それともやっぱり、「足で稼いだり、聞き込みをしている」のだろうか。でも、最近は人に直接話を聞くのも大変そうだよなあ。
 テキストが表示されるときの音や表示速度まで、当時を思い出させつつも、微妙にストレスを感じないように調整されているみたいです。
 昔は「コマンド選択式なんて、総当たりでクリアできて、自分で言葉を考える楽しさがなくて味気ない」なんて言われていたのですが、今これをプレイしてみると、最近の「膨大なストーリーがどんどん猛スピードで流れていくのを読み続けながら、どこが重要な選択肢かわからないまま終わってしまい、攻略サイトをみないとクリア不可能なアドベンチャーゲーム」よりも、ずっと「自分で正解を探して、ストーリーを進めている感触」があるのです。

 『オホーツクに消ゆ』の有名な温泉のシーンを彷彿とさせる場面もあって、ほんとうに、懐かしいというか、よくここまで「寄せて」きたなと感動してしまいます。
 あとは、曲が上野利幸(ゲヱセン上野)さんだったら、もう思い残すことはなかった、かも。
 『オホーツクに消ゆ』は、音楽がすごく良くて、僕はアナログのレコードを買い、のちにCDも買ったんですよね。ああ、『すすきの人生』。
 『オホーツクに消ゆ』は、とくに、クライマックスのダンジョン(ほんとは洞窟)での高揚感は、秀逸でした。早くいかなきゃ~って思わせるBGMなんですよ。

 正直、この『偽りの黒真珠』のシナリオに関しては、自分で捜査しているというよりは、エンディングが近づいてくると、いろんなことを関係者がペラペラ自分からしゃべってくれて、一気にいろんなことが解決されてしまうという感じはあるんですよ。

 『オホーツクに消ゆ』ほどの、クライマックスでの盛り上がりはないし、いかにも状況説明的なセリフが続くのも、「昔のゲームっぽい」一方で、やっぱり堀井雄二さんのシナリオは、よくできていたのだな、と思い知らされます。
 
 時間とともに、僕が『オホーツクに消ゆ』を聖域化しているだけで、今のゲーマーにとっては、ファミコン版の『オホーツク』も、この『黒真珠』も、似たようなものなのかもしれないけれど。

 僕は本当に、懐かしくて面白くて、終わらせるのがもったいないな、と思いつつ、このゲームの「ファミコンアドベンチャーゲームの世界」に浸っていたのです。
 このゲーム、『オホーツクに消ゆ』とか、『ファミコン探偵倶楽部』未経験の若いゲーマーたちには、どんなふうに評価されるのだろうか。
「懐かしさ」「過去のアドベンチャーゲームへの思い入れ」が無い人たちにとっては、「古くさくて、テキストが読みにくく、グラフィックもショボいゲーム」として切り捨てられてしまうのか、それとも、「こういうのもいいなあ」と受け入れてもらえるのか。

 ランキングでみると、けっこう売れてはいるみたいなので、僕のような「昔のアドベンチャーゲームの復活に快哉を叫んでいる層」以外にも、興味を持っている人はいるのではないかと思うし、最近すっかり斜陽な『アドベンチャーゲーム』にも、けっこう需要はあるのではなかろうか。
 この『黒真珠』も、年に1作くらいずつ続編が出たら、僕は喜んで買うと思います。
 すごいアニメーションとか、声優さんを起用しなくても、「地道にフラグを立てて、ストーリーを進めていく」ってゲームは、けっこう楽しい。
 僕にとっては、久々に「大好きなアドベンチャーゲームが帰ってきた!」と嬉しくなる作品でした。


fujipon.hatenablog.com
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オホーツクに消ゆ

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サウンドアドベンチャー オホーツクに消ゆ

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