いつか電池がきれるまで

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推理アドベンチャーゲームの歴史を辿るための10作品

 昨日、2017年8月31日に『探偵・神宮寺三郎』シリーズの最新作『GHOST OF THE DUCK』が発売されました。
 35年くらいテレビゲームをやっている僕が、いちばん愛してやまないゲームのジャンルはAVGアドベンチャーゲーム)で、次がSLGシミュレーションゲーム)です。
 AVGのなかでも、「推理アドベンチャーゲーム」はとくに好き。
 ところが、「推理AVG」って、テレビゲーム初期には、けっこう発売されていたのですが、最近は斜陽というか、あまり新作を見かけなくなりました。スマートフォンで遊ぶには手ごろなのか、それらしいタイトルも見かけるのですが……
 というわけで、秋の夜長に楽しんでいただける、推理AVGの歴史を辿るための10作品を御紹介してみます。
 「どこまでが推理AVGなのか」というのは、けっこう難しいところではあるのですが、今回は「プレイヤーが探偵役(もしくはその助手)で、事件の謎を解き、犯人を見つけることが目的のAVG」と定義しています。
(『スナッチャー』とか、『ポリスノーツ』、のような、事件を扱ったり、犯人捜しをする場面はあるけれど、それがゲームの目的ではないものについては、今回は除外しました)



(1)ミステリーハウス(1980:Apple2など)

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 僕はこのゲームをケイブンシャの『マイコン入門』で見て、「マイコンって、こんなゲームができるのか!」って感動したのです。
 それまでのアクションゲーム(と簡単なシミュレーションゲーム)だけじゃなくて、「物語」を自分が主人公になって体験できるゲーム。
 もしあのときApple2を買えていれば、もっと英語ができるようになったのだろうか……
 結局、AVGのおかげで覚えた英語って、「Polish」と「Pray」くらいだものなあ。

Wikipediaのストーリー説明)
主人公を含め全部で8人の男女が謎の館に招かれた。その館のリビングで見つかったノートには、館のどこかに宝石が隠されている事、そしてそれは発見者のものだという事が書かれていた。それを見て8人は我先にと宝石を捜し始めるが、その中の1人が絶対に自分が宝石を手に入れるために、他の7人の殺害をくわだてた。殺人者の手から身を守り、宝石を見つけ出して館を出ることができればゲームクリアー。


 あらためて考えてみると、このゲームではプレイヤーが事件を推理して解決するというよりは、アイテムを駆使してストーリーを進めていくと、どんどん人が死んでいって、最後に犯人がわかる、という感じなので、入れるべきかどうか、少し悩みました。
 でも、「推理AVGの原点」として、とりあえず紹介しておきます。



(2)ポートピア連続殺人事件(1983:PC8801,PC6001,ファミコンなど)

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 あの堀井雄二さんがつくった「日本AVGの草分け」とも言える作品です。いろんな機種に移植されましたし、ファミコンでも「初のAVG」として発売され、『週刊少年ジャンプ』の「ファミコン神拳」で、猛プッシュされたこともあり、ものすごく売れました。
 「犯人は〇〇」は、もう今さら伏字にする意味があるのか、と迷うくらいの慣用句となり、出典であるこのゲームを遊んだことがない人も多いのだろうなあ。
 ファミコン版では、なぜか3Dダンジョンが追加されており、壁の「もんすたあ さぷらいずど ゆう」というメッセージを紙にメモし、これは何かの暗号かキーワードに違いない、と思いつつ、まったく使わないままエンディングを迎えてしまったのです。
 のちに、堀井さんがハマっていた『ウィザードリィ』のモンスター遭遇メッセージを壁に書いておくという「お遊び」だったことを知ったのです。
 そんな作者の「遊び」を入れることが、ミリオンセラーになるゲームでも許されていた時代、だったんですね。



(3)道化師殺人事件(1985:PC9801など)

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『鍵穴殺人事件』『道化師殺人事件』『カサブランカに愛を 〜殺人者は時空を越えて〜』 『THE MAN I LOVE(ザ・マン・アイ・ラブ)』など、渋い大人のミステリを出し続けていたシンキングラビットの代表作のひとつ。
 当時としては、シナリオもグラフィックもものすごく凝っていました。
カサブランカに愛を』は、泣けます。



(4)さんまの名探偵(1987:ファミコン

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 日本で最もたくさんの人に遊ばれた推理AVGのひとつなのですが、いまだに「明石家さんまさんに、このゲームの話をするのはNG」だと言われているそうです。本当かどうかはわかりませんが……
 まあでも、先輩芸人たちにいろいろやってますからねえ、ゲームの中とはいえ。あまり触れたくないだろうなあ。
 ちょっと癖のある(というか、理不尽に難しいところがある、『たけしの挑戦状』ほどじゃないけど)ゲームではありますが、当時のAVGの問題点として、「あまりにも早くクリアされてしまい、何度も繰り返し遊べるものではない」というのがあったんですよね。



(5)マンハッタン・レクイエム(1987:PC88,98,FM-7,X1,X68000, ニンテンドーDSなど)

