いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「間接的」という言葉が、気になります。


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 この件に関しては、島田紳助さんのこともあったのに、脇が甘いし、自分たちの社会的な影響力も考えればいいのに……というのと、もし自分が同じような立場になったらどうするだろう、というのを考えてしまうのです。
 宮迫さんくらい稼いでいれば、いくらギャラが良くても、リスクのほうが大きいことは理解しているはず。
 それでも、「自由に使える小遣い」が欲しかったのか、知り合いに頼まれて、断ることができなかったのか。あるいは、本人が言っているように「そういう人たち」だとは知らずに現場に行き、場の雰囲気に呑まれてサービスせざるをえなくなったのか。
 実際、知らずに行ってしまったら、会場で「こんな話は聞いてなかった、帰る!」っていうのは、かえって怖いのではないか、という気もするし。
 入江さんも、先輩や仲間にそんなだまし討ちみたいな真似はしないのではないか、とも思います。
 その一方で、この一件だけで(しかも5年前の話で)芸能界追放!というのも、被害に遭った人たちの気持ちを思えばわからなくはないけれど、結果的には「稼ぐ手段を失った元有名人をつくるだけで、誰も幸せにはならない」とも思うのです。


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 結局のところ、人々の、とくに当事者以外の「処罰感情」というのは、時間とともに薄れていきがちなものではありますし。

 個人的には、ワンストライクでバッターアウトというのは、あまりにも厳しすぎると思います。二度三度と繰り返せば、もう、どうしようもないでしょうけど。
 それはそれで、「反社会勢力御用達タレント」みたいになってしまう可能性もありそうですが。

 「人気商売」としては、今回はしばらくの謹慎で済んでも、イメージが悪くなり、スポンサーからは嫌われて、仕事がなくなりそうではありますね。

 こういうのって、「ノーギャラだった」って言われるのと、「闇営業だったけど、知り合いの紹介で良いギャラだったので出来心で引き受けてしまいました」というのでは、どちらがマシな言い訳だったのだろうか。
 むしろ、「ノーギャラだった」ほうが、金銭以外でのつながりを感じてしまって僕は怖い。


 前置きが長くなってしまいましたが、僕はこの宮迫さんのコメントで、ずっと引っかかっていた言い回しがあったのです。

宮迫は「この度は世間の皆様、関係者の皆様、並びに番組・スポンサーの皆様に大変ご迷惑をおかけし申し訳ございません。そういった場所へ足を運んでしまい、間接的ではありますが、金銭を受領していたことを深く反省しております」と謝罪。


 「間接的ではありますが、金銭を受領していた」の「間接的」って、どういうやり方だったのだろう?
 それが、ずっと気になっていて。
 世の中の「間接」で、もっとも知られているのは「間接キス」と「間接フリーキック」ではないでしょうか。
「間接キス」というのは、飲み物の同じコップなどに、複数の人が口をつける、というもので、「間接フリーキック」というのは、「そのキックで直接ゴールに入れても、得点を認められないキック」のことです。
 「直接」対象物との接触がない=間接、という解釈で良いのでしょう。
 では、この宮迫さんの「間接的な金銭の受領」というのは、どういうことなのか。
 宮迫さんが通りそうな道に、さりげなくギャラが入った封筒を置いて、宮迫さんがそれを「偶然拾った」ことにする、とか、パチンコ店のように、「特殊景品」をもらって、それをさらに交換所で現金化したのか、見返りとして「割のいい仕事」を振ってもらったのか。あるいは、お礼として美術品とか骨とう品をもらったのか。でも、最後の2つは「金銭の受領」ではなさそうです。

 で、そのあたりが詳しく書かれているものが無いか、ネットレベルで調べてみたのですが、とりあえず見つかったのは、同じスポニチのこの記事くらいでした。

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 関係者によると、ギャラについては入江が窓口となり詐欺グループから一括で受け取って分配したとみられる。約5年前の問題で記憶があいまいなところもあり、各芸人が受け取った金額については不明。周囲からは「2万~3万円のギャラだった芸人もいたみたいです。最初から全てを話すべきだったのでは…」との声も漏れる。


 要するに「入江さんがまとめてもらったギャラを、各人に分配した」ということなんですね、この証言を信じるならば。
 でも、これって「間接的な金銭の受領」なのでしょうか?
 反社会的勢力の人から手渡しでもらったわけじゃなくて、入江さん経由だったから、「間接的」なの?
 これで「間接的」って言って良いのなら、吉本経由で、普通の会社のイベントに出演してギャラを吉本からもらうのも「間接的な金銭の受領」ってことになるのでは。
 この理屈が通るのであれば、現場で現金を直接手渡しされる仕事以外はみんな「間接的な金銭の受領」になりそうです。
 もうなんだか、少しでも自分の立場をマシにしようとして、かえって言い訳がましくなっているのが、見ている側にとってもいたたまれない。

 もしかしたら、もっと複雑な「間接的な受領」があったのかもしれませんが、「間接的」という言葉が情状酌量を目的としているのは明らかなので、宮迫さんも、「間接的」とはどういうことなのか、ちゃんと説明するべきだし、報道する側も、受け売りではなくて、ちゃんと調べて記事にするべきではなかろうか。
 それとも、この「間接的」という言葉が、伝える側は、気にならなかったのだろうか。
 僕は、ものすごく気になったんですよ。これって、けっこう大事なところじゃないですか。
 そこに情状酌量の余地があるのなら、むしろ、宮迫さんは、ちゃんと説明するべきだし、それを伝えてあげれば良いのに。
 そして、宮迫さんが言葉の印象だけを利用しようとするのであれば、周囲は、きちんと「それはおかしい」と言うべきです。言葉で仕事をしてきた人なのだから。

 ただ、こういう「少しでも自分の立場をマシにしようとして、かえって小さなウソや言い訳を重ね、かえって状況を悪化させてしまう」というのは、本当にありがちな「小市民的な悪、あるいは失態」なので、僕も身に覚えがありますし(反社会的勢力との付き合い、ではありませんが)、気持ちはわからなくもないのですよね。


加害者家族 (幻冬舎新書 す 4-2)

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よい謝罪

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