いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

この15年間で、僕が「シアター内ひとりぼっち」になった映画について


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 「ひとり映画」か……シアターの扉を開けて、予告編やCMが流れているなか、自分の席に向かいつつ場内を見渡すと、誰も座っていなかったときのなんともいえないワクワク感と居心地の悪さって、ありますよね。
 自分のためだけに、映画が1本上映されるのか……という感慨と不安。もし、観客ゼロだった場合も、やっぱり映画は上映されるのだろうか……知っている人がいたら、教えてほしい。
 そもそも、こんなにお客さんが少ないというのは、やっぱりつまらないのか?

 まあ、大概はよく見てみると、ひとりやふたりはどこかに座っていることが多いのですけど。


 ……えっ? 「シアター内ひとりぼっち」の話じゃないの?
 「ひとりで映画を観に行く」=「ひとり映画」なの?
 たしかに、「ひとり焼肉」と同じ基準で考えれば、そうなるのかな。
 僕にとって、「観たい映画はひとりで観に行く」というのはあまりにも当たり前のことで、もうすでにハードルを感じなくなっていたのです。
 というか、一昔前の映画館ならさておき、最近のシネコンって、チケットもネットや入口のタッチパネルで買えるし(僕は、隣に人が座られるとなんとなく居心地が悪いので、上映時間近くになってからタッチパネルの座席指定で買うようにしています)、ちょっとした隙間時間にふらっとひとりで映画を観にきている人って、本当に多いんですよね。
 もちろん、作品にもよりますが、今はアニメでも恋愛ものでも、「オッサンおひとりさま」でも、悪目立ちすることはほとんどありません。僕の場合は「恋愛もの」はほとんど観ないのですが。
 最近は、DVD借りて帰って家で観てまた返しに来るよりは、映画館で観て済ませてしまったほうがめんどくさくなくていいや、という感じにすらなっています。
 飲み物を買うときに売店で注文するときと、入口でチケットを渡すときくらいしか、人と接することなく、映画を1本観て帰ってくることができるんですよ。
 吉野家で牛丼食べて帰ってくるほうが、よっぽどコミュニケーションポイントを消費します。
 高齢者も多いし、いまのシネコンは「人恋しいプチコミュ障の楽園」とも言えるのではないかと。


 僕は冒頭のエントリのタイトルをみて、「ああ、シアター内ひとりぼっちで観るやつだな」と思い込んでしまったのです。
 それは勘違いだったのですが、そういえば、最近久々に「シアター内ひとりぼっち」があったなあ、と思い出したんですよ。
 『泣き虫しょったんの奇跡』という映画なのですが、観た感想としては「これが『観客ひとり』なのはもったいない!」だったのです。
 「シアター内ひとりぼっち映画」というと、イメージとしては、「不入りのつまらない作品、あるいは、話題性に欠ける作品」になりますよね、やっぱり。
 そこで、僕は、これまで足掛け15年、約400作の映画館で観た記録から、「シアター内ひとりぼっち映画」がどのくらいあったのか、そしてそれは、どんな作品だったのかを確認しました。
 

(念のために書いておきますが、このデータは、あくまでも僕ひとりの個人的な体験にもとづくものであり、統計学的には全く意味がありません。そもそも、公開週に観たものもあれば、公開終了間際に観たものもありますし、その映画のジャンルと観た時間帯によって、混み具合も変わってきます。与太話としておつきあいいただければ幸いです)


これが、僕がこれまで観てきた、「劇場内ひとりぼっち映画」とその感想です。
 

fujipon.hatenadiary.com
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僕は基本的に、ミニシアター系とか、東京で限定公開されるような映画には無縁で、地方都市のシネコンでも観られる程度のメジャーな作品ばかり観ています。
映画好きからすれば「ミーハー」のそしりを免れないと思いますが、御容赦ください。

こうして6作品を眺めてみると、「おひとりさま」になる作品というのは、
(1)わざわざ映画にしなくても良いんじゃない?というスケール感
(2)スーパースターが出演していない
(3)そもそも、日本ではあまり知られていない(チェ・ゲバラって、そんなに「刺さらない」のでしょうか……僕はこの映画、けっこう面白かったのだけれど)
(4)大きな映画賞などは受賞していない(アカデミー部門賞をとっていても観客3人、なんて映画もけっこうあったのですが、「ひとりぼっち」にはなりにくいみたいです)。
(5)これじゃない、という残念感(「クローン・ウォーズ」って、観たらけっこう面白いんですけどね)
(6)テーマが万人向けではない


という感じでしょうか。
「シアター内おひとりさま」だからといって、けっして「つまらない映画」というわけじゃないことは申しあげておきたい。
というか、どれも「僕しか観ないほど、ひどい映画じゃないのに……」というものばかりです。
まあ、ゼロかイチかニか、なんていうのは、ある種の「運」でしかなくて、それこそ「ゼロ」であれば、それを記録する者すらいないわけですし。


僕はずっと自分の映画の感想に観た時間帯と観客数を記録しているのです。
それは、江戸時代に東海道を旅行した人で、途中の宿場間の歩数とか饅頭の値段とかを詳細に記録していた「記録マニア」がいて、その記録が歴史を研究する人たちには、ものすごく役に立っている、というのを聞いたからなんですよ。
作品に対する個人の感想は滅びても、観客数などの数字は「当時を知るための数多のデータのうちのひとつ」として生き残るのではないか、と思うのです。


大まかに見返してみると、やっぱり、洋画も邦画も、原作が有名だったり、大スターが出演していると、作品の世間での評価にかかわらず、それなりにお客さんは入るものなのだな、という印象です。
だから、制作側もスターをキャスティングするのでしょうね。


歴史ものとか政治もの、無名な役者たちの青春ものよりも、わかりやすすぎるくらいのアクション映画のほうが、コンスタントに観客を集めている感じです。
「感動のヒューマンドラマ」とかだと、「シアター内ひとりぼっち」はあまりなくても、観客数3人、5人なんていうのがけっこうあるのに比べて、「こんな映画観たっけ?」と思い出せないようなアクション映画が、けっこう賑わっているんですよね。


あと、これも統計学的には意味がないのですが、「シアター内ひとりぼっち」の作品の観賞年は、2006年、2008年、2009年×2、2012年、2018年です。
 2010年以降は2作しかなく、これは、ショッピングモール内などの「買い物のついでに」観ることができるシネコンが普及しきった時期とシンクロしているように思われます。
「ひとりで映画を観に行く人」も、この時期くらいから、以前よりさらに増えた気がするんですよね。
そのおかげで、「ちょっとマイナーな作品でも、誰かがシアター内にいる」ことが多くなったのではないかと。
人と一緒に行くときには、ある程度「お互いに楽しめそうな作品」にするじゃないですか。
ツリー・オブ・ライフ』で語り合えるカップルだって、世の中にはいるのかもしれないけれど。


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「シアター内ひとりぼっち」は、貸切にでもしないかぎり、自分の力だけでは実現は難しいのですが、「ひとりで映画を観に行く」って、けっこう良いものですよ。なんか自由だな、って思います。
「ひとりで観に行く」ことによって、みんなで観に行ったときの楽しさも再認識できますし。


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