いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

村上春樹さんがラジオで語った「ライバルに圧倒的な差をつける恋文のコツ」

 2か月に一度、TOKYO FM系列で、村上春樹さんがDJのラジオ番組が放送されているのです。
 ちょうど1年前、2019年2月の回の放送を聴きなおしていたら、こんな質問に村上さんが答えていました。


リスナーからの質問:旅先である女性と運命的な出会いがありました。それで、手紙で文通することになったのですが、春樹さんがラブレターを書くうえで、もっとも大切にされていたことは何でしょうか?


これに対して、村上さんは、こんなふうに答えておられました(録音を聴きながら大まかにまとめているので、細かいニュアンスは異なるかもしれません)。

村上春樹郵便で出す手紙を出したい、ということですが、いいですねえ。いまどき、あんまりいないですよ。僕の若い頃は、インターネットとかもちろんなかったから、手紙しかなかったんですよ。結婚してうちの奥さんに「なんで僕と結婚したの?」って訊いたら、(奥様が)付き合っていた人のなかで、やっぱり、一番手紙がうまかったから、って。で、うちの奥さんは、女ばっかり3人姉妹なんだけど、手紙が来ると、3人姉妹で朗読して、評価する、点をつけるわけ。そのなかで、僕がいちばん、圧倒的に強かった。それで、「ぜったい村上君がいい!」っていうことになって、結婚しました。だからね、手紙って大事なんですよ。
 ラブレターの書きかたですね。これはね、やっぱりコツがあるんです。もちろん文章が上手いほうがいいんだけど、下手でも、下手なりに書きかたがありまして、僕の場合は、日常生活で面白いことと楽しいことってあるじゃないですか。そういうのを集めておいて、手紙に書くんです。で、自分の思いを、好きだとか何とか書いちゃうと、受け取って読むほうがしんどいんですよけっこう。だから、そういうことは控え目にして、面白いこと楽しいことを手紙に書いて出して、ちょこっと「好きだよ」とかそういうのを書くわけ。それがね、コツなの。面白いこと、楽しいことをコレクションするということが、まず大事になるわけ。


 1年前くらいに聴いたときには、なんとなく聴き流してしまったのですが、これは、ラブレターに限らず、「他人に読んでもらうための文章」を書くときに使えるテクニックだよなあ、と感心してしまいました。もちろん、ブログを書くときにも「使える」と思います。

 僕自身、何かを伝えたいときって、前のめりになって、「とにかくこれが言いたい!」ということばかり強くアピールしがちになるのです。
 でも、そういうのって、読む側からすれば、「重い」「しんどい」んですよねやっぱり。僕もいろんな文章を読んでいて、「これ、良いことが書いてあると思うんだけど、なんだか読むのキツいなあ」とか「文章はうまいけど、なんとなく、このブログを再訪する気になれないなあ」ってことが、けっこうあるのです。
 僕が書いたものも、そういうふうに感じさせているような気がします(文章の巧拙はさておき)。

 よく言われることだけれど、基本的に、人は「面白いもの」か「役に立つもの」しか読まないんですよね。
 だから、本当に伝えたいことだからこそ、「面白い話のついでのように、ちょこっと書く」ことを意識すると良いのかもしれませんね。


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