僕は日頃あまりサッカーを観ないのですが、先日行なわれた2015年のJリーグチャンピオンシップのサンフレッチェ広島 vs ガンバ大阪の試合は、2戦ともリアルタイムでテレビ観戦しました。
子どもの頃、何年か住んでいたこともあり、「広島」に愛着があるというのと、浦和レッズとかのJリーグのビッグクラブに毎年容赦なく活躍した選手を取り上げられながらも、強いチームを作り続けている広島にがんばってほしい、という判官贔屓もあって。
そもそも、昔の野球の日本シリーズみたいに、両リーグの1位同士とか、Jリーグでも前期と後期それぞれのチャンピオンが対決するような「チャンピオンシップ」ならともかく、たった何試合かで長いシーズンの結果が否定されてしまうような「ポストシーズン」って、おかしいと思うんですよね。それはみんながそう感じていることなのだろうけれど、贔屓のチームが出てくれば「下克上」を期待して見てしまうのもまた人情で、興行的には「オイシイ」ということなのでしょう。
まあでも、「シーズン優勝チームが、チャンピオンシップも制する」というのが、いちばん納得できる「落としどころ」ではあります。
僕はカープファンなので体験したことはないのですが、シーズン3位で、CS、日本シリーズを制した年のロッテファンは、あの年「日本一になった」と認識しているのだろうか?
さて、このJリーグチャンピオンシップの話。
本当は、ちょっとだけ覗いて『FNS歌謡祭』を見るつもりだったのですが、この試合には、なんだかすごく引き込まれてしまったんですよね。
前半は0−0の膠着した試合だったのですが、後半、ガンバ大阪のこのゴールで試合が動きます。
僕はこれを観て、テレビの前でひっくり返ってしまいました。
なんだこの怠慢プレーは! 日本一を決める試合で、こんな恥ずかしい失点するなよ……
プレッシャーがかかる試合だからこそ、こういうことが起こるのかもしれませんが。
その後はもう、ノーガードの殴り合いのような試合で、サンフレッチェがようやく追いついたと思ったら、直後にガンバが勝ち越し。このまま試合終了かと思ったところで、ガンバの選手が暴力行為で退場。
終了間際に、1人多くなったサンフレッチェが同点、そして逆転。
結局、初戦のアウェーで3−2と勝ったことで有利になったサンフレッチェが、2戦目も1−1と引き分け、王者となったのでした。
このチャンピオンシップ初戦、大舞台でのプレッシャーもあったのか、けっして内容的には「チャンピオンを決めるのにふさわしい、ハイレベルの攻防」ではなかったと思います。
ガンバの先制点につながった、サンフィレッチェのディフェンス陣の「お見合い」とか、ガンバの選手の「バカバカしいレッドカード」とか。
前者は完全に「油断」「怠慢」でした。
後者は、ギリギリのディフェンスで、失点を防ぐために身体を張ってレッドカードではなく、本当に、ただイライラして相手選手に突っかかっていって、食らってしまったカードだったのです。
にもかかわらず、この試合、僕にとっては、すごく「面白かった」。
サッカーの内容としては、けっして褒められたものではなかったにもかかわらず、テレビの前で盛り上がってしまいました。
まあ、僕が贔屓にしていたサンフレッチェが、劇的な逆転で勝った、というのが大かったのかもしれませんけど。
ガンバのサポーターにとっては「何これ?」って試合だったのかも。
どうも、僕にとってのエンターテインメントの「面白さ」って、「質の高さ」よりも、「あふれ出す情念」みたいなものの影響が大きいみたいです。
総合格闘技でも、いちばん印象に残っているのは、この試合だものなあ。
[PRIDE.21] 6.23 さいたま (8):ドン・フライ vs 高山善廣
この伝説の一戦、ドン・フライvs高山善廣って、ほとんど両者が殴り合っているだけで、ある意味「子供の喧嘩」みたいなものです。
でも、PRIDEの歴史のなかで、この試合を記憶している人は、多いのではなかろうか。
こんな殴り合いができるのも、両者ともに高い身体能力と精神力を持っているから、ではあるんですけどね。
ただ、「技術的にハイレベルの攻防」ではないよなあ、やっぱり。
あのチャンピオンシップ第1戦をみて、結局のところ、心を掴むコンテンツって、「技術の高さ」よりも、「情念の強さ」なのかなあ、と考え込んでしまったのです。
少なくとも、エンターテインメントの世界では。
ネットのコンテンツとかでも、「それ自体で完結している、隙のない内容」よりも、「何か言いたくなる、ツッコミどころがあるもの」のほうが人気になりやすい。
荒れやすい(炎上しやすい)とも言えるのですが。
そういうのって、結果的にそういう「ノーガードの殴り合い」になってしまっただけで、計算してできるものではないのですけどね。
計算してやると、「あざとさ」みたいなものが伝わってくるんですよ、やっぱり。