いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「互助会」を好きにはなれないが、他人に読んでもらうのが難しい時代だ、とも思う。

www.tyoshiki.com


 「互助会」か……
 個人的には、「なんでこんな低クオリティの『俺にカネをよこせ』としか書いていないようなエントリにたくさんブックマークがついて、人気になって『バズった(たくさん人が来た)!』とか調子に乗っているんだ……」とか思うこともあるわけです。
 上記のリンク先で言及されているサイトがそうだ、というわけじゃないです。一押しされている食パンメニューのランキングとか、がんばって書いたんだろうな、とは思う。その一方で、こういうリストって、せいぜいベスト3の「本当に美味しかったもの」に絞るか、すべてのレシピを網羅したデータベースみたいなものにしか需要はないのでは、とも感じます。それこそ、クックパッド見ればいい、って思うもの。書く側としては、そこで「せっかく試したものを省く勇気」が持てない、っていうのも、ものすごくわかるのだけれども。

 僕が個人サイトを運営しはじめた頃は、ネットでお金が稼げるなんて考えてもおらず、僕にとっては「遅すぎた大学の文芸部入部」みたいな感じだったのです。
 もちろん、お金が稼げるのは悪いことじゃないし、僕もいくばくかの収入(1か月の本代くらい)を得ているので、PV(ページビュー:閲覧数)が欲しい、とか、アフィリエイトで稼ぎたい、という気持ちも理解はできるんですけどね。
 ただ、外部からみて不思議なのは、多くの人が、「少しでも早くGoogle Adsenseに『合格』したい」と考えて申請をしていることで、そんなスカスカおせちみたいなものしか並んでいないショーケースの店にCMをバンバン流してお客を呼び寄せても、「何このしょうもないブログ」と失望されるという負の結果しか生まないんですよね。
 互助会だろうが、ブログセミナーだろうが、瞬間風速的に人を集めて金を集めて逃げる、というモデルでなければ、まずはコンテンツを充実させてから宣伝したり、人集めに奔走したりするべきなのに。

 僕は『はてな』の斜陽ブロガーとして細々とやっているわけですが、20年前、個人サイトをはじめてからしばらくは、本当に人が来ず、1日10人も来た!と嬉々としてログをみてみたら、そのうちの5アクセスは自分、というような日ばかりでした。
 それでも、『日記才人』とか『テキスト庵』に参加して、たまに誰かに採りあげてもらったりしているうちに、少しずつたくさんの人に読んでもらえるようになったんですよね。
 KKG(『かとゆー家断絶』『かーずSP』『ゴルゴ31』)にもかなりお世話になりました。『エンピツ』でやっていたサイトが、これらのニュースサイトで紹介されたときには、1秒ごとにカウンターが何百とか増えていくのに感動したものです。

 最初の頃は僕も誰かに読んでほしくて、人気テキストサイト掲示板に感想を書くという名目で、自分のサイトのURLを貼り付けて、少しでも人が来ないかな、とか試行錯誤していたんですけどね。「リンク集」とか作って有名サイトにさりげなくアピールしてみたり、わざとらしく「文中リンク」してみたり。
 
 まあなんというか、あの頃の「自分の若気の至り」を無かったことにして、今の「互助会勢」にキツイことも言えないかな、というのはあるんですよ。
 お金が絡むようになってきたので、コンプライアンスが厳しくなったのも事実です。
 いやほんと、『はてなダイアリー』『はてなブログ』になって、ブログの掲示板は有名人以外では廃れ(しょうがないんですけどね、ヘンな宣伝とか書かれるとめんどくさいし、中にはブログ主を無視してケンカをはじめる人とかいたし)、大手に言及する、というのも、トラックバック文化の消滅で不可能になりました。
 もちろん、ブログの中で他者に言及することは可能なんですが、「勝手にうちのブログにリンクしないでください」とか言われてしまって困惑することもあります。

fujipon.hatenablog.com


会員限定ブログとかならわかるけど、世界中から閲覧自由な設定のブログでその主張はおかしくない?
……とは言うものの、それはもう「ネット先住民の古の文化」でしかなくなっているのかもしれません。


僕だって、見にいったサイトが単なる映画のあらすじや商品説明で、それに「役に立ちます!」というブックマークコメントがならんでいると、けっこう苛立つわけです。
こう言ってはなんですが、互助会とか談合ブックマークであればなおさら、それっぽくない、多少なりとも読み込んだコメントをつけようとは思わないのだろうか。
昔の話ですが、僕の大手サイトでの掲示板営業でも、「ちゃんと読んで書いたコメント」のほうが、反応はずっと良かったんですよ。互助会やるにも仲間は選んだほうがいい、というか、互助会も、もうちょっとうまくやればいいのに。
そもそも、ちゃんと読んで反応するのであれば、互助会ではない、のかな。

