いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

Netflixの『BASTARD!!-暗黒の破壊神-』を観て、『BASTARD!!』について僕が思い出したこと。


bastard-anime.com


6月30日から、『BASTARD!!-暗黒の破壊神-』のNetflixでのアニメ化版が公開されています。
そういえば、昔、OVA(オリジナルビデオアニメ)があったよなあ、と思い出しつつ、こうして「OVA」という言葉にも注釈をつけないとわからない人が多い(であろう)時代なんだよなあ、と感慨深いものがあります。


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僕にとって、『BASTARD!!』は、すごく印象深い作品なのです。
週刊少年ジャンプ』で連載がはじまったのが、1988年。今からもう34年前です。
(その前に、読み切り作品として『週刊少年ジャンプ』に『WIZARD!!〜爆炎の征服者〜』(単行本には『BASTARD!!』の第1話として収録)が1987年に掲載されています)

連載初回を読んで、僕はすっかりこの作品の虜になってしまいました。
それまでも好きなマンガはたくさんあったのですが、連載第1話からリアルタイムで読んで、「これはすごい!」と思ったのは、このときが初めてでした。その後も、そういう作品はほとんど記憶にありません(僕が週刊マンガ誌をリアルタイムで読むよりも、コミックスでまとめて読むほうが好きだから、というのもあるけれど)。

2000年以降くらいからマンガを読むようになった若い人たちには、信じてもらえないかもしれませんが、1980年代後半くらいの日本では、「剣と魔法のファンタジー世界」というのは、まだマイナーというか、好事家たちのものだったのです。

日本でも、以前から『指輪物語』に根強いファンがいて、「アドベンチャーゲームブック」のシリーズや『ロードス島戦記』が話題になり、『ドラゴンクエスト』(『1』が1986年)や『ファイナルファンタジー』(『1』が1987年)などのテレビゲームで「剣と魔法の世界」は、少しずつ浸透してきてはいたのです。

そんななかで、あのマンガ界のメジャーの中のメジャー『週刊少年ジャンプ』の巻頭に『BASTARD!!』が掲載されていたのは、僕にとってはすごく衝撃だったんですよ。

「えっ、『ジャンプ』にこれが載るの? みんな意味わかるの?」って。
萩原一至先生の絵の緻密さに、エロチックな女性描写、ダーク・シュナイダーという「善い人、ではないけど滅法強いダークヒーロー」。

うわー、僕のためのマンガだ!というのが、第1話を読んでの率直な感想でした。

テレビゲームの世界をモチーフにした、ジャンプの王道的な「努力・友情・勝利」の「剣と魔法の世界」のマンガ、『DRAGON QUEST -ダイの大冒険-』の連載開始が1989年であることを考えると、『BASTARD!!』は時代を先取りしていた、というか、先取りしすぎていたのかもしれません。


BASTARD!!』に関しては、ひとつ思い出があって、大学時代に同じ部活の人たちが、僕が住んでいたアパートに遊びにきていたとき、ある先輩(女性)が、本棚にあった『BASTARD!!』をみつけて読みはじめ、「これ、面白い! しばらく借りてもいい?」と尋ねられたのです。
その人は、けっこう厳しい先輩、というイメージがあって、それまであまり話したこともなく、なんとなく近寄りがたかったのですが、「この人がマンガ読むんだ、『BASTARD!!』気に入ったんだ……」と驚きました。
全然たいした話じゃないし、それから、その先輩と何かがあった、というわけでもないのだけれど、僕にとっては、なぜかずっと忘れられないんですよね、あのときのこと。


鮮烈なデビューを飾った『BASTARD!!』だったのですが、性的な描写が問題視されたのか、やはり「よくわからん」という読者が多かったのか、そもそも、週刊誌向き、それも『週刊少年ジャンプ』向きではなかったのかはわかりませんが、「僕は面白いと思っているのだけれど、ずっと『ジャンプ』の巻末で、打ち切り危険水域の状態」が続くようになりました。

萩原一至先生の原稿の遅さはしばしばネタにされ、「ほとんどネームに近い、セリフが入っただけのページ」が掲載されたこともありました。あれは本当にすごかった、というか、信者に近い大ファンだった僕も「あんな放送事故みたいな回(ページ)が、300万、400万部くらい刷られたのか……」と絶句せずにはいられませんでした。今ならネットで大炎上しそう。

作画のクオリティを求めるあまり、だったのか、ストーリーが入り乱れてしまった収拾がつかなくなったのか、作者の体調などの問題だったのか。
これまでも、オンラインゲーム化などのメディアミックスが発表されては、いつのまにか立ち消えになっていたのです。
それでも、コアなファンは少なからず存在していましたし、僕も「単行本の新しい巻が出ていたら買う」ことだけは続けていたのです。


しかし、単行本の最新刊、27巻が出たのが2012年3月。萩原先生の活動としては、2017年に成人向けの同人誌を出されたそうですが、もうこれは実質終了、みたいな感じなのかな……と半ば諦めてもいます。

今回のNetflixでのアニメ化をきっかけに、なんらかの形で完結に向けて動かないかな、という期待と、もう『BASTARD!!』の前半の面白いところだけを読んで、「これで歴史が変わったんだよなあ」と思えば、それでいいのかな、という悟り、みたいなものが入り乱れています。
正直なところ、僕にとって『BASTARD!!』は、第1話が最高で、全てだったような気もするのだよなあ。



ここまででかなり長くなってしまったのですが、Netflixで新たにアニメ化された『BASTARD!!-暗黒の破壊神-』第1話だけ観ました。

懐かしかった。

うーん、困った。細かい場面や魔法の名前、セリフなどをまだ自分が覚えていることに驚きはしたのですが、2022年にアニメで観る『BASTARD!!-暗黒の破壊神-』は、すっかり「古典」になっていました。
ストーリーを知っている、というのはあるとしても、「面白い」ではなく、「ひたすら懐かしかった」。
BASTARD!!』は、『週刊少年ジャンプ』に掲載されたことによって、作品そのものの売上や人気よりもずっと大きな影響を後世のマンガやアニメに与えてきたのだと思います。
その影響を受けた作品をこの34年間にずっと観続けてきたからこそ、いま、その源流を観なおしてみると、やはり「古さ」や「懐かしさ」を感じずにはいられない。


今回、Netflixのアニメではじめてこの作品に触れた人は、どう感じたのだろうか。


このアニメはもちろん、『BASTARD!!』も、僕が生きているかぎり、見届けたいという思いはあるんですけどね。

「ヘソまで反り返ったオレの(ピーッ)が!」みたいなのは、もう2022年には「無し」なんだろうなあ。いや、50歳にもなってそれを聞かされてもちょっと困る(昔は昔で困っていたけど)。


それにしても、最近のNetflixのオリジナルアニメには、明らかに僕世代が狙われている感じがする……

※個人的には誰かにオススメのアニメを聞かれたら『SPY×FAMILY』面白いよ!と答えています。それが処世術ってものだ(というか、『SPY×FAMILY』は、いま観て本当に面白いし)。


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