いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

2018年「ひとり本屋大賞」発表

本屋大賞


「2018年本屋大賞」は、明日、4月10日の夜に発表されます。


というわけで、今年も人の迷惑かえりみず、やってきました電線軍団!
もとい、「ひとり本屋大賞」!(恒例のオヤジ前フリ)
僕が候補作全10作を読んで、「自分基準」でランキングするという企画です。
あくまでも「それぞれの作品に対する、僕の評価順」であって、「本屋大賞」での予想順位ではありません。
(「本屋大賞」の授賞予想は、このエントリの最後に書いています)


では、まず10位から4位までを。

第10位 キラキラ共和国
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 たぶん、好きな人はものすごく好きだと思うんですよ、小川糸さん。
 でも、僕は本当にこの人の小説を読むのがつらい。
(上の感想を読んでいただくと、どのくらいつらいのかが少し伝わるのではないかと)



第9位 崩れる脳を抱きしめて
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 ごめん、これも苦手だ……医療関係のディテールは、さすがによく書けていると思います。その他には、とくに言いたいこともないです。



第8位 星の子
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 読みやすさではこの10作のなかで一番かもしれません。そんなに長くないし。
 「子供を犠牲にするな」と「このくらいは多様性のひとつ」の間にあるような「中途半端な話」だからこそ、この小説は素晴らしいのだとも感じるのです。
 現実の大部分は、そういうグレーゾ—ンに存在しているものだから。



第7位 百貨の魔法
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 「子どもの頃よく行っていたデパートの思い出」がどんどん湧き上がってくる作品でした。本当に「いい話」なんだけど、僕にとっては、ちょっと「いい話すぎる」かもしれません。



第6位 騙し絵の牙
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 この本の最大の読みどころは、「速水という人物を中心に、出版業界の現状が、けっこう赤裸々に語られている」ということではないかと思います。
 「三年連続6%台の落ち込み」って、それはキツいよね……
 ただ、騙される、ってほどでも……



第5位 AX アックス
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 書店員さんが大好きな伊坂幸太郎さん。
 正直、もう「ベストジーニスト賞」みたいに、「殿堂入り扱い」でも良いんじゃないか、とも思いますが。『ゴールデンスランバー』ですでに『本屋大賞』は受賞しているし。
 しかしこの「恐妻家小説」は、かなり効く、そして、これが効いてしまう自分が、とても悲しい。でも、みんなこんなもんだよね。向こうからみたこっちも、たぶんそうなんだろうな。



第4位 屍人荘の殺人
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 けっこう読む人を選ぶというか「この世界設定を洒落として笑い飛ばせる人」には、たまらないミステリだと思います。
 しかし、これが「三冠」獲ってしまうミステリ界というのもけっこう行き詰まっている気がするな。



第3位 盤上の向日葵
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 いやほんと、ラストといい、「もうちょっとやりようがあったのではないか」と言いたくなる作品ではあるんですよ。
 こんなに面白い作品なのに、『このミス』では、9位にとどまっているのも、「人間ドラマとしては最高だけれど、ミステリとしては中途半端」だということなのかもしれません。
 現代の『砂の器』という書評をいくつか見かけたのですが、言い得て妙だな、と。
 僕自身が将棋の話が好きなこともあって、この順位に。
 将棋に興味がない人には、伝わりにくいかもしれませんね。



第2位 たゆたえども沈まず
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 これ、本当に素晴らしい小説なんですよ。それは間違いない。
 原田マハさんのアート小説を読んだことがない人には、最初に読む一冊として、ぜひおすすめしたい。
 表紙のゴッホの『星月夜』は、僕も死ぬまでに一度は本物を見てみたいのですが、「タイトルが邪魔で、絵が隠れてるじゃないか!」とか思ってしまいました。
 ただ、「史実の中にフィクションを混ぜること」について、考えさせられるところもあったんですよね。この作品に、それは必要だったのだろうか。



第1位 かがみの孤城
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 ノミネート作のなかで、最後に読んだのですが、「ああ、これで2018年の本屋大賞は救われたな」と思いました。佳作揃いではあるけれど、いまひとつ「これ!」っていう作品がないな、と感じていたところに、「これ!」があった。
 人間の記憶とか印象というのは、今から近いものほど鮮烈になりやすい、という傾向があるのは承知の上なのですが、この10作のなかで、もっとも「多くの人に読んでもらいたい小説」でもありました。




 というわけで、2018年の「ひとり本屋大賞」でした。
 今回は、上下巻とか、ものすごく分厚い本はなかったけれど、薄くてすぐ読めるのは『星の子』くらいで、あとはそれなりのボリュームもあったんですよね。
 一部「僕には合わない作品」はあったものの、昨年の『コーヒーが冷めないうちに』のような「謎ノミネート作」はみられませんでした。


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 相変わらず伊坂幸太郎さんは強いものの、『本屋大賞』常連作家も、少しずつ世代交代してきた印象はありますね。
 恩田陸さんの二回目の受賞は、ひとつのターニングポイントになったのかもしれません。
 今回はミステリが多かったのですが、トリック云々というより、人間を描く作品のアクセントとしてミステリ要素が含まれているものが目立ちました。
 なんとなく「松本清張還り」みたいな感じもしたのです。


 個人的には、『かがみの孤城』が、頭一つ抜けていました。


 さて、最後に順位予想。
1位 かがみの孤城
2位 たゆたえども沈ます
3位 騙し絵の牙


 3位は、投票するのが書店員さんたち、というのも考慮しました。
 1位2位はこれで堅いと思うんだけどなあ。連勝単式で1点勝負したいくらいです。
 それでは、また次回の「ひとり本屋大賞」で、お会いしましょう。


かがみの孤城

かがみの孤城

盤上の向日葵

盤上の向日葵

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