いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

和田誠さんの「夫婦の危機を避ける秘訣」


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 和田さん、亡くなられていたのか……
 星新一さんや村上春樹さん、三谷幸喜さんのエッセイのイラストだけでなく、和田さん自身の映画に関するエッセイもすごく魅力的でした。
 亡くなられたのは悲しいけれど、冒頭の記事を読むと、最期まで妻の平野レミさんと幸せな時間を過ごされていて、素晴らしい人生だったのではないか、と羨ましくもなりました。


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 この三谷幸喜さんのエッセイ本の巻末に、「大竹しのぶ×三谷幸喜+和田誠<特別対談>三谷幸喜は結婚に向かない?」が収められていたのですが、そのなかでの和田さんの言葉が、僕はすごく印象に残っているのです。

三谷幸喜和田さんは、今まで、本当に、まったく、夫婦の危機はなかったんですか?


和田誠ケンカはしますよ。でも、危機まではいたらないですね。今のところは


三谷:ケンカのあとは、「ごめんね」って謝り合うんですか?


和田:いや、お互いにそんなことは言わない。ケンカしても次の朝は普通になってる。


三谷:ああ、そういうの、憧れるなあ。


大竹しのぶ三谷さん、レミさんみたいな人と合うかもしれないですね。あ、でも、ご飯を作ってくれて、三谷さんがすごく仕事がしたいときでも、「ご飯食べて食べてーーーっ!」(レミさんの口調をまねて)って言われちゃうね。


和田:そうそう、それは大変ですよ。


三谷:そういうとき、和田さんはどうされてるんですか?


和田:そう言われたら、オレ、すぐ食うから!(一同爆笑)


大竹:三谷さんも「ご飯よ!」って言われたことあるでしょう。


三谷:えぇ。ただねえ、僕は家で仕事をしてますから。ご飯できたわよ、お茶いれたわよ、コーヒーいれたわよって、せっかく言ってもらっても、ちょうど書いていて、今、調子が出てきたみたいなときもあるわけですよ……。僕がいけなかったのは、「仕事してるから、今はいいや」と言ったまま忘れちゃって、二時間後ぐらいにリビングに行くと、ご飯やコーヒーがすっかり冷めていて、激しく落ち込むっていうパターン。もちろん僕がいけないんですが。


和田:お茶だって、オレは出されたらすぐ飲むからね。


三谷:(苦笑)


 この和田さんの「すぐ食う」「すぐ飲む」というのは、シンプルだけど、先輩の素晴らしい知見だなあ、と思います。
 三谷さんは前妻と離婚された時期なので、和田さんの話に、いろいろ考えるところもあったのではなかろうか。
 僕もけっこう何かをやっている最中に「ご飯よ」なんて声をかけられると「あとで」って言ってしまいがちなのですが、それは、相手にとってはストレスの元になるはず。
 逆の立場だったら、僕も「せっかく準備したのに」って感じるから。

 いやほんと、鼎談のなかでは「大爆笑」されていますが、笑い話じゃないというか、こういうのが「夫婦生活を長続きさせる秘訣」ではないでしょうか。
 
 学生時代から、僕が好きな作家の本は、和田さんがイラストを描いているものが多かったのです。
 作家の顔写真よりも、和田さんのイラストのほうが、「本人」らしい感じすらします。

 和田さんのイラストや文章は、これからも多くの本の表紙を飾り、読み続けられるはずです。
 長い間、ありがとうございました。


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