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 J.B.ハロルド!
 1986年にシリーズ第1作の『殺人倶楽部』が出たときには、夢中になって、「コマンド総当たり」をやったものです。
 当時はフロッピーディスクでもロード時間があったのに、よくそんなに気合入れていたものだなあ。
 コマンドが正解だとディスクを読みに行って、それがけっこう嬉しい。
 この『マンハッタン・レクイエム』が僕にとってはシリーズ最高作なのですが、同じキャラクター、グラフィックを使って、シナリオだけが違う『殺意の接吻』というアナザーストーリーが発売されたのも印象的でした。でも、『殺意の接吻』のほうが、ずっと難しかったんだよなあ。
 スマートフォンで後年遊びなおしたのですが、やっぱり面白かった。



(6)北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ(1994:PC6001,PC8801,ファミコンなど)

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 僕が遊んだのは1987年発売のファミコン版だったので、この順番に入れました。
 個人的には、ファミコンで遊んだゲームのベスト5に間違いなく入る作品で、後半ぐんぐんと盛り上がってくるストーリーに、PSG音色の魅力が詰まったBGM、新井画伯のグラフィックに、めぐみのお風呂場でのシーンまで、ずっと記憶に残っています。
 ファミコンゲームの常識を覆した、「いったん電源を切らないと先に進めないトリック(?)」とか、ブラックジャックに勝つとヒントがもらえるシステムとか、ラストのボスの悲哀とか、大好きですこれ。
 ちなみに、「コマンド選択式AVG」を確立したゲームでもあるんですよね、これ。
 『白夜に消えた目撃者』は、結局出なかったな……というか、最近聞いた話では、ロケハンの時点で、「これはダメそうだ」と堀井さんと担当編集者は思っていたらしいです……ひどい、ずっと待ってたのに……



(7)探偵 神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件(1987:ファミコンディスクシステム

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 「タバコ すう」
 うーむ、ハードボイルドだな……今だったら、「ゲームの中でそんなにタバコを吸っていたら、子どもたちに悪影響が!」とか、言われそうな感じではあります。
 しかし、いまや「日本でもっとも長く続いている推理AVGシリーズ」となったこの作品、第1作のトリックは、「そんなこと人間にできるのかよ」感満載でした。
 まあ、そんなこと言っていたら、推理ゲームのトリックなんて、ほとんど「実際には無理」なんでしょうけど。
 スマートフォンに移植されたり、いきなり3D化されたと思ったらボリューム不足で大バッシングされたりと、毀誉褒貶ありながらも、続いていますよねこのシリーズ。
 もしかしたら、全然売れない、ということもなければ、超大ヒットすることもない、というのが、このシリーズをずっと延命させているのかもしれません。
 なんのかんの言っても「シリーズものの推理AVG」の最後の牙城だものなあ。
 洋子さん、けっこう好きです。



(8)ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者(1988:ファミコンディスクシステム

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 こうしてタイトルをあげていくと、「推理AVG」が最も盛り上がっていたハードって、ファミコンディスクなのかもしれませんね。
 サイズ的にも「ちょうどよかった」のかもしれません。
 この『ファミコン探偵倶楽部』も、大容量ROMカセットの登場で、暗雲に覆われていたファミコンディスク市場で大いに存在感を示した作品でした。
 何年か前に久しぶりに遊んだのですが、けっこう楽しかった記憶があります。



(9)クロス探偵物語(1998:セガサターンプレイステーション

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 (8)に比べると、なんか急にオープニングがお洒落になっているのですが、10年違うし、こちらはセガサターンですからね。 
 この期間も、西村京太郎さんや山村美紗さん原作の推理AVGファミコンPCエンジンのCD-ROMなどで出てはいるのですが、今回は割愛させていただきます。というか、僕も西村京太郎さんのトラベルミステリーを何作か遊んだのですが、あまり記憶に残っていないんですよね。
 この『クロス探偵物語』、グラフィックやサウンドだけでなく、シナリオがけっこう印象的な作品でした。
 第3話の「ゆがんだ名門校」とか、「これはキツイ話だな……」と思ったものなあ。
 続編も出るはずだったのだけれど、現時点ではまだ出てません。面白いのに……



(10)逆転裁判(2001:ゲームボーイアドバンスなど)

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 正直なところ、これを入れるかどうか、というのはけっこう迷ったんですよね。
 これが「あり」なら、『ダンガンロンパ』シリーズだって入れなくちゃ、とか。
 とはいえ、今の家庭用ゲーム機の「推理AVG系」のなかで、これがいちばん多くの人に親しまれているゲームであることは事実です。
 霊媒とかサイコロックとか水鏡とか、「正統派」ではないし、「独自ルール」がいろいろあるゲームなのですけど。
 


 その他、候補としては、前述した『ダンガンロンパ』の他に『かまいたちの夜』、『ミシシッピー殺人事件』(ネタとして)、『殺意の階層』あたりを考えたのですが、あくまでも僕の基準での「推理アドベンチャー史を彩った10作」ということでご容赦ください。
 たぶん、たくさん見落としていると思うのですが、探偵や警察、捜査官が出てきて、事件を解決する、という「典型的な推理AVG」って、そんなにたくさんは無いのだな、というのが僕の実感です。
 個人的には大好きなジャンルですし、もっと盛り上がってほしいのですけどね。
 何か面白い推理AVGを御存知の方は、教えていただけると嬉しいです。



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 このゲームは本当にひどかったよね。でも、これを見ると笑ってしまう……



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