※あまりちゃんとした「レビュー」ではなく、ゲームの内容やエンディングに遠慮なく触れていますので、未プレイの方は、『ファイナルファンタジー16』に触れてみてから読んでいただけると嬉しいです。いや、プレイしてくだされば、こんな文章のことは忘れていただいても構いませんので。備忘録みたいなものだし。
「売れていない」「一本道で面白くない」などの評価を(とくにスクウェア・エニックスの株価を語る掲示板などで)よく見かける『FF16』なのですが、僕はすごく楽しめました。
たしかに自由度は低い。決められたルートをなぞっていくだけのゲームではありますし、難易度も「ストーリー重視モード」でやれば、アクションゲームはファミコンの『スーパーマリオ』をクリアして以降は、エンディングをほとんど見た記憶がない僕でさえ、なんとかクリアできるレベルの「アクションバトル」でした。負け続けると敵が弱くなってくれる、という親切設計でもありますし。
倒さなくてもストーリークリアはできる、スヴァローグという強いリスキ―モブ(クエスト的なボスキャラ)には難儀しましたが、これも試行錯誤の末に撃破しました。
サブクエストも親切というか、出てくる順番に、マップで見ることができる目的地に行くか、トルガルに案内してもらうだけで大概クリアできるし、サブクエの数もそんなに多くはありません。ジルさんが捕まっているときに、アジトでサブクエが大量発生し、のんびりサブクエをやっていると「それどころじゃないだろ!」と自分にツッコミを入れたくなってしまうのですが。
超美麗グラフィックに息を吞む場面がたくさんあるのですが、その代償なのか、寄り道とか自力で探索できる場所、入れるところが限定されており、直前に『ゼルダの伝説 ブレスオブワイルド』をやっていたので、「ここも行けないのか……」という感じではありました。
『ブレスオブワイルド』が「行けすぎるゲーム」なんだけどさ。
僕がこのゲームで一番好きなのはストーリーで、一番物申したくなるのもストーリーなんですよ。
クライヴとジルの結末を見届けたかったのです。
ジルさんいいですよね。クールなようで、煮えたぎるような激情を秘めた大人の女性。ヒロイン、というよりは、徹底してパートナーとしてクライヴを支えようとしているのが格好良い。
長年『ファイナルファンタジー』シリーズをやってきて、このゲームでクライヴが他の召喚獣の力を取り込むプロセスをみてきていると、「これ、ジルさん=エアリスのパターンなのでは」という暗い予感にさいなまれていたのです。
ジルさん、途中で具合悪くなってパーティから抜けることもあるし。
「5年後」とかにいきなりなる場面があって、なんかこの二人すっきりしないなあ、どうなっているんだ?なんて思っていたら、後半でいきなり流された島で背中合わせで二人で座っている場面が出てきて、「ああ、それはそれで、やることはやってきたんだなあ」なんて納得したりもしたのです。
若さや純粋さが強調されることが多い日本のRPGで、ここまで「行間」を描き、「年輪」を伝えてくれる作品があっただろうか。
この『FF16』いきなり人が大勢吊るされていたり、性的な事後のシーンが出てきたり、けっこう挑戦的ではありました。
クライヴたちがクリスタルを破壊していくことによって、一般の人々の日常生活は短期的には「不便」になっていくし、たくさんの犠牲者も出ています。
ラスボスのおかげでクリスタル破壊は、正しいことだと思いやすいのだけれど、あのラスボスが存在しなかったらどうだったのか。
いまは便利だけれど、ゆるやかに滅んでいく世界と、いまものすごく不便になるけれど、滅びを回避できる世界とだったら、どちらを選ぶのか?
