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僕としては、事前の予想がけっこういい線いっていたということもあり、納得の結果ではありました。
恩田さんは、第2回の『夜のピクニック』以来、12年ぶりの『本屋大賞』受賞(そして、直木賞との史上初の同作受賞)について、こう仰っています。
大賞発表を受けて発売された『本の雑誌増刊 本屋大賞2017』(本の雑誌社)の中で、恩田氏は次のようにつづっている。
「直木賞を受賞してしまったので、ああ、これで本屋大賞はないなと、と思った。そもそも、本屋大賞そのものが既成の権威である文学賞へのアンチテーゼとして始まった賞だということを知っていたからである。(中略)そして、ふと気がついた。そうか、本屋大賞が目指すところと、既成の文学賞が目指すところの、ふたつの目的が交わるところに来られるまで、私も小説家として多少は成長したんだな、と思ったのだ」。
『蜜蜂と遠雷』については、直木賞を獲ったことにより、投票する人たちは「もうあれだけの賞を獲ってるしなあ……」とも考えたと思うんですよ。
芥川賞を受賞している『コンビニ人間』の9位には、そういう「投票する側の『今さらこれに授賞してもなあ」というのがあるんじゃないかと。
直木賞受賞は、『本屋大賞』の投票には、少なくともプラスには働かないと思いますので、そんななかで1位になった『蜂蜜と遠雷』はすごい。
個人的には、『蜜蜂と遠雷』は、もともと『本屋大賞』向きの作品で、こういう「マンガ的な小説」が直木賞を獲ったことのほうが、むしろ異例であり、『ひとり本屋大賞」でも触れた「直木賞の本屋大賞化」ではないかと考えています。
しかしまあ、そうなると、「もう、『本屋大賞』は役割を終えてしまったのではないか?」とも思うんですよね。
「ブログをやっている書店員さんやネットの有名書評家のとっておきのオススメ」は、インターネットによって、すぐに拡散されるようになりました。
それに対して、リアル書店員さんのほうが、これまでの自分のこだわりや作家や出版社のしがらみみたいな「権威や惰性」に引きずられて、同じような作家の、前作より面白くない作品をノミネートし続けているようにみえるのです。
そろそろ「読者大賞」の出番なのかもしれません。
良くも悪くもリリー・フランキーさんの『東京タワー』が選ばれるのが『本屋大賞』なのだ、というイメージが、僕にはずっとあるのです。
文章としてはそんなに流麗ではなくて、ゴツゴツとした自伝なのだけれど、誰かが一生に一度、書き残しておきたかった、そんな佇まいの小説。
既存の文学賞の枠にはおさまらないけれど、多くの人が読んで、心を揺さぶられた作品。
あるいは『謎解きはディナーのあとで』のように、読者の裾野を広げた、というか、これまで本をあまり読まなかった人が「ああ、読書も悪くないな」と思う、そんな本。
さんざん『コーヒーが冷めないうちに』を槍玉にあげてきましたが(そして、結局10位になるのなら、それこそ何故ノミネートされたんだ、とも思うのですが)、こういう系統の作品が推されるのも『本屋大賞』ではあるわけです(でも、『コーヒーが冷めないうちに』は、さすがにクオリティに難がある)。
恩田さんの感慨は、ある意味「本屋大賞の存在意義の終焉」でもあるのかな、と思うんですよ。
こういうときに、あえて『蜜蜂と遠雷』は外す、というのが『本屋大賞』ではなかったのか。
そういう意識があっても選ばれてしまったくらい今回は抜けていた、ということなのかもしれませんけどね。
結果には納得しつつ、それはそれで、「『本屋大賞』の大団円」みたいな回でした。
僕としては、『蜜蜂と遠雷』『みかづき』は超おすすめ、『罪の声』は「グリコ・森永事件」直撃世代にはおすすめ、としておきます。
あと、『コンビニ人間』は、今の時代を生きている人は、読んでおいたほうが良いんじゃないかと思います。
あとは……あまり積極的には……という感じです。
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