僕はベータ版からの『はてなブログ』ユーザーなので、『火の鳥』のようにその歴史を傍観してきたのですが、一時的にブックマークを集めた互助会的なサイトも、内容がスカスカなものは、だいたい数か月で駆逐されています。
逆に、読者数やブックマーク数は多くないけれど、検索やSNS経由ですごく読まれているブログって、たくさんあるみたいなんですよ。僕は観測範囲が狭いので、捕捉しきれてはいないのだけれど。


あらためて考えてみると、ブログ人口が増えても、日本の人口は増えていないし、みんなが自由に使える時間もそんなに増えてはいない。スマートフォンのおかげでブログは読みやすくなったけれど、有名人やプロの物書きなどが参加してきて、新規参入者が大勢の人に読んでもらえるようになるためのハードルはどんどん上がってきています。
昔のように、「有名テキストサイトに文中リンクしてもらって、一夜にして『READ ME!』の1ページ目にジャンプアップ!なんてシンデレラストーリーはまずありえません。
「バイトテロで人生終了」みたいな負のパターンはありますけどね。
芸能人か友達のブログしか読まない人ばかりになれば(というか、自分もそうだ、という人は、他人もそういうものだと思うはず)、芸能人になるのは無理だから、オンラインサロンで「友達」をつくろうとか、「インフルエンサー」にお近づきになろうとする。


いま、自分がイチからブログをはじめるとしたら、どうするだろう?と考えてみると、まあ、そんなに多くの人に読んでもらえるとは思えないんですよ。
どんなに一生懸命書いても、誰にも読んでもらえないというのは、書くことが好きで書いていた人間でも、けっこうつらい。
 ましていわんや、みんなに読んで認めてもらおう、早くお金を稼ぎたい、と思っている人をや。

 まあでも、こういうことは今にはじまったわけではなくて、15年前に僕はすでにこんなことを書いているわけです。

fujipon.hatenadiary.com


 20年とかやっていると、こんなふうに、過去の遺産を使いまわしてエントリを書いてしまうことも可能なわけで。
 ときどき、10年くらい前のを全部コピペして新規エントリとしてアップロードしても、誰も気づかないのではないか……と思います。

 昔から、人類は「最近の若者は……」とボヤキ、15年前には「個人サイト(ブログ)への新規参入は終わった」と主張する人がいたのです。

 僕には「新しい人が出てこなくなったな」という実感はあるんですよ。
 ただ、それは「『はてな』がうまく新しい人を売り出すシステムを構築できていないから」なのか、「ブログを書くのに向いている人たちは、ほとんど出尽くしてしまったから」なのかはわかりません。
 僕自身に「発掘する意欲」がなくなっているだけの可能性も十分あります。

 でも、みんな「なんか新しいブログないかな」って、探さなくなっていませんか?だって、もう時間に余裕もないし、ツイッターでも最近フォロー申請してくる人は商売目的が多いしね。
 もしかしたら、時代は、ブログやSNSのひとつ先にあるコミュニケ―ションツールを求めているのかもしれません。
 一周してきて、「これからは『直会い』だ!」とかさ。

 ここで、「新規参入組が、多くの人に読んでもらうためのノウハウ」みたいなものを書いてみるつもりだったんですよ、本当は。
 しかしながら、半日くらい考えてみても、「検索流入を増やすための対策をしつつ、丁寧に書いた記事を増やす」ことくらいしか「他者に後ろ指をさされない手段」は思いつかないのです。
 
 今、ふたたび、『日記才人』とか『テキスト庵』みたいなサービスが求められているのではなかろうか。
 自薦・他薦で、「読んでみてもらいたい人」が徒党を組まずにアピールできる場所が。
 『はてなブログ』も試行錯誤しているみたいなんですけどね。「お題」に沿って投稿されたものから紹介したり、なるべく新しいブログを目立たせるようにもしているから。
 それでも、「新しい書き手を育てる」まではいかなくても、「新規参入者を積極的にサポートして、モチベーションを高める」方法を、さらに模索していただければ、と期待しています。

fujipon.hatenadiary.com
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 互助会なんて、エレガントじゃないけど、「あれもダメ、これもダメで、こういうことくらいしかできないんだよ!」というのも、彼らの言い分ではなかろうか。

 
 本当は「そこまでしてブログで誰かに認めてもらったり、お金を稼ごうとすることに固執する必要はない」と僕は伝えておきたい。
 ブロガーにだって、スポーツ選手や起業家と同じように、向き、不向きがある。
 もっと楽で確実に認められたり稼いだりする方法って、たくさんあるから。


 「お金は稼げなくても、そんなに読まれなくてもいいや」って思えると、こんなに自由な場所はないのだけれど。


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