物語の主人公であれば後者を選ぶかもしれないけれど、一般人が前者を選ぶのは異常なことではない。
ストーリー的には「よくわからない」というか「あんなに大風呂敷を広げた意味ある?」と拍子抜けしたところがたくさんありました。
・アナベラがなぜあんなことをやったのか理解できない。ラスボス様に操られていた、とか実はすべての黒幕だった、という可能性を考えていたのですが、けっこうあっさり死んでしまって、単なるサイコ女だったのか?と消化不良でした。
・ジョシュアがクライヴから隠れたり、ときどき意味ありげに出てくる理由もよくわからない。陰でサポートしていた、ということなのかもしれませんが、それならなぜあのタイミングで出てくるのか、案外目立ちたがりなのか。個人的には、ジルに横恋慕していてダークサイド化するのではないかと予想していましたが、最後まで普通でした(まあ、それはそれでよかったかも)
・バルナバス絶望的に強い、と嘆いていたら、戦うたびに弱くなっていくあるあるパターン。いやあれはクライヴが急激に強くなっていっただけなのか。バルナバスもラスボスっぽく出てきたと思ったら、案外あっさり退場系でした。ザコっぽいのにやたらとしぶといフーゴを見習ってほしい。
ちなみに、あのエンディングに関しては、僕は「クライヴ、ジョシュアともに生還説」に一票入れておきます。
「フィクションでは、描かれている場面には必ず意味がある」
それを考えると、わざわざラスボスが「死者をよみがえらせる能力」にバトル前に言及していて、クライヴがバトル後にジョシュアを光で包む描写があることには「意味」がなければならない(超長いスタッフロール後の映像にも、それが示唆されていますし)。
そして、メティスが落ちて嘆いていたジルさんが、最後にみせた笑顔は、「クライヴの生存」につながっていると思うのです。
「どんな形であれ、ふたりに月を見せてあげたかった」という可能性もありますが、スタッフロール後の映像に出てくる子どもたちは、クライヴとジョシュアの子孫っぽい雰囲気でした。
完璧なハッピーエンドではなく、余韻(そして希望)を残す終わり方というのは、常に陰をまとっていたこのゲームらしいし、どちらに解釈しても良いのであれば、僕は両者生存ハッピー寄りエンドに一票入れます。
とりあえず、ジルさんとトルガル(めっちゃかわいい、いてくれてありがとう)が確実に生き残っただけでも、僕はかなり救われました。
ラストバトルにも連れていってほしかったのですが、あれはもう「兄弟の戦い」だったということなのでしょう。
もう50過ぎで、ノベルゲームとかが大好きなオッサンとしては、ほぼ言われたとおりに動いただけではあるものの、ちゃんと楽しみつつエンディングまで辿り着いたし、バトルでちょっと苦労したというか、□ボタン押し過ぎでくたびれたけれど、「RPGをクリアする充実感」をしっかり味わえて満足でした。
『ブレスオブワイルド』が、「試行錯誤しながらプレイヤーとしての自分自身の成長を感じることができるゲーム」なのに対して、『ファイナルファンタジー16』って、「こちらが能動的に努力しなくても、しっかり『おもてなし』をして楽しませてくれるゲーム」なんですよ。だから『ファイナルファンタジー16』は、「YouTubeでストーリーを動画で追えばいいじゃん」みたいな話にもなるんですが。
正直なところ、僕はもう、「プレイ時間100時間以上!」とか「膨大なサブクエスト!」みたいなのには、もうついていけないのです。
人生の残り時間や自分の集中力の持続時間を考えると、「そんなにストレスも時間もかからなくて楽しめるゲームを(長くてもクリアまで50時間以上、面白ければ短ければ短いほど良い)1本でも多く享受したい」のです。
つまんない、同じ内容ばかりのサブクエストでプレイ時間を水増しされたり、2周目の「真エンド」があってクリアしたのに「全クリ」じゃない気分になるよりは、このゲームくらいのボリュームがちょうどいい。
最後は、終わらせてしまうのがもったいなくて、ラストバトル前にアジトでけっこうウロウロし、何度もジルさんに話しかけていました。
『ブレスオブワイルド』は素晴らしいゲームで、心から遊んでよかった!と思ったけれど、僕は祠に入った瞬間に攻略本(あるいは攻略サイト)を参照していたのです。それでも何度もうまくいかずに「キーーーッ!」となりました。それでも面白かったよ、『ブレスオブワイルド』。小中学生時代には「コンティニュー機能を使うのはゲーマーとして邪道だ!」と思い込み、ファミコンの『魔界村』では3面目までしか進めず、「このゲーム、開発が遅れて途中までしかできていないのを難易度の高さで隠しているのではないか」と本気で疑う、ストイックゲーマーだったのに!
というか、『マインクラフト』とか『ティアーズ・オブ・キングダム』の自由度を全力で受けとめて楽しんでいる若者たち凄すぎ!人類は進化しているよ絶対に。いや僕が年を重ねてしまっただけなのか。
『ファイナルファンタジー16』って、「自由度」が高いゲームやプレイヤー側の成長を求める「死にゲー」的なものを求める人にとっては、「物足りない」であろうことは理解できます。
ストーリーもツッコミどころは満載で、映像は凄いけど「召喚獣バトル」もストーリー重視モードだとタイミングを合わせてボタンを押すだけ。
でも、ツッコミどころがあるくらいのほうが「語れる」し、「ゲームらしい」とも言える。
少なくとも、僕はこのゲーム大好きだし、ネガティブな評価のほうが目立ってしまいがちなことが残念なのです(テレビゲームの評価って、基本的にそういう傾向はあるのですが)。
「一般的なゲーム好きが、余暇に気軽に遊ぶ」ゲームとしては、本当に素晴らしい作品なのに。
Amazonのカスタマーレビューでも、これを書いている時点では平均4.3点。立派なものだと思います。
もし、ネットでの声が大きい批判を読んで「どうせ駄作なんだろ」と思っている人がいたら(とくに、「自由度や難易度が高いゲームはめんどくさいし、ハードルが高い」と感じているのであれば)、ぜひ一度遊んでみてほしいのです。
これほど、「プレイヤーの感情を揺さぶりながらエンディングまで導こうとしてくれるゲーム」って、滅多にないから。