いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『ドルアーガの塔』で学んだ、「ゲームがうまい人は、何を考えているのか?」


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 「ゲーセンミカド」の休業中配信より。
 外出自粛期間中は、家で缶ビールを開けつつ、本を読んだり、昔のゲームの動画などをたしなんでおりました。
 『ドルアーガの塔』懐かしい。そして、今でもこうしてほぼノーミスでクリアできる人がいるのだなあ。
 このクリア動画をみていると簡単そうに思うかもしれないけれど、1984年にこのゲームがアーケード(ゲームセンター)に登場したときには、「何をどうしたら良いんだこれ?」という感じでした。当時は、「アクションRPG」という扱いだったと思うのですが、RPGというよりは、各階でいろんな出し方がある宝箱をとって(中には不要もしくはマイナス効果のものあり)、一面ずつクリアしていく、というアクションゲームです。
 ゲームセンターでは、宝箱の出し方(1プレイヤーボタンを押す、なんてのもありました)の情報を、みんなで共有してクリアを目指した人たちもいれば、自分の知識を盗まれないように、覆いみたいなのを使っている人もいたんですよね。
 『マイコンBASIマガジン』の付録で、アーケードゲームの新作や攻略情報が特集されていて、毎回すごく楽しみにしていたものです。
 ゲーム性とグラフィックについて考えるとき、僕は『ゼビウス』のことを思い出します。
 『ゼビウス』があんなに衝撃的だったのは、アンドアジェネシスをはじめとする格好良くて驚きのあるキャラクターと丁寧に背景の物語が設定されていたから、だったのではないでしょうか。


 『ドルアーガの塔』のファミコン版が出たとき、はじめて、「ゲーム攻略本」がベストセラーになったのです。


 
 全部の階の宝箱の出し方が解説されているこの攻略本は、ものすごく売れて、ベストセラーリストの上位に名を連ねていたのです。
 ネットの攻略サイトもなく、ひとりの力で全部の宝箱の出し方を見つけることは極めて困難なこのゲームでは、「攻略本がないとクリア不可能」だったのです。少なくとも僕にとっては。

 35年前、書店で、この『ドルアーガの塔のすべてがわかる本』をレジに持っていったときに、レジで若い女性の店員さんから、「この本、ものすごく売れているんですけど、何の本なんですか?」と尋ねられたのは今でも忘れられません。
 僕はけっこういい歳になるまで、書店のレジで自分が買いたい本を差し出すのがすごく苦手で、たぶん、話しかけづらい雰囲気を醸し出していると思うのです。
 こんなふうに店員さんのほうから話しかけられたのって、この時だけなんですよ。
 店員さんにとっても、当時のゲーム攻略本というのは、「何これ?」って感じだったのでしょうね。


 あれから35年経って、ネットの攻略サイトが「最前線」になり、紙の攻略本は肩身が狭くなったと思いきや、今年のゴールデンウィークには、『どうぶつの森』の攻略本を求める人たちが書店に行列をつくっている、というのを知りました。
 一回りして、紙の攻略本に戻ってくる時代になったのか……と感慨深いものがあったのです。実際は、『どうぶつの森』の売れた数があまりにも多いので、その中で「紙の攻略本」を求めた人の割合は他のゲームと同じでも、結果的にすごい部数になった、ということなのかもしれませんが。
 日頃ゲーム攻略サイトを見ない人が『どうぶつの森』のプレイヤーには多そうでもあります。
 あらためて考えてみると、ゲーム攻略サイトって、見慣れていないと、一画面内の情報量が多過ぎて、使いづらいところもありますし。


 冒頭の動画では、長年『ドルアーガ』をプレイしてきた人の「すごいテクニック」を堪能することができるのですが、動画をみていると、ちょっともどかしい感じがするのです。それは、僕の感覚では「もう、このまま突っ込んでアイテムを取れそう」な状況でも、プレイヤーはそのアイテムの手前でいったん止まって一呼吸おいて、マジシャンの呪文を受けたり、敵がもう一回動いて止まるのを待ったりしてから、確実にその「最後の1コマ」を進めるからなんですよ。

 ミスが許されない、という縛りがあるからなのかもしれませんが、本当に慎重なプレイにみえます。
 ゲームスタートからクリアまで、「思い切って見切り発車」「一か八か」みたいな場面はほとんどありません。
 ゲームがうまい、というのは、敵弾の嵐をかいくぐるようなテクニックをイメージしがちなのですが、少なくともこの『ドルアーガの塔』の動画に関しては、「我慢するべきところで、しっかり我慢している」ことがすごく印象的でした。
 あんまり残り時間もなくて、目の前にゴールの扉があれば、「このままいけるだろう」と突っ込んでしまいがちじゃないですか。
 でも、「本当にうまい人」というのは、そこで油断せずに、「最後の1コマ」を慎重に進めていくのです。

 実際、車の運転も仕事のトラブルも、「まあ、ここまで来たから、たぶんもう大丈夫だろう」という希望的観測にとらわれたときに、大きな失敗をしてしまいがちですよね。

 うまくいきそうだからこそ、舞い上がらずに、確実に勝てそうな状況が来るのを待つことができるかどうか。
 プレイ動画では、危なげなくクリアしているようだけれど、そう見えるのが、すごいことなのです。

 ドルクロス!!


小説ゼビウスファードラウトサーガ

小説ゼビウスファードラウトサーガ

  • 作者:遠藤 雅伸
  • 発売日: 2005/09/09
  • メディア: オンデマンド (ペーパーバック)

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