いつか電池がきれるまで

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「プレミア12」の準決勝、日本対韓国の9回に起こった「悲劇」とは何だったのか?

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「負けたら驚いた!」(丹波哲郎風に)
というか、僕自身は「プレミア12」にあまり興味がなくて、日本の快進撃にも「そりゃまあ、メジャーリーガー出てないし、気合い入ってるのは、アジアの国(日本、台湾、韓国)くらいなんだから、日本代表は強いよね、というか、これが終わったら、いよいよマエケンはポスティングでメジャー行きなんだろうなあ……という「カープファン的な寂しさ」のほうが先に立っていたくらいでした。


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メキシコ代表なんて、こんな状況ですからね……


WBCメジャーリーグ的には「本腰を入れている」とは言いがたい状況ですが、それよりもさらに「本気の国」が少ない「プレミア12」。


今日の韓国戦も、「また韓国相手か、韓国戦って荒れた試合になりやすいから、イヤなんだよなあ、WBCでも「国旗騒動」とかあったし……と思いつつ、ときどき試合経過を追っていた程度でした。
大谷が素晴らしいピッチングで(って、もうみんな忘れちゃったんじゃないかな、あの結果だものね)韓国打線を寄せつけず、打線は4回に3点を先制。日本は7回、8回とノーアウト1塁2塁の大チャンスながら、韓国の執念の継投もあり、追加点を取れず。
まあ、7回までの大谷、8回の則本と素晴らしいピッチングで、「3点あれば大丈夫だろ、イケイケで打たせていいよ」と、実際にリードしている「3点」以上の安心感を持っていたんですよね。
8回裏からテレビ中継を観たのは「日本代表快勝の瞬間」を見届けるためだったのに。


9回表、韓国は先頭打者がヒット。
まあ、韓国も、さすがにこのまま無抵抗でやられたら、帰国したあと大変だものね、見せ場くらいはつくらなきゃ。
次の打者もヒットで、ノーアウト1塁2塁。
うーむ、1点くらい取られてもいいけどさ、このくらいにしておかないと、ちょっとマズいよ。ホームラン打たれたら同点だし。
結果的には、則本を替えるなら、ここだったのではないかと思いますが、8回の則本のピッチングをみて安心したのか、リリーフは、まだ準備不足のよう。
ここで、レフトにタイムリーツーベースを打たれ、1−3の2点差、しかもノーアウト2塁3塁。
そして、2番李容圭には、謎のデッドボール。
なんかこの回の審判の判定は異様で、際どい球はほとんどボールと判定されていたのですが、このデッドボール、スローを観ても、左肘に当たっているようには見えないんですよね。
なんだか、審判のジャッジまで韓国の流れに飲み込まれてしまったようでした。
でもあれ、本当にデッドボールだったの?


2点差、ノーアウト満塁で、小久保監督が選択したリリーフは、楽天の松井。
シーズンでは抑えとして大活躍していたものの、この大会に入ってからは、調子がいまひとつでした。
ここで松井?
小久保監督としては、「不調だからこそ、この場面を乗り越えて、成長してほしい」というような「親心的なもの」があったのではなかろうか。気持ちはわからなくもない。
左対左、というのもあるし。
でも、結果は際どいところを審判が全くとってくれずの押し出し四球。
1点差で、なおもノーアウト満塁、ピッチャーは増井に交代。


増井は、4番李大浩に2点タイムリーを打たれ、3−4と逆転を許したものの、秋山も好守もあって、なんとか1点差でもちこたえて、9回裏の反撃を待ったのですが……


2アウトからヒットを売った中田翔はすごかった。
ここで代打中村剛には、ちょっと驚いた。
だって、中村剛は怪我をしているって聞いていたし、日本代表の打順は「お祭り男」松田だよ?
打順が非力なバッターだったり、全く当たっていないバッターであれば、一発狙って中村剛も、アリだと思う。
でも、松田はこの大会で満塁ホームランも打っているし、チャンスに強く、長打力もある。
怪我もしていないし、試合の最初から出ているから、ボールに目が慣れてもいるはず。
この代打は、状況を考えずに「一発逆転」を狙っているだけにしか、僕には思えなかった。
今大会不調だった松井にこだわっての継投、怪我をしている中村剛の「逆転ホームラン」に賭けての代打。


小久保監督は、あまりに今大会、いろんなことがうまくいっていたために、「ドラマチック」に酔ってしまっていたのではなかろうか。
綺麗に、カッコ良く勝とうとしすぎたのではなかろうか。
逆にいえば、韓国の選手たちは、あの9回の表、絶体絶命の場面で、彼らのほうがプレッシャーがかかる状況だったにもかかわらず、「つなぎ」に徹していた。


