いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「はてなブックマーク」廃止論


anond.hatelabo.jp


 僕もネットでの「いじめ」「いじり」にまったく無縁ではないし、お前は偽善者だと言われれば、そうですね、としか言いようがない。
 僕自身は、とりあえず、自分の身に降りかかった火の粉は払おうとしてきたし、できれば、あまりうまく生きられない人に、ネットを通じて1ミリでも役に立てれば、と思っていた。そしてその一方で、自分が楽しいと思うことを発信して、誰かに「俺もそれ好き!」って言ってほしかった。

 
 hagexさんの事件について、『はてな』の責任を問う声もあがっていて、『はてな』への認証のしかたを変えた方が良いのではないか、というのも読みました。


 僕がいま考えているのは、『はてなブックマーク』という機能をもう止めても良いのではないか、ということなのです。
 僕自身も利用しているサービスだし、ブックマーク機能の恩恵も長年受けてきています。
 はてなブックマークは、バッシングの場になることがある一方で、間違った(あるいは、極端な)主張に対する反論が行われることも多い場所でした。
 僕も、ブックマーカーたちのおかげで、噓に騙されたり、噓を拡散したりするのを未然に防げたことが何度もあります。
 それには、とても感謝しています。
 たしかに、「はてなブックマーク」は、ネットの「集合知」のひとつの形だったのです。

fujipon.hatenablog.com
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 今回の事件のあと、僕は考え始めてしまったのです。
はてなブックマーク」って、TwitterFacebookでそれぞれの人が自分のアカウントで「面白いもの」を拡散できる時代に、本当に必要なのだろうか?


 プラス面だけを考えれば、「あったほうがいいサービス」なんですよね。
 ブログをやっている側からすれば、ブックマークしてもらえることによる拡散効果は大きいし、ブックマークされることがきっかけで、読者が増えるブログもあるでしょう。
 とくに最近は、ブログが読んでくれる人を新規開拓する方法が、いわゆる「炎上商法」以外にほとんど思いつかないくらいになってしまっているので、「はてなブックマーク」の導線としての魅力には、捨てがたいものはありそうです。


 『はてなブックマーク』っていうのは、あまりに思い入れが強い人が増え過ぎたことによって、「ブックマークに関する争い」を生み出してもきたのです。
 相互ブックマークによるスパム行為であるとか、スパムではなくても、特定の集団による馴れ合い、それとは逆の、罵り合い。誹謗中傷コメントに、それぞれの人は「談合しているわけではない」はずなのに、有名ウォッチャーが口火を切ったら、批判や悪口コメントが押し寄せてくる「ネットリンチ」。
 「はてなブックマーク」というシステムって、ブログを運営している人にとっては、PV(ページビュー)をもたらしてくれる金の卵を生む鶏でもあるので、争いの元になりやすい。
 そして、あるエントリへの反応の「一覧性」があるために、ネガティブなコメントで埋め尽くされると、そのエントリの発信者へのダメージは大きくなります。
 直接のダメージと、「これを多くの人が見ているのか……」と想像することによるダメージと。
 一度批判コメントで埋め尽くされると、そこにまた「誰かを叩いて快哉を叫びたいだけの人」も加わってきます。


 このサービスは、ほぼ匿名で、きわめて低いリスクで、他者を強い言葉で責められる、という特性を持っています。ブックマークコメントというのは、ネットリンチのためにつくられたものではなくて、メモ代わりにつかったり、何か一言申し添えておきたい、というときのための機能だったと思うのですが、悪口を言い捨てるのに大変便利だったのです。
 ノーベルがダイナマイトを作ったのも、扱いやすい火薬で工事を安全かつスムースに進めるためだった、と言われています。
 ところが、ダイナマイトは、戦争に使われ、ノーベルは大金持ちになりました。


 僕はこれまで生きてきて痛感しているのは、人の心を変えるのは、とても難しい、ということなんですよ。ネットリンチとか、もうやめましょうよ、といくら言っても、「いや、別にみんなで相談しているわけじゃないし、何を書くのも自由だろう。噓や脅迫でもないし」という答えが返ってきます。
 ならば、そういう「本人たちも望んでいないのに、ひとりの人間を大勢が過剰に責め立てるような結果を生み出す元凶である、『はてなブックマーク』そのものを廃止する」という、「システム面での対応」を検討してみても良いのではなかろうか。

 このサービスに魂を囚われている人の多さを考えると、『はてなブックマーク』を廃止することは、「ネットいじめ」「ネットいじり」を減らすためには、かなり効果があると思うんですよ。
 あるいは、ブックマークコメントという機能を失くすか(自分で確認するためのメモはできるけれど、他者は見ることはできなくするとか。
 もちろん、社会に悪影響を与える可能性があったり、反論したくなるコンテンツってあると思うんですよ。
 でも、それに対しては、SNSや自分のブログで批判すればいい。
 はてなブックマークのように簡便に「批判」「反論」できるツールは素晴らしい仕組みのはずなのです。でも、その「敷居の低さ」を良いほうに活かせない人が多すぎる。


 これによって、『はてな』から生じる「ネットいじめ」は、劇的に減ると思います。
 このブログも含め、PVへの負の影響はかなり大きくなるでしょうけど、それはもう、仕方がない。
 いまの『はてなブックマーク』には、「面白いもの」を発掘する力はほとんど失われていて、「ネットでの激戦地へ『落ち武者狩り』たちを導く羅針盤」になってしまっているのです。
 望んでもいないのに、加害者になっているかもしれない人にとっても、けっして悪い話ではないはず。


 思いつきでこんなこと書きやがって!
 そう怒っている人もいるかもしれないけれど、はてなユーザーは、『はてなブックマーク』をうまく使えていないというか、かえって「強い言葉で人を傷つけることに鈍感になってしまっている」ように感じていたんですよね。それは、けっこう前から。
 少なくとも、今のような利用のされかただと、集合知としてのメリットよりも、トラブルの温床としてのデメリットのほうが大きいのではなかろうか。
 実際、新しい人って、あんまり入ってきていないじゃないですか、『はてなブックマーク』には。


 本当は、「それでも、はてなブックマークは必要なのだ」と、誰かに僕を納得させてほしいのです。
 個人的には、思い入れがすごくあるし、お世話になってきたサービスだから。
 でも、もう、潮時かもしれない。
 

ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち (光文社新書)

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