2019年12月16日の深夜に(12月17日0時15分から)テレビ朝日系で、『しくじり先生 俺みたいになるな!!』の『#34 カズレーザーがセガの「メガドライブ」を徹底解説!』が放送されました。
もう終わってるじゃないか!とお嘆きのあなた。AbemaTVで、「特典映像付き」の無料視聴が2019年12月22日まで(たぶん)可能ですので、ぜひ観ていただきたい。
正直、地上波のバラエティ番組だし、浅い知識で任天堂に負けたセガをバカにするような内容なんだろうな、と思っていたんですよ。
でも、この番組で紹介されているメガドライブの「壮大な迷走」をリアルタイムで見てきた僕にとっては、なんだかとても感慨深いものがありました。
そして、すごく面白かった!
プレゼンテーターのカズレーザーさんはゲーム大好きだそうなのですが、最初に「持っているゲーム機は、ファミコン、スーパーファミコン、ニンテンドー64、ゲームボーイ……」と来たときには、「ああ、こりゃダメだ。『ビジネスゲームファン』なんだな」と落胆したのですが、その後挙げられた名前が「PCエンジンGT」に、「光速船」!
この台詞は放送作家が書いたのかもしれませんが、それにしても「光速船」ですよ!
お茶の間を置き去りにしているのは、この番組じゃないか!とニヤニヤしてしまいました。
「ベクタースキャン」が、なんかやたらとカッコよかったんだよなあ、「光速船」ってさ。
この手の話をはじめると、僕も脱線しまくってしまいそうなのですが、この番組では、「技術に溺れて、そして、メガドライブというハードにこだわりすぎて『メガドラタワー』と揶揄されるような、ゴツい周辺機器だらけ(しかもほとんど売れなかった)になってしまったメガドライブの歴史が紹介されていくのです。
メガドライブのハードと同時期に発売されたゲームが『スペースハリアー2』『スーパーサンダーブレード』『獣王記』『おそ松くん はちゃめちゃ劇場』で、ソフトが少なくてジャンルもアクションとシューティングだけだった、という話が出てきたのですが、スーパーファミコンも、数でいえば、ハードと同時発売は2本だけだったんですよね。
それが『スーパーマリオワールド』と『F-ZERO』だったんだよなあ。
結局のところ、ハードの性能云々以前に「ユーザーが遊びたいゲームをつくる」という発想に欠けていたのではないか、というのが、セガの負けた理由だったのかもしれません。任天堂の宮本茂さんは、いつも「ゲームをほとんどやったことがない人」にプレイしてもらって、その様子をつぶさに観察して開発の参考にしているそうですが、セガは、「自分たちにとって、できる最高のものをつくる」という発想に陥りがちだった。
メガCDも、『シルフィード』『夢見館の物語』『ノスタルジア』など、独特の雰囲気のあるゲームがけっこうあったんですけどね。
でも、わざわざ4万9800円の周辺機器を買うか?と言われると、「それなら最初からCDが付いていて、ゲームも充実しているPCエンジンデュオのほうがいいや」って感じではあったのです。メガドライブとメガCDの一体型をもう少し安く売り出せば、もうちょっと売れたのかもしれません。
メガドライブ(ジェネシス)は、アメリカで大ヒットして、かなり長い間現役のハードだっただけに、「その資産を活かしたい」という思いがあったのでしょうが、それがかえって、メガCDやスーパー32Xのような「値段が高くてゲームも少ない周辺機器」を生み出すことになってしまった。
そこで思い切って、メガドライブを切り捨てて、次のハードであるサターンにセガ全社が一枚岩で向かっていけば、また違った結果になったのかもしれません。
サターンが発売されても、メガドライブを諦めない(見捨てない)セガに対しては、長年のセガファンとして、「美学」を感じてしまうのも確かです。
メガCDにしても、モデムにしても、この番組特典部分の見どころでもある「SEGA ACTIVATOR」にしても、「早すぎた」面はあるのです。
モデムでは「1時間かけてダウンロードした挙句、保存機能がないので、電源を切ったらダウンロードしたゲームのデータも消える」なんて、「なんだそれ……」としか言いようがない。
しかしながら、そういう「隙だらけのところ」が、セガファンにとっては、憎めない。
(正直、僕は目がモデムを買っていないのでそう言えるだけで、買っていたら怒ると思いますけどね、そりゃ)
スーパー32Xなんて、同じセガのサターン開発チームが「あいつらは何やってるんだ?」って思っていた、というくらいですから、ユーザーとしても、「誰
が買うんだこれ……」という感じでした。当時、セガの御用雑誌だった『BEEP!』ですら、微妙な扱いだったものなあ。
この番組をみると、メガドラタワーというのは、セガの「黒歴史」だと思われてしまいそうではありますし、たしかにその通りではあるのですが、メガドライブ(ジェネシス)は、アメリカではスーパーファミコンと互角の戦いを繰り広げ、ゲーム史に大きな足跡をのこしたハードであるというのも事実なのです。
そして、「あまりにも売れてしまったからこそ、サターンへの切り替えが遅れてしまった」面もある。
この番組、長年のゲームファン、とくに僕のようなセガ信者にとっては、「そこまで言わなくても……」から、最後に、「だけど、そんなセガが、やっぱり嫌いになれないんだよなあ……」という心境に至る、かなり濃密な番組でした。
興味を持った方は、ぜひ、観ていただきたいと思います(22日までは無料で観られます)。
fujipon.hatenadiary.com
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