いつか電池がきれるまで

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『モンスターハンター』が、こんなに売れるとは!

2014年10月11日は『モンスターハンター4G』の発売日。
僕自身は、『モンスターハンター』シリーズにはほとんど触ったことがないんですよね。
つまらなかった、というよりは、何度か購入してはみたものの、ハマるまで遊ぶほどの時間がなく、周りに一緒にプレーしてくれる人もおらず。
何年前か、病院の研修医たちが、仕事を終えたあと集まって、みんなで『モンハン』をやっている、というのを聞いて、なんか羨ましいな、などと思っていたものです。
昔はそういうときって、飲み会とかカラオケに行ってたんですよね、で、今はモンハン。
僕も飲み会時代より、モンハン時代に若手だったほうが良かったな、とか思ってみたり。


ところで、僕は世代的にも趣味的にも「テレビゲームの歴史」をほぼ全部眺めてきたのですが、『モンスターハンター』というゲームって、ゲームの流れにおいては、けっこう異質な存在なんですよね。当時の「流れ」に逆行していたというか。
『モンハン』以後、には、同じようなゲームがけっこう出ていますけど。


ファミコン時代にも「二人対戦ゲーム」はあったし、「二人協力プレー」もありました。
マリオブラザーズ』(「スーパー」じゃないほう)なんていう金字塔も、ファミコン初期からありましたし。
そこから、「みんなで(3人以上で)遊べるゲーム」っていうのも、少なからず出てはいるんですよね。
ファミコンの『桃太郎電鉄』(いちばん最初の『桃鉄』には、キングボンビーが出てきません)、『いただきストリート』などでは、プレイヤーがコントローラーをそれぞれ次の順番の人に渡していく、という方法で、多人数プレイを実現していました。
もちろん、この形式では、ボードゲームのようなアクション性の無いものしか、みんなで遊ぶことはできません。


で、PCエンジンの時代になって、マルチタップという、たくさんのコントローラーを同時につなげる機器が発売され、僕の周囲でも「多人数プレイのブーム」が起こりました。
当時のPCエンジンでは、『スーパー桃太郎電鉄』『ボンバーマン』『ダンジョンエクスプローラー』などの多人数プレイゲーム文化が花開いたのです。
アーケードゲームでも、『ガントレット』『カルテット』など、同時多人数プレイのゲームが流行りました。


その後、ゲーム機が性能的に進化し、ゲームの内容が複雑になっていくのですが、多人数プレイのゲーム文化は、しばらく停滞していました。
「お正月にみんなで集まって遊ぶ」というようなタイプのゲームは、あまり複雑なシステムだと敬遠されてしまいます。
ボンバーマン』『桃鉄』『いただきストリート』あたりの定番はシリーズを重ねていましたが、少子化の影響か、携帯ゲーム機で「ひとり一台」の時代になったせいなのか。
ポケモン』のように「各自がゲットしたものを交換する」という文化はあったものの、同時にひとつのゲームをプレイするというのは、むしろ、衰退傾向にあったのです。


その一方で、広大な架空世界のなかで、知らない人とパーティを組んで冒険をするという、オンラインゲームが、流行の兆しをみせていました。
僕も『ファイナルファンタジー11』のプレイ日記とかを読んで、自分もやってみたいなあ、と思っていたんですよね。


これからのゲームというのは、こういう「オンラインゲーム」と、ひとりで暇つぶしに遊ぶようなパズルとかに二極化していくのではないか、と、当時は考えていたものです。
ソーシャルゲームがこんなに流行るなんて、夢にも思わなかった。


そういう意味では、2004年にプレイステーション2で『モンスターハンター』が最初に出たときの印象は「こういうアクション性の強いゲームが、オンラインで長続きするだろうか?」だったんですよね。


PS2の『モンスターハンター』は予想外に売れたものの、実際にこのシリーズが大ブレイクしていったのは、2005年のPSP版の『モンスターハンター ポータブル』からでした。
PSP本体とソフトさえあれば、仲間とマルチプレイができる!
そう言われても、同じゲームをプレイするような友だちが、3人も4人もいるわけないだろ、オンラインで多人数プレイできないと、メンバーなんて集まらないはず、というのが、僕の予想でした。
いまさら、みんなで集まらないとできない「マルチプレイ」なんて!


ところが、蓋をあけてみたら、PSP本体の寿命を延長するくらいの大ヒット。
そうか、案外みんな、面白いゲームがあれば、「友だちと一緒に遊びたい」と思っていたのか、と。
このゲームで遊ぶためにPSPを買った人も、少なからずいたのです。


逆に、これからゲームの主流になっていくのではないかと思われた「知らない人と遊ぶオンラインゲーム」は、ある程度普及した段階で(僕の予想よりもはるかに小規模で)平衡状態となってしまっている印象です。
ドラゴンクエストがオンラインになっても、期待されたほど、オンラインゲーム人口は急激に増加はしませんでした。


僕自身、オンラインゲームに挑戦してみたことはあるんですよ。
でも、なかなかうまく世界に入り込んでいけないというか、ゲームの中でも、知らない人に声をかけることができなくて。
ちょっと壁を破ることができれば、どうってこともないのかもしれないけれども、なんだか、どうしてもダメでした。
なぜ、ゲームの世界でまで、人見知りを自覚しなければならないのか……
ふだんと違う自分になれるから面白い、という人もいるのはわかっているのですが。


モンスターハンター』の大ヒットをみて、僕みたいな「みんなで遊ぶゲームは楽しいけれど、知らない人に声をかけるのは敷居が高い」と考えている人が多い、あるいは、仲間同士のコミュニケーションの手段として、ゲームを利用している人の割合が高いのではないか、と思うようになりました。


結局、知っている人の顔を見ながら遊ぶのが、いちばん気楽だし愉しい。
そういう人が、多かったんじゃないかな。


このシリーズ、少なくともPSPの『ポータブル』が出た時点では、このローカルなつながりを前提としたシステムのゲームが、こんなに売れるとは、全く予想していませんでした。
当時はPSPニンテンドーDSに圧倒されて、「斜陽」でしたしね。
実際、オンラインで遊べる据え置きハード版も出てはいるのですが、いずれも、携帯機版ほどのヒットにはなっていません(近年は、据え置き型ハードのゲームが売れなくなっているのも事実ですが)。


世間には、一緒にゲームをやってくれる友だちがいる人が、こんなに大勢いるのか……と、モンハン発売日の喧噪を横目に、少しだけせつなくなるのです。



モンスターハンター4G

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