いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

私、「いきなり!ステーキ」の味方です


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 僕が車で通勤している道路脇に、郊外型の「いきなり!ステーキ」があるのです。
 2年前くらいのオープン当初は、ランチタイムや夕食どきにはものすごく賑わっていて、店の前は行列、駐車場は一杯、という状況でした。
 当時は、メディアでも「いきなり!ステーキ」の社長がもてはやされていて、「立ち食いで回転率を上げることによって、原価率が高い、美味しいステーキが安く食べられる!」と「糖質制限ダイエットに最適!」と、信じられないくらい「肉マイレージ」を貯めるリピーターが大勢いたのです。

 それが、急速に店舗を増やし、飽和状態になったことや値上げが続いたこと、「ステーキ」をそんなに頻繁に食べなくても良いことに多くの人が気付いたことにより、既存店のお客さんや売上がガタ落ちし、「いきなり!ステーキ」は、出店攻勢の見直しを余儀なくされています。


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 1年前は株価が4000円くらいだったのが、今(2019年11月29日)は1300円にまで下がっています。おそらく、まだ下がり続けるのではないでしょうか。
 「時代の寵児」も、一度歯車が狂ったら、こんなことになるのか……と、最近ではランチタイムや夕食時でも駐車場がガラガラになっている近所の「いきなり!ステーキ」の横を通りながら、ちょっと悲しくなるのです。

 僕は「いきなり!ステーキ」けっこう利用しているんですよ。糖質ダイエットをやっているわけではないけれど。

 今年、2019年の元日、1月1日の夜、僕はひとりで家にいました。
 病院勤めをしていると、ときどき、「病院に詰めていなくても良いけれど、何かあったら行ける状態で自宅待機」ということがあり、元日にひとりで家に残って、PS4の『ジャッジアイズ』をプレイしていたのです。
 半日くらいぶっ続けでゲームをやれる、という状況は、日常ではめったにないことなので、新鮮な気分ではあったのですが、夜になって、お腹が空いてきた。でも、元日からコンビニ弁当では寂しいし、今日はアルコールも飲めない。うーむ、なんだか突然、寂しくなってきた。
 そのとき、僕はふと思いついたのです。
 そうだ、「いきなり!ステーキ」に行こう。あそこなら元日の遅めの時間帯でも開いているだろうし、ちょっと贅沢な気分にもなれそうだし。

 寒い中、外に出るのめんどくさいな、と思いつつも、「いきなり!ステーキ」に行くと、なんとなく、そのときの僕と似たような状況の「元日だけど家でのんびりできないのを持て余しているっぽい人たち」で、けっこう賑わっていました。
 ヒレステーキ300gを注文したのですが、それを口に入れたら、なんだか、すごく美味しくて、幸せな気分になったのです。
 元日から働いている店の人たちには、やや申し訳ないところではありますが、極寒の夜にひとりで食べたステーキは、本当に胃と心に沁みました。


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 「いきなり!ステーキ」はどんどん値上がりしているし、ワイルドステーキはワイルドすぎて顎関節症の僕にはつらいし、水のお代わりをいちいち店員さんに注文するのはめんどくさいし(ドリンクを売りたい、というのはあるのでしょうけど)、いつも注文より大きめにカットされて、それが案外会計に響くし、あれこれ言いたいことはあるんですよ(僕が行く店は、すでに「立ち食い」ではなくなっています)。
 牡蠣とかコース料理化とかカレーとか、「迷走」以外の何物でもない。
 低迷のいちばんの原因は、「どんなに原価率が高いと胸を張られても、ステーキというのは頻繁に食べるには値が張るし、店が増えすぎて『いきなり!ステーキ』同士で競合している」ことに尽きると思うのです。
 そもそも、家族で肉を食べたいときには、最近では、『焼肉きんぐ』とかのオーダーバイキングの店のほうが、同じくらいの金額で、いろんなメニューが食べ放題です。

 でも、僕としては、前述したような「一飯の恩」みたいなものもある(お金は払ったんですけど)。
 「いきなり!ステーキ」のような、ひとりで、どうしても肉が食べたい!という気分になったときに、フラッと入れる店が無くなってしまう(あるいは、都会にしかなくなってしまう)ことを、心配しているのです。
 

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 この「Yahoo!ニュース」でのコメント欄を読むと、みんな手厳しいなあ、と思うんですよ。
 「スーパーで自分で肉を買ってきて焼いたほうが安くて旨い」「うちの近所の〇〇のほうが美味しい」
 いやまあ、個別の状況の違い、っていうのはあるんだろうけど、僕は家でステーキをうまく焼く自信はないし、準備や後片付けの大変さを考えると、自分で焼くほうが(材料費以外の時間や手間を含めての)コストが高い気がします。〇〇は僕の家の近くにはないし。
 都会には、「一人焼肉(アルコールなし)」が悪目立ちしないような店がたくさんあるのかもしれないけれど、地方都市のちょっと郊外だと、「いきなり!ステーキ」が、「一人だけど、どうしても肉を食べたくなったとき」の唯一の選択肢になってしまうのです。
 逆に言えば、そういうところにまで出店してしまったことが、いまの苦境の原因となっているのかもしれません。

 正直、このままだと、近所の「いきなり!ステーキ」が閉店するのも時間の問題ではないか、と危惧しています。
 とはいえ、僕自身も、そんなに頻回に行っているわけでもないし、最近はさらに行く頻度が減っているので、人にどうこう言えるようなものではないのですけど。
 でもさ、「××はもうオワコン!」なんて叩くのは気持ちいいかもしれないけど、実際に無くなったら、ちょっと困ったり、寂しくなったりするものって、あると思う。
 世の中が「いきなり!ステーキ」はもうダメだ、という空気を醸成していくことによって、嫌いじゃない人でも、選択肢から外すようになってしまうことも少なくないはず。
 コメント欄で悪口を言っている人たちは「自分が行かなければいい」だけなのでは……

 とはいえ、「水に落ちた犬を打つ」というのも、ネット(そして世間)の伝統芸であり、僕自身も、これまでに何度もそういうことをしてきた自覚はあります。「いきなり!ステーキ」の今後が、僕の人生を大きく左右する、というわけでもないでしょう。
 
 田舎の寂しいオッサンの僕としては、「ああいう業態の店があるのは喜ばしいこと」なんですよ。
 これ以上増えなくてもいいから、無くならないでほしい、と願わずにはいられないのです。
 僕ひとりの「未練」みたいなもので、どうにかなるわけではないことは、頭ではわかっているのだけれども。


私、プロレスの味方です (新風舎文庫)

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いきなり!ステーキ

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