最近の美術館、博物館は、金曜日・土曜日に夜間開館を行っているところが増えています。
平日に行くのはなかなか難しいし、週末はあまりの混雑で行く気分になれない、という皆様、僕の観測範囲では、金曜日の夜間開館はけっこうおすすめです(さすがに土曜日はけっこう混むので)。
だいたい、17時から20時くらいの延長なのですが、1時間、どんなにゆっくり観ても、大概は2時間もあれば一回りできますし、土日に比べたら、混雑はかなりマシです。
たぶん、まだ夜間開館が浸透していない、というのと、金曜日の夜は、付き合いがあって、なかなか自由に動けない、という人が多いのでしょうね。飲み会に行くよりもお金はかからずにリフレッシュでき、二日酔いにもならないし、ちょっと自分が「芸術に親しんでいる人」になったような錯覚に浸れます。
このビュールレ・コレクション、最初に東京の国立新美術館で開催され、九州では、平成30年5月19日(土)〜 7月16日(月・祝)の予定(次は名古屋らしいです)。
会期も半ばをすぎて、ようやく観ることができたのですが、率直な感想としては、「ものすごくオーソドックスな印象派展」でした。
「ああ、印象派の有名作家の作品展って、こんな感じだよなあ」って、観ながら頷いてしまうくらいに。
ドラクロワ、ドガ、マネ、ルノワール、ファン・ゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、マティス、ピカソ、ロートレック、そして、20世紀のモダンアートまで。
観ていてあらためて思うのは、日本人は印象派が大好きなのだな、ということなんですよね。
というか、僕が観てきた世界のいくつかの美術館でも、いちばん賑わっているのは印象派のコーナーだったので、世界的にもそうなのでしょう。
モナリザとかロゼッタストーンとかツタンカーメンの黄金のマスクとかは別格なのだとしても。
この作品展の目玉のひとつが、ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》(1880年)なのですが、これは写真撮影OKになっていました。
最近の展覧会では、一部の作品を撮影OKにして、SNSなどでの拡散を狙っていることが多いんですよね。
こういうのは、撮影する側の熱意があまり見る側には伝わらないというか、「わざわざ写真撮らなくても、WEBで観ればいいのに」と僕も思うのだけど(でも、自分が行くと、やっぱり撮ってしまう)。
また、今までスイス国外には一度も出たことがない、というモネの《睡蓮の池、緑の反映》も公開されていました。
セザンヌの《赤いチョッキの少年》(1888-90年)をみて、なんとなく違和感があるのは、この少年の右腕がやたらと大きいからだということが解説を聞いてわかりました。
写真には「無意識に写ってしまう」というケースがありうるのですが、絵の場合は、「それが描かれていること」には、画家にとってのなんらかの理由とか主張みたいなものがあるんですよね。
あと、モネの絵を観ていた高齢の男性が「なんだかモヤモヤした白っぽい絵がある!」と連れの女性に呆れたように語っていました。
うん、気持ちはわかる。というか、先入観なしで観たら、そう思うのが普通のような気がする。
中年女性のグループは、美術展に行くと、目の前の絵の話よりも、自分がこれまでどんなにたくさんの有名な絵を観てきたか、というマウンティング合戦が始まるという法則も発見しました。
美術展って、さりげなく他者の反応を見たり聞いたりするのも面白い。
お母さんが、「すぐ出てきたけど、ちゃんと絵をみてきたの?」と尋ねたら、小学校高学年くらいの兄弟が、「この階の絵よりも、上の階の鎧兜とか土器とかのほうが楽しかった!」と誇らしげに語っていました。
僕は今でも、自分に芸術の価値を判断する目があるとは思えなくて、画家の名前で作品を評価しているだけなのではないか、と不安になるのです。
ちなみに、このビュールレ・コレクションは、エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890 - 1956)という人が集めたものなのですが、作品はずっとスイス国内で公開されていて、国外に出たのは過去に数回のみだったそうです。
2008年に4作品が盗難されたことをきっかけに、公開方法が見直されることになり、2020年からチューリヒ美術館に全てのコレクションが移管される予定です。
チューリヒ美術館の受け入れ態勢が整うまでの期間を利用して、日本で公開されることになったのです。
移管後には、このコレクションを日本でまとめて見る機会はなくなってしまう可能性が高いとのことでした。
九州国立博物館での会期も半分すぎてしまいましたし、まだ未見の皆様は、「これぞ印象派の美術展!」である、このビュールレ・コレクションに足を運んでみてはいかがでしょうか。
何か宣伝っぽいですが、何ももらってないです。派手ではないけれど、ものすごくわかりやすくて居心地の良い企画展だと思うので、これまであまり九州国立博物館に縁がなかった人にこそおすすめしたいのです。
fujipon.hatenadiary.com
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