- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2016/05/21
- メディア: 大型本
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レトロゲームミュージック大好き人間としては、こんな本が出たら買ってしまうじゃないですか。ナムコの往年の名作ゲーム音楽CD付き、とか書いてあったらなおさら。
最近は『題名のない音楽会』で、ヴァイオリニスト・五嶋龍さんが「ゲーム音楽愛」を熱く語り、『ゼルダの伝説』のオープニングテーマを熱演していたり、トヨタのCMでゲーム音楽が使われていたりと、すっかり「市民権」を得てしまったゲーム音楽。
でも、僕にとっての「ゲームミュージック」の原点って、やっぱり、子どもの頃、補導員に怯えながら薄暗いゲームセンターのなかで聴いていた『ニューラリーX』や『ゼビウス』『リブルラブル』なわけです。
あのキンキンした尖った感じが、僕のゲームミュージックなんだよ!
というわけで、ジャストミート!な本だと思って購入したのですが、率直なところ、『ゲーム音楽大全』っていうわりには、ナムコの音楽とファミコンの音楽の話が多いし、1983年から89年の全ファミコンソフトの音楽レビューっていうのはすごいとは思うのだけれど、このくらいのボリュームだと、サウンドがすぐれた作品に対しては「すべてが素晴らしい」みたいなコメントしかできないよな、とコメンテーターに同情してしまいます。
『スーパーアラビアン』の「ファミコンなのに一世代前のゲームをプレイしている錯覚に」というコメントには深く頷きつつ、もうそれは音楽の話じゃないだろう、とか。
全部が物足りないというわけではなくて、1980年代のゲーム音楽作家へのインタビューは、大変懐かしく、あらためて当時の「熱さ」を感じさせるものでした。
ただし、ナムコに在籍していたクリエイターがメインなので、あまり広範なニーズには対応していません。
『ディグダグ』や『ドラゴンバスター』の音楽をつくった慶野由利子さんが1984年の『ビデオ・ゲーム・ミュージック』のレコーディングを振り返っているなかで、「当時は労働基準法で女性は22時以降に働いてはいけなかったので」と仰っていて、そうだ、30数年前の日本って、まだそんな感じだったんだよなあ、と思い出したりもしていました。
『ザ・ベストテン』も、年齢制限で出演できないアイドルとかいたものなあ。
慶野さんが、ゲーム音楽について、こんな話をされていたのが印象的でした。
振り返ってみれば、日本の大衆音楽史上、初めてインストゥルメンタルの曲が大衆音楽になり得たのがゲーム音楽です。それまでの日本では、音楽と言えば歌・言葉がつくのが当たり前でした。言葉の付かないインストゥルメンタルがポピュラーミュージックとして子どもたちにも楽しんで聞かれるようになったのは、歴史的事件と言ってもよいほどの画期的なことです。しかもレコードとしても成り立ったのですから。
ゲーム音楽というのは、日本の音楽史を変えるものでした。
それと同時に、演歌とか民族音楽のような、ジャンルそのものでは商業的に成り立ちにくくなってしまったものが「ゲーム音楽」として使われることによって、新たなファンを開拓したり、細々とでも命脈を保っている、というところもあるのです。
また、遠藤雅伸さんが、立体音響システムについて、「1980年代中盤から後半にかけて、技術はあったのだけれど、開発者がヘッドフォンをつけて、後ろから音が聴こえるという状態でソフトを作った際、ノイローゼになったり、精神的に病んだりしてしまうことが多かった」のが「お蔵入り」の理由のひとつだと話しておられたのは衝撃的でした。
大丈夫なのだろうか、プレイステーションVR。
ちなみに、付属している音楽CDの収録ゲーム音楽は以下のとおりです。
(1)ゼビウス(ファミコン版)
(2)パックマン(ファミコン版)
(3)マッピー(ファミコン版)
(4)ギャラガ(ファミコン版)
(5)ディグダグ(ファミコン版)
(6)ドルアーガの塔(ファミコン版)
(7)ワルキューレの冒険 時の鍵伝説(ファミコン版)
(8)ドラゴンバスター(ファミコン版)
(9)スカイキッド(ファミコン版)
(10)妖怪道中記(ファミコン版)
(11)ワギャンランド(ファミコン版)
(12)YMCK特別編曲ナムコメドレー(YMCK)
ナムコばっかり、そして、ファミコン版ばっかりか……
僕の思い入れとしては、ナムコの初期のゲーム音楽は、アーケード版こそ!なので寂しいかぎりです。リブルラブル……パックランド……
ファミコン版となると「もう『みんなのもの』になった後じゃん!」っていう気分になってしまう、傲慢なオールドゲーマーなんだよなあ、僕は。
率直に言うと、楽しみにしていた分だけ、物足りなく感じたところも多かったのですが、こういう「懐かしのゲーム音楽」が採りあげられる機会が、もっともっと増えてくれることを願っております。
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