kyoto-kokuhou2017.jp
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日帰りで行ってきました京都まで。
仕事を短時間で済ませて(というか、いちおう顔だけ出して、に近い)、なんとか京都国立博物館に到着したのは、もう16時半を過ぎていて、閉館時間まで、あと1時間半しかありませんでした。
うーむ、時間ないなあ、と思いつつ、これはこれで、かえって空いていて良いのではないか、とも考えていたんですよ。
美術展って、休日は終日混雑していることが多いのですが、平日の場合、だいたい午前中、早めの時間に人が押し寄せてくることが多いのです。休みをとって観に来る人とか、団体さんは、あんまり夕方の遅い時間には来ませんよね。せっかくだから、時間をかけてじっくり見ようと思うだろうし。
僕もそうやって2時間待ちとかで入場してみると、観終えて出てきた閉館2時間前には、まったく行列なし、というようなことが何度かありました。
平日に仕事をしているとなかなか実感することが難しいのですが、映画館なども、「平日の朝からとか、誰が観にくるんだ?」とか思いがちだけれど、高齢者にとっては、むしろ、そういう時間のほうが都合がよくて、レイトショーよりずっと混みあっていることが多々あるのです。
最近、さまざまな美術展などで、金曜・土曜は閉館時間を20時くらいまで延長してくれているのですが、週末の夜だからお客さん多いだろうな、と思いきや、意外とそうでもないことが多いんですよね。
前置きが長くなりましたが、この『国宝展』、まさに日本の美術(中国の絵画やポルトガルからの外交文書、なんていうのもありましたが)の紅白歌合戦というか、教科書で見たことがある美術品がずらっと並んでいる、という豪華、かつ、わかりやすい展覧会です。
ただし、約2か月の期間を4期に分けて、通期で展示しているもののほかに、期間限定の国宝もけっこうあるのです。
僕が行った11月9日を含む、11月12日までは「3期」なのですが、なぜこの時期にしたかというと、仕事とタイミングがあった、というのと、ずっと見たいと思っていた、長谷川等伯の『松林図屏風』がこの3期に展示されているからなのです。
等伯の『松林図屏風』は、東京国立博物館の所蔵なのですが、僕は一度この絵を観ようと東京国立博物館に行ったところ、どこにもなくて「あれ?」と思って、あわてて現地で調べたことがあるんですよね。
たしかに、東京国立博物館にあるのだけれど、一般公開されているのは、一年のうちの限られた期間なのだそうです。
京都だったら、なんとか日帰りで行けるし、というか、飛行機が苦手な僕には、東京は日帰りだとちょっときつい。
僕は直木賞を受賞した『等伯』を読んで以来、この作品がずっと気になっていたのですが、はじめて実物をみて、このなんというか、霧に包まれた松林のそこにあるのだかないのだかわからないような佇まいに圧倒されました。
松林を墨の濃淡だけで描いてある、余白の多い絵のですが、その筆の跡をみると、幽玄って、こういうものなのかな、と。
江戸の仇を京都で討ったような感じになりましたが、とりあえずこれを死ぬ前に見ることができてよかった。
あと、『伝源頼朝像』という有名な肖像画があるのですが、この絵を見るたびに、『源平討魔伝』を思い出します。
あの頼朝が持っているやつで、ベシッと叩かれるんじゃないかと、気が気じゃありません。
1、2期の『風神雷神図屏風』(俵屋宗達)も一度見てみたかったんだけどなあ。
南宋の高宗の字をみて、「ああ、上手い字って、崩し字みたいなのをイメージしがちだけれど、こういう丁寧に書かれた読みやすい字っていうのは、それだけで好感度アップだなあ」とも思ったのです。
僕のカルテの字とか、めんどくさい、という感情がダダ洩れだよ……
あと、今期の展示の目玉が『金印』だったんですよ。
「漢委奴国王」って刻んである金の印象。
近づいてみるためには、30分くらい並ばなければなりません。
実は、今回、会場内たちの会話を聞くともなく聞いていると、「金印って、小さいよね~」と何人もの人が友だち相手に話していたのです。
金印というのは一辺が2.3㎝、重さが100gあまりと「最も小さな国宝」なのだとか。
並んだ末にようやく接近してみてみると、金印は伏せた状態で展示してありました。
「ち、小さい……伏せてある状態だと、大きさも形も『金色の紙で包装されたチロルチョコみたいだ……」
下に鏡が置いてあって、周囲の一角からは、鏡にうつった「漢委奴国王」の刻印を見ることができます。
あらためて考えてみると、この『金印』って、「福岡市博物館」所蔵なわけですよ。僕のホームじゃないですか!
美術館や博物館にけっこう行っていると、この「特別展の目玉展示物が、実は近くの美術館でふだんから展示されている問題」に遭遇することがあります。
せっかくフィレンツェまで行って観たのに!なんてこともありますけど。
こうやって、オールスターに選ばれてみて、あらためて知る、地元チームの選手の価値。
この『国宝展』の最大の難点は、人の多さであることは間違いありません。
「教科書で見たことがある国宝が一同に会している」というのは、わかりやすいだけに、集客力もすごいみたいです。
平日の夕方でも、人ごみが苦手な僕にはつらいレベルだったので、休日などは、とんでもない混雑だと思われます。
あんまり人が多いと、幽玄とか等伯の筆跡どころじゃないよね……
これだけの国宝を一度に見られる機会はなかなかないのですが、個別に見ようと思えば、こんな大渋滞に巻き込まれずに済むわけだよなあ。
森見登美彦さんの描く京都は好きだけど、実際の京都は、とにかくどこも人人人、数時間居ただけでも、けっこう疲れました。
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