いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

思えば、ゲームを積むための人生だった。


anond.hatelabo.jp


 思えば、ゲームを積むための人生だったような気がする。
 それでも、カセットビジョンファミコンのゲームには、買っても開けてすらいない、というものはないと記憶しているので、僕がゲームを「積む」ようになったのは、プレイステーション以降だと思う。
 
 当時、パチンコにハマっていて、景品に換えるほうが得だから、と、目についたものと交換していたら、未開封のテレビゲームやCDがやたらと増えてしいった。

 あと、仕事が忙しくて、時間がなくて家に帰って寝るだけなのに、買い物でストレス解消をしていたような気がする。
 当時はまだたくさんあったゲームショップに寄って、相場より安くなったゲームを探すのが少ない愉しみのひとつだった。
 そうやって、「こんなに安く買ってやったぜ!」と満足したゲームの多くは、結局、積まれたまま、僕の引っ越しとともに、段ボール箱に詰められて、一緒に人生を彷徨しているのだ。「時間ができたら、やろう」とは言ったものの、今でさえ、『デス・ストランディング』と『十三機兵防衛圏』を積んだままなのに、『サクラ大戦』の限定版が明日届くことになっている。
 ニンテンドースイッチには、長男が半分くらい遊んで、そこで止まったままのゲームが溢れている。
 せっかくだから、エンディングまでやればいいのに、と言うと、「やるつもりはあるけど、忙しいんだよ」と、『マインクラフト』を延々とやっている。なぜ人は、「終わるゲーム」がこんなにたくさん目の前にあるのに、「終わらないゲーム」に引き寄せられてしまうのか。


fujipon.hatenablog.com

 このエントリで未開封の『moon』を売ってしまい、さんざん「もったいない!」と言われて、そんなにすごいゲームだったのか……機会があったらぜひやりたい、と思っていたのだけれど、Switch版が発売されたにも関わらず、買ってすらいない。


oniongames.jp


 遊んでみたい、という気持ちはあるんだけど、今の僕がこのゲームの雰囲気に馴染めるとは思えないのだ。


 長年、積んであるゲームを見るたびに、僕はちょっとした罪悪感にさいなまれてきた。プレイしてもらうために生まれてきたはずなのに、開封すらされることなく、埃をかぶらせてしまって、ごめん。

 でも、半世紀近く生きてきて、僕は「積みゲー」あるいは「積み本」に関して、ようやく悟りを得たように思う。
 要するに、人は、そのときに「読みたいものを読む」し、「遊びたいゲームで遊ぶ」のだ。そして、「(お金が許せば)買いたいものを買う」。
 読まれない本や遊ばれないゲームは、本来の機能を果たしてはいないし、もったいない、とも思うのだけれど、少なくとも、僕はそれを手元に置いておくことによって、「達成感」や「心の安らぎ」を得てはいるのだ。ここにあれば、やりたくなったらできる、というような。

 だから、自分にとって「遊ぶべきゲーム」は遊んでいるし、「積むべきゲーム」だから、積んでいるだけなのだ。
 
 ……と思うことにしている。


 長年本を読んできて実感するのは、書店で「これを買ったほうがいい」と感じる本と、家で「まずこれを読もう」と手にとる本は、必ずしも一致しない、ということだ。
 前者が「よそいきのニーズ」であるならば、後者は「自分の心の声」に近い。
 僕の場合、読みやすくて、より下世話で、肩がこらないもののほうを「読みたい」のだ。
 ゲームだって、最近は、『ポケモン』のバトルでモンスターを入れ替えるのでさえ、めんどくさくなってきている。
 かといって、シューティングに長時間熱中できるほどの集中力・持続力もない。長男の「自分にとって面白いところまでやって、途中で興味が失せたら、それはそれ」というのも(本人は「いつか最後までやるつもり」なんだろうけど)、それなりに合理的なのではないか。

 いやむしろ、最近の僕は、ゲームを積んでいる状態のほうが、プレイしているよりも「楽しい」から、積みゲーばかり増やしているのではないか、とさえ思う。
 子どもの頃から、旅行も出発前日がいちばん楽しかったし、日曜日よりも土曜日の夜のほうが好きだった。

 「積みゲー」も何十年も経つと、思いでは美しいままにしておいたほうがいいかな、という気もしてくるのだ。
 堀井雄二さんが、『ウィザードリィ』を3か月プレイし続けて、ようやくレベルが1上がった、と喜んでいたというのは、あの時代だからこそ、ではある。
 記憶の中の『デゼニランド』のATTACHや『惑星メフィウス』の砂漠は、ネタとしては最高だが、今あれをやれと言われたら、拷問でしかあるまい。

 できることなら、今、僕が積みまくっているゲームを、昔の限られた小遣いで『バルトロン』を買ってしまった子どもの頃の僕に送ってやりたい。

 これからのゲームは、濃密な時間を過ごせれば、短時間で終わってくれるようになるべきではないか、もう、クリアまでの時間は10時間くらいで良いのではないか(いや、もっと短くてもいい)、と僕は最近ずっと思っているのだが、なかなかそうもいかないみたいだ。

 なんのかんの言っても、死ぬ前にすべての「積みゲー」を一度くらいは起動しておきたいのだけれど、もう、X68000とか、本体が動かなくなっているしなあ……


fujipon.hatenadiary.com

MOON

MOON

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: アスキー
  • 発売日: 1997/10/16
  • メディア: Video Game
十三機兵防衛圏 - PS4

十三機兵防衛圏 - PS4

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: アトラス
  • 発売日: 2019/11/28
  • メディア: Video Game
レジェンド オブ スターアーサートリロジー

レジェンド オブ スターアーサートリロジー

  • 出版社/メーカー: ボーステック
  • 発売日: 2003/06/26
  • メディア: CD-ROM

アクセスカウンター