うむ、気持ちはわかる。
僕はもともと、「いろんなことに首を突っ込んでオタクぶっているけれど、広く浅くで、『これに関する知識は負けない』っていうジャンルがない」という、「私ってサブカル大好きで、みんなに変わってるって言われるんですよ~(好きなタレントは大槻ケンヂ)」みたいな半端者なので、映画について語るときも、あんまり自信はないのです。
それこそ「本当に15分で席を立ちたくなるような、前衛的でわけがわからない映画」は、最初から僕の選択肢に入っていない。
そういう前提があるとしても、僕自身は、体調不良や映画の内容以外の特別な事情を除けば、途中退席した記憶はないんですよ。どんなに「つまらない」映画でも。
映画館に行くと、はじまって15分とか30分くらいで席を立って出ていくひとって、ときどきいますよね。ああ、トイレにでも行きたくなったのかな……でも、なかなか帰ってこないな……
突発的な事情のほかに「こんなつまらない映画を観るのはごめんだ」という人もいたのでしょうね。
僕の友人は『プライベート・ライアン』の冒頭の戦場のシーンの残酷さに辟易して30分で出てきた、という話をしていました。
人には、それぞれの事情がある。
ちなみに、この「15分で出る」を読んで、この話を思い出しました。
ヌーベルバーグの旗手として知られるフランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダール曰く「映画は15分だけみればわかる」そうです。実際、ゴダールは冒頭の15分を見ると、映画館を出て次の映画を見にいっていたといいます。
ゴダールは、つまらないから15分で出てきたわけじゃないみたいですが、見る人が見れば、「この映画が面白いかどうか」くらいは、15分くらい見れば十分わかるのかもしれませんね。
「そんなの映画代の損」という意見に関しては、考え方次第ではありますが、どっちにせよ映画代は戻ってこないのだから、「映画代の損」+「つまらないものを2時間観るという時間の損」よりは、お金の損だけにとどめておいたほうがマシ、というのは合理的ではあります。
人生でお金は「使いきれないほど稼げる」可能性もゼロではないけれど、時間は有限です。どうせ損をするのなら、泥沼にはまる前に見切りをつける、という「人生の損切り」も大事ですよね。
僕自身に関しては、よっぽど観ていて不快になるような映画でなければ、とりあえず映画館まで行って観ようと思った作品については、最後までみて「落とし前をつける」ほうが、精神的にプラスではないかと考えているので、途中寝落ちすることがあっても、最後まで頑張って鑑賞することが多いんですよね。ひたすら眠かった、というのも、ひとつの感想ではあるし。
そう、こうしてネットで感想を書くようになったおかげで、僕はつまらない映画でもけっこう楽しめるようになりました。
このつまらなさをどう伝えようか、と思うと、なんだかワクワクしてきます。我ながら性格悪いのだけれど、面白いものや素晴らしいものに対して「感動して泣いた」なんて言うことには、本当でも嘘くささや照れがあるのだけれど、つまらないものに対して「なぜつまらないと感じたのか」を語るのは、なかなか面白い。
それに、こういう面はやっぱりあると思うんですよ。
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ある程度の数をこなしてみないと、そのなかでの自分なりの位置づけってできない。
ただ、これに関しては、「じゃあ、素晴らしい映画をより楽しむために、わざわざ、どうしようもない映画を観る体験を積み重ねなければならないのか?」とも思います。
映画っていうものが元々大好きで、何か自分が知らなかった隠れた傑作があるんじゃないか、と思って手あたり次第に観ていたら、いつのまにか自分の基準ができていた、というケースが多いのではなかろうか。
『バルトロン』『エグゼドエグゼス』『ミシシッピー殺人事件』のような「伝説のクソゲー」が人口に膾炙したのは、それを購入してプレイした猛者たちがいたからでもあるのです。
いまは、救いようがないほどつまらないものの多くは、手に取るまえに、すでに排除されています。
映画のなかにも「年に数回くらい家族で観にいく層が好む映画」もあれば、「映画マニアに好まれやすい作品」もある。
子供の頃はよくわからないというか、なんであんなどうしようもないヤツがモテるんだ?と思ったのに、今みると、その魅力がわかるような気がする。
僕は『美味しんぼ』で、故郷のごはんや魚に感動する京極さんをみて、「でも、これ絶対、キャビアとかフォアグラのほうが、僕には美味しいだろうな」と思っていたのです。
ある種の思い入れとか予備知識によって評価は変わるし、その変わり方も人それぞれ。
ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』を観て、「よくここまで映像化したなあ」と感動する原作ファンもいれば、「これはちょっと違うだろ」と言いたくなるファンもいるのと同じように。
テレビゲームでいえば、『デス・クリムゾン』とか、僕は何が面白いのか全くわからないのだけれど、「よくここまでひどいクソゲーを作ったなあ」と持てはやす人もいる。
僕自身も、リアルタイムでクソゲーやダメ映画をつかまされたときには腹が立つのですが、あとから考えてみると、「不味いものの話ほうが盛り上がる」のもまた事実です。
ネットで、「つまらないものを語ると、面白がってくれる人が少なからずいる」のがわかったのも、すごく大きな変化だと思います。
個人的には、純粋に経済合理性とか人生の損切りを考えるのであれば、30分くらい観てつまらないと感じた映画は、観るのをやめてみて良いと思います。
でも、世の中には「つまらないものを語ったり語られたりするのが好き」っていう人が、けっこういるし、僕もその一人です。
もちろん、その「つまらないもの語り」が罵倒や怒りの言葉だけになってしまっては、誰も読んでくれないのだけれど。
あえて「ちょっとお金や時間を損するくらいの地雷」を踏みに行くっていうのも、それはそれで、贅沢な時間やお金の使い方だし、空いている映画館+つまらない映画ほど、物思いにひたるのに向いた空間はあまりないし。
最後に、僕がこれまで踏んできた「15分で出ようかと思った映画の感想」をご紹介しておきます。
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『ムーンライト』あたりは、正確に言うと、「15分で出ようと思った」というよりは、「いつになったら面白くなるのだろう?アカデミー賞だし……とひたすら我慢していたら、いつのまにかエンドロールが流れていた」という感じなんですけどね。
こうして並べてみると、僕がつまらないと感じるものの多くは原作ものや歴史上の人物が出てくるもので、「原作は面白いのに!」「この人が、こんなことするわけないだろ!」という憤りが、映画への評価をいっそう下げているようです。
そんななかで、オリジナル脚本で大健闘(?)した『R100』と『ギャラクシー街道』は、本当にすごい。まあ、これも松本人志、三谷幸喜両監督への期待の裏返し、ではあったのかもしれません。
しかし、あらためて考えてみると、こうして、つまらなさを熱く語れる映画というのは、可もなく不可もなくのハリウッドのアクション映画よりも、「面白い」とも言えるような気がします。
それでも、他人におすすめはしがたいけれど。
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