いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『スペースワールド』の思い出

http://www.spaceworld.co.jp/www.spaceworld.co.jp


 遊園地やテーマパークの「終わり」というのは、どうしてこんなに人をせつない気持ちにするのだろうか。
 僕自身は『スペースワールド』に熱心に通っていたわけではなく、開園してから27年間に、たぶん5回くらいしか行ったことはないのに。
 そんなヤツが『スペースワールド』を語るな、と言われてしまうのは百も承知なのだけれど、なにかと賑わっている博多(福岡市)に比べて、北九州というのは、かなり人口が多い政令指定都市にも関わらず、九州の他県からみると、「行くところは、スペースワールド門司港レトロくらいかな……」という感じではあったのだ。
 ちなみに僕は門司港レトロにある「九州鉄道記念館」が好きです。

www.transport-pf.or.jp


 『スペースワールド』ができたのは、1990年4月。
 友人たちと男だけで出かけてみたものの、絶叫マシーン苦手系男子だった我々は、顔を見合わせて、「あんまりやることないね……」とぼやきつつ、ゲームセンターで遊んだり、宇宙博物館を見学したり、スペースシャトルディスカバリー号」の実物大モデルをみて感心したりして、なんとなく物足りない気分で帰った記憶がある。
 子ども向けの「宇宙飛行士の訓練体験ができる、ミニキャンプ」みたいなのもあったのだよなあ、たしか。
 けっこう、本格的に「宇宙志向」のテーマパークだったのだ。
 あの頃のスペースシャトルは未来であり希望であったのだが、いま見ると懐かしさがこみあげてくる。
 27年経ったんだな、と思うし、スペースワールドの終わりは、宇宙が夢だった時代の終わりであるような気もする。
 なんのかんの言っても、遊園地というやつは、絶叫マシーン好きか、カップルか、男女のグループか、家族連れでないと、うまく楽しむのが難しい施設ではある。スペースワールドは、そのコンセプトもあってか、小さな子供がいる家族連れにとっては中途半端なアトラクション構成になっていたように思う。
 子どもが生まれてからも、みんな絶叫マシーンが苦手だったこともあり、城島後楽園や三井グリーンランドを選ぶことが多かったのだが、スペースワールドにも何度か行ったことがある。
 そのうちの何度かは、隣接していた『WINS八幡』が僕の目当てだったことを告白せねばなるまい。
 当時は、今みたいにインターネットで投票をすることができず、電話で投票できるようになるためには、募集されたときに素早く枠を確保し、専用の口座をつくらなくてはならなかったので、馬券を買いに行くのも一苦労だったのだ。
 その『WINS八幡』も、今はもうない。
 
 
 僕は、「頻回に行っているわけではないし、そんなに賑わっているという話も聞かなかったけれど、あれほどの規模の施設で、北九州にとっては貴重な観光資源でもあったので、ずっとこんな感じで続いていくのかな」と思い込んでいた。


www.j-cast.com

昨年の晩秋にこんな記事が出たときには、「たしかにこれは不快な人も少なからずいるだろうな、しかし、スペースワールドもいろいろと模索しているんだな」と苦笑した、というのが正直なところだ。
九州のテーマパークといえば、一時は「日本最大級の廃墟」になるのではないかと言われていた長崎(というか佐世保なんだけど)の『ハウステンボス』がH.I.S.のテコ入れで見事に再生した事例もあり、スペースワールドも、なんとかなるんじゃないか、とも思っていたのだが……


www.huffingtonpost.jp


昨年末に「2017年末での閉園」が発表されたときは、寂しさとともに、仕方ないんだろうな、とも思ったのだ。
終わりまでに、一度くらいは行っておこう、と。
しかしながら、閉園となるとたくさんの人がやってきて、アトラクションは4時間待ち、というのを知って、申し訳ないが諦めることにした。
僕はもう、園内を歩くだけで良かったのだけれど、ここに思い入れのない子どもたちには、ちょっと無理だ。
それでも、最後に賑わっているというのは、「よかったなあ」と感じている。
もちろん、自分自身も含めて「どうにかならなかったのか」「もう少し早く人が集まっていれば」なんて、思うところもあるのだけれど、客観的にみれば、テーマもアトラクションも古くなってしまい、リニューアルするほどの資金も今後の勝算もなく、どうしようもなかったのだろうな。
どこにでもあるような商業施設をもうひとつ増やすより、スペースワールドのほうが、その「レトロ感」みたいなものも含めて良いのではないか、と、27年間で5回くらいしか行っていない僕には言う資格はない。地元の人にとっては、「どこにでもあるような商業施設」のほうが、必要なのかもしれないし。


togetter.com
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テーマパークというのは、おそらく「世の中で、いちばん幸せな人間の割合が高い場所」だ。
終わりが近づいているスペースワールドは、寿命を終える直前の恒星のように、さまざまなドラマを生み出している。
スペースワールドがなくなってしまうのは寂しいのだけれど、たぶん、僕がこんなにスペースワールドのことを考えることは、もうあるまい。
それでも、1年に1回くらい、ふと、思い出すことがあるような気がする。
そして、若者たちに「昔、北九州にスペースシャトルのレプリカがあるテーマパークがあったんだよ」とか自慢げに話すのだろう。
「何それ」なんて言われながら。
テーマパークも、人も、いつかは星になる。


今日も含めて、あと3日。
行ける人は、ぜひ、楽しんできてください。
これほど大きな祭りの「終わり」を体験できる機会も、そんなにあるものではないだろうし。


スペースワールド (スライドで広がる!地図の図鑑)

スペースワールド (スライドで広がる!地図の図鑑)

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