いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

2016年「ひとり本屋大賞」発表

※これは僕が個人的に行っている企画で、「本屋大賞」を運営されている方々とは、何の関係もありません。念のため。



本屋大賞
「2016年本屋大賞」は、明日、4月12日の夜に発表されます。


というわけで、今年も人の迷惑かえりみず、やってきました電線軍団!
もとい、「ひとり本屋大賞」!(恒例のオヤジ前フリ)
僕が候補作全10作を読んで、「自分基準」でランキングするという企画です。
あくまでも「それぞれの作品に対する、僕の評価順」であって、「本屋大賞」での予想順位ではありません。
(「本屋大賞」の授賞予想は、このエントリの最後に書きました)
今年は、こちらでやります!


では、まず10位から4位までを。


第10位 教団X
d.hatena.ne.jp


 正直、これがなぜノミネートされたのか、いまだによくわかりません。
 みんなが読んでいる『教団X』って、僕が読んでいるものとは別の内容なのでしょうか……



※ここからの9作品は、みんな「読んで損はしない」レベルだと思います。


第9位 流
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ねっとりと青春時代や軍での生活が語られるわりには、途中からは急速にスピードアップし、『週刊少年ジャンプ』の打ち切りマンガのよう。


……と、悪口ばかり並べてしまったようですが、そういう「小説的な整合性とか効率に、あえて背を向けて、ゴツゴツした人生の断片をそのままぶつけてくるような感じ」というのが、味でもあるのですよね。

 何より、人と人がいがみあったり、憎しみの連鎖が続いていく理由みたいなものが、この作品からは切実に伝わってくるのです。



第8位 君の膵臓をたべたい
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出た、内向的男子キラー!
はたして、僕の「叙述トリックセンサー」は、うまく「正解」に辿り着くことができたのか?
えっ?



第7位 王とサーカス
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「ミステリ」としては、「広げた風呂敷の割には……」という内容です。
 これを「ミステリ」として売るのはどうなのか、とさえ思う。
 でも、この物語は、ブログを書いたり、SNSをやったりしている人には(ということは、今の若者たちの多く、ということになりますよね)、「刺さる」ところがあるような気がします。



第6位 火花
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この『火花』には、「笑い」あるいは「芸」という魔物に取り憑かれて、答えのない迷宮であがき続ける人々の姿が、醒めた視線と溢れる愛情を混じえながら描かれているのです。
「本当にバカだよね」というのが、褒め言葉になる人々がいる。
でも、「本物のバカ」になんて、そう簡単になれるものじゃないんだ。

「漫才師とはこうあるべきやと思えることと、漫才師を語ることとは、全然違うねん。俺がしてるのは漫才師の話やねん」

第5位 羊と鋼の森
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この作品の素晴らしさは「調律師が実際に体験している世界」を、ものすごく誠実に言葉にして読者に伝えようとしていること、それに尽きると思います。



第4位 朝が来る
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この小説、中高生の男子に読んでもらいたい。
世の中って「若者の性欲」を「しょうがないよね」って肯定したがる人が多いけれど、漠然とした性欲と、実際に相手がいる性行為とでは、生じる「責任」が全然違うということを、考えてみてほしいのです。


さあ、いよいよベスト3。



第3位 永い言い訳
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 いや、すごいよこれ。ほんとすごい、容赦ないというか、読んでいていたたまれない。
 上記の「内容」には「感動の物語」と書いてありますが、僕は「じゃあ、お前はこの『妻を失った悲しみを実感できない男』とそんなに違うのか?」と、ずっと責められているようで、ものすごく居心地の悪い読書でした。
 なんというか「とりあえず平穏にみえる結婚生活を続けていくためには、いちいち考えないほうが良いこと」が、腐るほど詰まっている小説です。
 自己責任で読んでね。



第2位 世界の果てのこどもたち
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 正直なところ、この作品の前半部を読んでいて、「ああ、またこういう『女の子の友情物語』+『戦争』の話か……」と、いささか「うんざり」していたのも事実です。
 なんというか、「感動レセプター」を特異的に狙われているような気がして、「ベタなお涙頂戴小説か、うーん」という気分でした。
 でも、この小説には、その「お涙頂戴小説」にはおさまりきれない、ディテールの確かさや、「もうこれ以上読んでいるのはつらすぎる……」と思うような「あの時代」に満州に遺された人たちや空襲で身内を失った人々の声なき声が詰まっているんですよね。



第1位 戦場のコックたち
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 著者は『バンド・オブ・ブラザース』の大ファンで、その影響を受けている、というような話もされているのですが、勝っている側がこれなら、負けている側、さらに飢えている側の状況は推して知るべし、ということなんだよなあ。
 正直なところ、ミステリの「謎解き」部分としては、そんなに目新しいところは感じませんでした。
 でも、この小説の魅力は、「戦場の人間模様」であり、「弾薬が飛び交わない、少しだけ後方の戦場の日常」をうまく描けていることなのです。


以上、2016年「ひとり本屋大賞」の発表でした。
実際の「本屋大賞」の順位とのギャップを、どうぞお楽しみに!



今年の「ひとり本屋大賞」、10位だけはすぐに決まったのですが、あとはもう、どれが1位でもおかしくない、という感じです。
「いつもの顔ぶれ」から、ちょっと新しくなった感じもしますし。


今年は、読んでいてキツいな、と思う作品がけっこうありました。
『教団X』は、「なんでこんなにつまらなくて分厚いんだ……」というキツさだったのですが、『朝が来る』『永い言い訳』『世界の果てのこどもたち』は、素晴らしい作品なのですが、題材的に、読んでいていたたまれなくなりました。
それだけ、「心に迫ってくるもの」があったのですが、逆に「だからこそ、エンタメを読みたい!」という気がして、『戦場のコックたち』が僕の1位に。
これも題材は「戦争」であり、けっして明るい作品ではないのだけれど。


毎年、電子書籍Kindle)についてここで触れており、一昨年は「全作品、紙で読んだ」のですが、昨年は、『億男』『アイネクライネナハトムジーク』『土漠の花』『キャプテンサンダーボルト』『鹿の王』と、ちょうど半分の5作品をKindleで読みました。
ちなみに、今年は『教団X』『流』『火花』が紙、あとは電子書籍です。
そういえば、大賞発表時にノミネート作がすべて電子書籍化されているのは、今回がはじめてですね。


最後に僕の「順位予想」を書いておきます。
第3位:朝が来る
第2位:戦場のコックたち
第1位:君の膵臓をたべたい


 今年もやっぱり難しい。
 とくに『火花』の順位は読めません。
 書店への貢献度は高いと思うけれど、「本屋大賞」まで又吉さんにあげなくても、というムードではあります。
 最近の傾向からすると、大ベストセラーになったり、直木賞芥川賞で話題になったものは、本屋大賞としては敬遠されがちなのです。
 村上春樹さんの作品とか、ノミネートはされたものの低い順位で「それならノミネートしなきゃいいのに」と思ったものです。
 ただ、西加奈子さんの『サラバ!』は、直木賞受賞+本屋大賞2位の「準二冠」ですし、初期には、リリー・フランキーさんの『東京タワー』が本屋大賞を獲っています。
 昔は「いまひとつブレイクしきれない良作の発掘」だけではなくて、一般読者には愛されているのに、文壇とか文学賞からは黙殺されている作品に「大衆賞」的なものをあげる、ということもあったんですよね。
 そういえば、リリー・フランキーさんって、あれだけの大ベストセラーを書きながら、その後は「小説家」的な活動はほとんどされていないんですよね。潔い人だなあ。


真実の10メートル手前

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