いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「松屋のステーキ丼」に対する、ネットメディアの「レビュー」への疑問

 松屋が好きだ。
 正直、牛丼は吉野家のほうが美味しいと思うけれど、食券で注文ができて、いろんな定食がある松屋を僕はけっこう愛用してます。
 2週間に一度くらいのペースで、新しい定食系のメニューが出るので、一度は食べてみようかな、という気分にさせられるのです。
 最近ではジョージア料理のシュクメルリとかエビチリ(こちらは今も販売中)なんてのも話題になりました。


 そんな松屋の最近の新メニューといえば、「ステーキ丼」。
 
ascii.jp


 系列のステーキ専門店『ステーキ屋松』の大ヒットメニューで、ステーキ屋松の和風ソースと松屋オリジナルの洋風ソースがあるそうです。
 普通盛りは、みそ汁付きで750円。「デカ盛り」は1150円。

 この値段で、ステーキ丼が気軽に食べられるなんて!と早速近所の『松屋』に出かけて、和風ソースの普通盛りを注文したのです。
 しばらくの待ち時間のあと、出てきたのは、「うーむ、肉を焼いたものをすべからく『ステーキ』だと定義するのであれば、これはまぎれもなく『ステーキ丼』なのでしょうけど、僕には『少し厚切りだがボリュームはいまひとつでけっこう硬い焼肉丼』にしか思えない」というものでした。
 これまで食べたものと比較すると『ほっともっと』のステーキ弁当と同じくらいのクオリティかな。
 同じプレナス系列だけれど、『ほっともっと』より『やよい軒』のカットステーキ定食のほうが、はるかに「ステーキ感が高い」と思います。

 長年の松屋ファンの僕は、最近の松屋の新メニューは、あまりにも宣伝のポスターの写真と実物が違いすぎると感じています。
 
www.matsuyafoods.co.jp

 これなんか、とくに写真と実物のギャップが大きかった。


netatopi.jp

 一昨日、偶然このメニューの実験店に入ったので注文したのですが、出てきたのは硬くて小さなリブロースの欠片が5~6切れくらい。
 値段を考えればそんなものかもしれないけれど、宣伝の写真とあまりに違うので驚きました。肉の量は、このポスターの半分から3分の2。
 出てきたときに、「えっ?」って、思わず声に出てしまったほどです。


 その値段でまともなステーキとかを食べようというのが間違っている、とか、メニューの写真と実物が違う、なんていうのはよくある話だからいちいち目くじら立てなくても、と言われるのは百も承知です。

 僕はヘビ―ネットユーザーなので、最近の松屋のネット広告戦略が、ものすごく気になっているんですよね。
 この「牛リブロースのカットステーキ定食」が「柔らかジューシー」っていうことは、僕が食べた店の品物が、偶然、「ハズレ」だったのだろうか。
 そもそも、松屋の新商品が出るたびに褒めそやす「格安グルメ系メディア」の人たちは、本当に食べているのか? 正直な感想を書いているのか?
 ああいうのが「客観的なレビュー」というわけではなくて、店側には宣伝という意図があり、メディア側はPV(ページビュー)を稼げるネタ(コンテンツ)として取材して書かれた記事だというのは承知しています。
 でも、【PR】って付かないんだよねこういう場合には。

 最近の松屋の新商品で、とくにそういう「実際に食べてみて落胆した」ものが多かったのでやり玉にあげてしまって申し訳ないのですが、今のインターネットには「レビューを装った宣伝記事」があまりにも氾濫しているのです。
 もちろん、媒体によっては、「ステーキ丼」に対しても、「ステーキというより焼肉という感じ」とか「ジューシーというより、けっこう歯ごたえがある」とか、筆者の「良心」が伝わってくるものもあるのですが、逆に言えば、婉曲にしか書けないのでしょう。
 読解力がないと、インターネットのレビュー、とくに「ちゃんとした(ように見える)媒体のレビュー」に踊らされてしまうのです。

 松屋のメニューも、全部が「実物と写真違いすぎ」なわけではなくて、回鍋肉定食やごろごろチキンカレーのような、僕も何度もリピートしている傑作があります。鰻丼は、今の日本で食べられる、(かかる時間も含めて)もっともコストパフォーマンスが高い鰻丼だと思いますし。

 「当たり」があるだけに、やっぱり気になって、新メニューを注文してしまうんですよね。まあ、そういう「当たりハズレの楽しみ込み」と考えれば、リブロースが硬い!とか文句を言うのは、期待しすぎているとも言えるのでしょう。
 
 ネットメディアの「レビュー」と「広告」の曖昧さというか、ネットメディアには「レビューという名目の宣伝」が多くなりすぎていて、どんどん信用を失っているのは事実だと思うのです。
 新聞やテレビなどの旧メディアは広告主に忖度ばかりしている、と一昔前の「ネット民」たちは声を荒げていたけれど、結局のところ、
それが「ビジネス」になってしまえば、ネットメディアも同じなのです。しかも、ネットメディアでは「CMと明示されていないCM」が横行している。いや、それどころか、どんどん増えていっている。
 YouTuberも、企業や取材相手に配慮していて、「本音」は言わなく(言えなく)なってきている。

 だからこそ、みんなSNSハッシュタグで検索して口コミで情報を集めるようになっているのですが、「インフルエンサー」になれば、また諸方面に気をつかうようになってしまう。

 今回、松屋の「ステーキ丼」を食べて思ったんですよ。
 この値段だから仕方がないし、選んだのは自分の責任だ。
 でも、店の入口に貼ってあるポスターの写真と実際の商品が、あまりにも違う。
 みそ汁付きとはいえ、これに750円出すのなら、『いきなりステーキ』で1390円出してワイルドステーキ300g(ランチタイムならライス・サラダ・スープ付き)を食べたほうが、価格差以上に「ステーキ欲」は満たされるはず。
 最近はバッシングされがちな「いきステ」だけれども、原価率の高さもあってか、肉のコストパフォーマンスは悪くないんだな、と、松屋の「ステーキ丼」を食べて痛感したのです。
 「地元にはもっと美味くて安いステーキ屋がある」とか「自分で肉を買ってきたほうが安い」という人もいるけれど、僕が住んでいるような地方都市にも店舗がたくさんあって、ひとりでも入りやすくて、調理と後片づけの手間、うまく焼く技術を考えると、『いきステ』って、けっこう貴重な存在ではなかろうか。あの社長のキャラクターは嫌でも、店は選択肢としてあったほうが良いのではないか。というか、僕は近くの『いきステ』は潰れないでほしい。
 まあでも、そんな『いきステ』は、水に落ちた犬は叩く、とばかりにメディアからは総じて厳しい扱いを受けつづけているわけです。業績不振で広告費が減った、というのもあるのではなかろうか。
 その一方で、松屋の新メニューは、玉石混交なのに、ネットメディアでは、「レビュー」の顔をした広告で「絶賛」ばかりされている。
 
 いまの時代、何を信じればいいのだろうか?
 松屋の新メニューで外れを引くくらい、たいした問題ではないのかもしれないけれど、ネットに「批評や感想のフリをした宣伝・広告」ばかりが撒き散らされているというのは、なんだかとても不安になります。
 最初から「金儲け第一主義」っていうメディアばかりじゃなくて、「ネットでちゃんと本当のことを言おう」としていたであろう人たちも、メジャーになって「業界の内側」に入ってしまうと、「お金としがらみ」に取り込まれていくのです。

 「本当のこと」って、いったい、どこに書いてある?


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