テレビゲームの歴史とともに生きてきた僕は、この増田さん(『はてな匿名ダイアリー』の書き手)の話を読んで、いまの若者はそう思うんだなあ、と感慨深いものがありました(増田さんが本当に若者かどうかはわかんないのですが)。
対戦型格闘ゲームって、「ルーツ」があるのだろうか、と考えてみたのですが、思い浮かんだのは、コナミの『イーアルカンフー』、任天堂の『アーバンチャンピオン』だったのです。
困ったときのWikipedia頼み。
ja.wikipedia.org
これをみると、1984年に出た「さあ、牛だ!」でおなじみの『空手道』の対戦版『対戦空手道』と『イーアルカンフー』『アーバンチャンピオン』あたりが対戦型格闘ゲームのはじまりのようです。セガのプロレスゲーム『アッポー』も紹介されています。『アーバンチャンピオン』わざと時間切れにして、対戦相手を警察に連行してもらうのが好きだった。
1987年には、カプコンから『ストリートファイター』が出ています。
「対戦型格闘ゲーム」というのは、基本が対CPU戦で、友達とも対戦できる、というタイプのゲームだったのです。
1980年代は、まだテレビゲームが「一家に一台」レベルには普及しておらず、「小金持ち、あるいはゲーム・コンピュータ好きの友達の家に集まって遊ぶ」というのが、小中学生にとってはあたりまえの時代でした。
僕の家にも、毎日のように友達が集まってきていたのです。
とはいえ、当時は対戦型のゲームといえば、『ファミスタ』などのスポーツゲームか、『マリオブラザーズ』などの協力ものが主で、けっこう、「友達の誰かひとりがプレイしいているのをみんなで眺めつつ、そこらへんのマンガを読んでゴロゴロしている者もあり」みたいな感じでした。
対戦型格闘ゲームが出てからずっと、メーカーもプレイヤーも「友達と対戦するゲーム」だと認識していました。
ところが、その歴史を大きく変えたのが、1991年にカプコンから発売された『ストリートファイター2』だったのです。
このゲームは、コマンド入力による必殺技や、個性あふれるキャラクターなど、大変魅力的だったのですが、アーケード版が出たときには、カプコンの内部でも、「知らない人といきなりゲームセンターで対戦する」なんてプレイヤーがいるのだろうか?そういうニーズがあるのだろうか?という疑問の声があがっていたそうです。
お互いに顔が見えないような筐体の開発や「最強」を目指すプレイヤーたちの力比べ文化が生まれたことにより、『スト2』は、「知らない人と対戦する文化」をつくったのです。
ストリートファイターⅡAC版 STREET FIGHTER Ⅱ
このゲームがスーパーファミコンに移植されたときには、友達どうしの対戦が盛り上がりをみせ、大学のテストの前日に現実逃避から対戦にハマってしまい、単位を落としたなんていう悲劇もたくさんありました。
いまは、単位を次の学年に持ち越せなくなり、再試でも落ちると留年が決まる、という時代になっていることを考えると、牧歌的な時代だったなあ。
そして、スーパーファミコンで鍛えたファイターたちが、ゲームセンターにやってきて、見知らぬ猛者たちと腕比べをする、という循環ができ、対戦格闘ゲームはゲームセンターを長年支えていくことになりました。『バーチャファイター』や『鉄拳』シリーズなど、対戦格闘ゲームのおかげで、ゲームセンターはかなり潤っていたのです。
ただ、それは逆に「対戦型格闘ゲームばかりのゲームセンター」を生み出すことにもなったんですよね。
このブームのおかげで、対戦格闘ゲームをあまり好まない(正直、僕はそうなんです)プレイヤーたちは、ゲームセンターから足が遠のいてしまいました。
ネット対戦ができるようになると、都心の一部の修行場みたいなゲームセンターを除けば、ゲームセンターでの対戦も下火になっていったのです。
増田さんの文章を読んでいて感じたのは、『ストリートファイター2』から、もうだいぶ時間が経ったのだなあ、ということでした。
そして、物心ついたときには「インターネットが社会のインフラとして存在しているのがあたりまえ」だった人と、「インターネットで世界中の人と対戦できるのか、すごい!」という時代の転換を目の当たりにしてきた僕とでは、見える風景がこんなに違うのか、と驚いたのです。
でも、……ネット経由とはいえ、知らない人と対戦するのは今だに僕にはハードルが高いなあ。オンラインRPGでも、他のプレイヤーに声をかけられなくて、結局、楽しみ方がわからなかった。
オンラインでも、「対人」だと、相手のことを考えてしまって、なんとなくやりにくいという人もいるのです。
思えば、携帯電話(PHS)が普及したのは四半世紀前くらいからですし、いま、番組表をみながらボタン一つで録画できるハードディスク付DVDの前は、自分で新聞の番組表をみて、ビデオデッキでタイマー録画をしていたわけです。野球中継が延長になって、肝心のところで録画が切れてしまうこともよくありました。
もっとさかのぼってみると、テレビ番組が「録画」できることが革命であったり、ボタンを押した方向に、テレビ画面上のキャラクターが動くことに感動したりしてた時代があり、その前には、テレビで絵が動くことそのものが驚きだった時代があった。
コンピュータと対戦して楽しい?という問いに関しては、「コンピュータとまともに対戦できるようになったことに歓喜した時代を僕は生きてきた」のです。
カセットビジョンの野球ゲームとか、コンピュータのバッターは、ずっとグルグルとバットを回し続けていたし、昔の将棋ソフトは、ちょっと強いモードにすると、何時間も考え込んでいました。
1978 エポック社 テレビ野球ゲーム 日本最早的家用棒球電玩遊戲機
僕は通信対戦ができるようになって、ボードゲームが復権するのではないか、と期待していたのですが、なかなかそうはいかないみたいです。
『桃太郎電鉄』シリーズや『いただきストリート』などは、好事家と通信対戦できれば、対戦相手に困らないだろうと思っていたのだけれども、1回のプレイに時間がかかるというのは通信対戦ではハードルが高い。
ボードゲームの場合は、誰かが圧倒的優勢になってからも、けっこう長い時間負けるために付き合わなければいけないところもありますし。
逆に、ボードゲームが今の時代まで生き残っているのは、テレビゲーム化され、コンピュータと対戦できるようになったから、なのかもしれません。
こういう「世界の見え方の世代間ギャップ」みたいなものを知ることができるのは、ネットの面白さではありますね。
もちろん、世代差よりも個人差のほうが大きい場合もあるのだけれども。
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