「2019年本屋大賞」は、明日、4月9日の夜に発表されます。
というわけで、今年も人の迷惑かえりみず、やってきました電線軍団!
もとい、「ひとり本屋大賞」!(恒例のオヤジ前フリ)
僕が候補作全10作を読んで、「自分基準」でランキングするという企画です。
あくまでも「それぞれの作品に対する、僕の評価順」であって、「本屋大賞」での予想順位ではありません。
(「本屋大賞」の授賞予想は、このエントリの最後に書いています)
では、まず10位から4位までを。
第10位 火のないところに煙は
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何年かに1作ずつ紛れ込んでいる「なぜ最終ノミネートに残ったのか謎の10位作品」よりはマシだと思うのですが、「ミステリ枠」「ホラー枠」にしても、なぜこれなのかよくわかりません……
第9位 さざなみのよる
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読む前から、「この人が書いたものは苦手」という意識があるから、斜に構えて読んでしまっているのも事実で、とにかくさっさと読み終えてしまおう、という感じではあったんですよ。だから、フラットに読めていないのだろうな、とも思う。
『コーヒーが冷めないうちに』よりは、はるかに「読める小説」だとは思うけれど、どこかで読んだことがあるような描写が延々と続いていて、不毛な読書でした。
第8位 フーガはユーガ
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それなりに面白いし、たしかに、初期の伊坂幸太郎っぽい作品ではあると思います。
でも、昔の伊坂作品の根本には「希望」や「善性」があったけれど、この『フーガはユーガ』には、「絶望」が透けてみえるのです。
もしかしたら、それは読み手である僕の心持ちの変化のせいなのだろうか。
第7位 ひと
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本当に久しぶりに「教養小説(ビルドゥングスロマン)」というやつを読んだような気がします。
教科書で読んだ、志賀直哉の『小僧の神様』を思い出してしまいました。
「心が温まるような小説」を読みたい人には、良いのではないでしょうか。
第6位 熱帯
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僕は森見さんのファンなので、「読めてよかった」と思うのですが、「実験作」ですし、かなり人を選ぶ小説です。この長さ、この内容でも、なんとか最後まで読めるものにした森見登美彦すごい!というのは、誉め言葉として、妥当なのだろうか……
第5位 そして、バトンは渡された
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「善き親たちのための小説」として、「泣かせられる」作品だと思います。
でも、これで「泣ける」人は、きっと幸せなんだろうな、とか、言いたくなるのも事実です。
第4位 ベルリンは晴れているか
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本当に「善き小説」であり、「善きミステリ」だと思います。
分厚いし、外国が舞台だと敷居が高く感じるかもしれないけれど、ぜひ、読んでみていただきたい作品です。
第3位 ひとつむぎの手
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いろんなことが、あまりにもタイミング良く起こったり、ミステリとしては物足りないところもあるのだけれど、僕みたいな「一番得意だった事がうまくいかない。それでも、生きていかなければならない人間」にとっては、「ひとりの人間の生きざまとして、沁みる小説」でした。医療小説は苦手なんだけれど、それでも読めました。
第2位 愛なき世界
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ここまで「研究の世界」を魅力的に、かつ、研究をしたことが無い人にも伝わるように書かれている小説というのは、珍しいのではなかろうか。
三浦さんのキャリアを考えると、理系の研究室で実験をした経験はなかったと思うのだけれど、この小説には「なぜ、人はそんなにすぐ結果が出るわけではなく、そんなにお金が稼げるわけでもない研究の世界にどっぷり浸かってしまうのか?」が、しっかりと描かれているのです。
僕は「ダメ研究者」だったので、読みながら、「もっと一生懸命やっていれば、自分にも違った世界が見えていたのではないか」と、ちょっと後悔してもいたのです。
第1位 ある男
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正直、平野啓一郎さんの小説には「難しい」というイメージがあって、手にとって読み始めるのに、ちょっと「覚悟」が必要だったのです。
……ああ、酒場で知り合った人から聞いた話か……なんだか、村上春樹の短編っぽい滑り出しだな……
と、おそるおそる読み始めてみたのですが、本当に「次に何が起こるのか、不穏な予感がしつつも続きが気になってしょうがない小説」だったんですよね、これ。
使われている言葉も、平野啓一郎さんの作品としては平易なものが多くて、電子辞書がなくても読めます(といっても、僕は読書中に電子辞書を使うことはほとんどないのですが)。
自分自身も、この小説の登場人物のひとりとして、弁護士の城戸さんの話に聞き耳を立てているような気分になってくるのです。
というわけで、2019年の「ひとり本屋大賞」でした。
今回は、ちょっと長めの作品が多かったのと、新しさよりも、古典的とさえ思えるような「(おじさん、おばさんを)泣かせる小説」が目立った感じがします。
個人的には「涙もろくなった中年を泣かせるツボを押すことに特化した小説が、書評で褒められ、書店員さんたちにオススメされる」というのは、なんだかちょっと物足りないんですよね。
『王様のブランチ』で褒められる本をつくるための方程式が透けてみえてしまう。
『本屋大賞』には、「これはちょっと難しいかもしれないけれど、刺激を受けるから読んでみて!」っていう作品を推してほしい、という思いはあるのです。
本来なら「売れている本」ではなくて、「面白いのに、いまひとつ注目されていない、もったいない本」を発掘するための賞だったはずなのに。
そういう意味では『熱帯』のノミネートは「攻めている」感じはするのですが、『熱帯』に関しては、「みんな森見さん好きだものなあ」という印象のほうが強いかな……
『ある男』は、たぶん、大賞にはならないと思うんですよ。
でも、こういう作品がノミネートされているということに、本屋大賞の「良心」も感じました。
今年のキーワードは「善き人たちのための、善き小説」ではないかな、と。
社会が、というか、メディアやネットでは、「悪いところ」「腹が立ったり、絶望したりする話」が拡散されがちだからこそ、みんな、本に「救い」というか、「自己肯定感」を求めている気がしました。
最後に恒例の順位予想。
1位 そして、バトンは渡された
2位 ひとつむぎの手
3位 ひと
今年は「泣かせる系作品」を狙ってみましたが、結果はいかに。
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