だから小久保監督が悪い、無能だ、というつもりもない。
僕だって、この大会の準決勝の8回までのあまりの日本代表の強さ、ピッチャーの質の高さに「勝って当然」くらいの気分になっていたのだから。
相対的な「強さ」でいえば、これまでの国際大会のなかで「最強」だったはず。
ほんと、この流れで9回の表に逆転されるのって、われらが広島カープくらいのものかと思っていたのに。
しかも、ホームにもかかわらず、韓国寄りの怪しいデッドボール判定まで……
正直、「誰々が悪い」というより、「悪夢」のような試合だった。
キングボンビーに取り憑かれたのではないかと思ったくらいだ。


ただ、もう少し丁寧に追加点を取りにいったり、終盤、早めの継投をしていれば、なんとかなったのではないか、とも考えずにはいられない。


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緒方監督の起用は、選手を「見切る」タイミングが遅れることによって、ピンチを拡げ、リリーフも投げにくくしていたのです。


この「緒方采配」と同じ失敗を、この大事な場面で、小久保監督はやってしまったのです。
監督どころかコーチ経験もない小久保監督に、そこまで求めるのは酷なのかもしれないけれど。
そして、今日の試合は、あまりに大谷のピッチングが圧巻で、点差以上に「楽勝感」が蔓延してしまったことと、9回の審判の「謎ジャッジ」などの「不運の連鎖」もあったのですが……
則本に、松井裕樹にこだわらなくても、他にピッチャーはたくさんいたのに。
あれ、また打たれちゃった、と呆気にとられ、動けないでいるうちに、大ピンチとなり、逆転されてしまった。


往生際が悪いくらい、7回、8回のピンチにピッチャーを替えて追加点を防ごうとし、当たってなさそうなデッドボールのアピールまでして塁に出ようとした韓国の勝つことへの執念や貪欲さと、結局それに屈してしまった日本代表の不甲斐なさ。
そして、ちょっとした隙が、流れをガラリと変えてしまう怖さ。


「まだこの時期になってもなんか野球やってるのかよ」と、あまり興味が持てなかった「プレミア12」に、こうして日本のあまりにももどかしい大逆転負けで終わったことによって、はじめて目が向いたのは、皮肉なことではありますね。
しかし、この結果になってみるとなんとでも言えるけど、7回、8回のチャンスの場面で「バントできる選手を出して、バントさせる采配」ができる人、そういう「容赦ない人」って、なかなかいないよね。
それで勝っても「つまらない野球」とか言われたりもするわけだし。


本当に、勝負事っていうのは、難しい。


プロゲーマー・梅原大吾さんが、著書『1日ひとつだけ、強くなる。』のなかで、こんな話をされています。

 勝負で一番強いのは「相撃ちでもいい」という状況だ。人数で勝っていれば、相撃ちを繰り返すことでそのまま勝つことができる。僕も、自分がリードしているときは固く、相撃ちで進めることを考える。


 リードされて自分の兵士が30人しかいないというのは、それが絶対に許されない状況だ。一方、相手にはそれができる。これは大きく不利で、負けて当然だと言ってもいい。相手にはまだ100人の兵士がいるのに、こちらは30人になっている。この不利は、客観的に考えてどうにかなるような差ではない。


 それほどの不利を背負うと、人はどうなるか。多くのプレイヤーが自分の兵士が30人になると、感情的に全軍突撃を仕掛けてしまう。バクチでも、負けが込んでくるとヤケになって大枚を賭けてしまう人がいる。あれと同じだ。


「どうせこのまま普通に戦っても、滅亡は必至。ならば城を枕に討ち死にしよう」といった感じなのだろう。気持ちはわかる。しかし、本気で勝つ気持ちが遺っているならやめたほうがいい。言葉は悪いが、ほぼ犬死にになる。


 そうは言っても、それで勝つことがないわけではないのが曲者だ。成功する確率は非常に低いけど、ごくまれに勝ってしまう。だからだろう「ゼロでないなら、やらないよりマシ」という感覚になってしまう。


「でも態勢を整えたって結局は負けてしまうことが多いんでしょ? だったらやっぱり突撃のほうがいい」と思う人もいるだろう。そういう人はどちらのやり方が逆転の可能性が高いかを、実際に経験することで実感してほしい。態勢を整えてから戦うほうが、はるかに逆転する率は高いはずだ。


 僕はあの「代打・中村剛」をみて、「ああ、これが『突撃』なんだな、小久保さんは、有能なリーダーなんだけど、こういう土壇場のところで、頭に血が上ってしまう人なんだな……」と思ったのです。
 もちろん、それが「普通の人間」なんだけどさ。



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