いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

某有名カレー店のネット注文で、僕を悩ませた「微妙な待ち時間」問題


 僕が住んでいる県でも、緊急事態宣言が続いており、飲食店の営業時間は制限されています。

 しかしこの飲食店の営業時間制限、たしかに、お酒が入ると感染予防の意識がアバウトになる、などの弊害もあるのでしょうけど、遅い時間まで仕事をしなければならないことがある人間としては、けっこうつらくもあるんですよね。
 
 店で食べることができない時間にご飯を確保する際には、テイクアウト、ということになるのですが、僕と同じように遅くまで職場で仕事をしている人、あるいは、夜勤をしている人にとっては、選択肢が狭くなるだけに、開いている店でかなりの「密」になりやすいし、店内飲食も閉店間際になると、お客さんが押し寄せてきて店員さんがてんわんや、という状況になっています。
 ウーバーイーツの人が延々と料理ができるのを待たされて、イライラしている光景もよく見かけるのです。

 人々の活動時間を短くする、という意味では、有意義なのかもしれませんが、営業時間が短くなることによって、かえって人が集中する時間帯ができたり、労働環境が悪くなったりしているようにも思われるのです。
 
 わざわざテイクアウトとかを利用せずに、ちゃんと日中に準備しておけよ、ということなのかなあ。

 そんなある日の出来事。
 その日は仕事で遅くなったので、某カレーチェーンでテイクアウトをネット注文し、帰りに取りに行ったんですよ。
 けっこう閉店時間が近くなっていて、僕とあと一人くらいが取りにくれば営業終了、という状況のようでした。

 そこで、ちょうどネットで予約した時間に店に着き、名乗って商品を受け取ろうとしたら、「では、しばらくお待ちください」とのこと。
 待ち時間を減らしたくてネット予約していた僕は「えっ?」と思ったのです。
 店内が大混雑していたり、注文が殺到している様子なら、致し方ないと思うけれど、店員さんは、もうすぐ閉店ということもあり、みんなで雑談をしていて、和やかな雰囲気です。
 
 結局、そこから受け取るまでに10分くらいかかり、僕は腑に落ちないまま家路につきました。

 ネットで予約していたのに、時間通りに着いて、店員さんたちも余裕がありそうだったのに、なんで商品は準備されていなかったの?

 こちらのオーダーミスではなく、向こうにオーダーが通っていなかったわけでもなさそうなんですよ。
 「ああ、お待ちしておりました」という反応だったので。
 
 でも、商品を受け取るまでに、けっこう時間がかかってしまった。

 なぜ、そうなってしまったのか?


 僕のなかで、2つの仮説が立てられました。
 (1)「つくるのを忘れていたけれど、それを説明せずに、乗り切ろうとした」。
 (2)「予約時間は承知しているが、なるべく熱々のカレーを提供するために、最後のひと手間(カレーを温めて、容器に入れる?)は客が来店してから行うという方針にしている」。


 単に手際が悪くて、あるいはネット注文でのテイクアウトに慣れていなくて時間がかかった、という可能性もありますが。


 あらためて考えてみると、(1)であればそれは店側の「失策」であり、(2)であれば、お客に美味しいカレーを食べてもらいたい、という「誠意」ということになりますよね。


 僕にはそのどちらの理由なのかは、わかりませんでした。
 個人的には、ネットで時間指定していて、店も混んでいなかったのだから、定刻に着いたら、待たずに受け取れる状態にしておいてほしかったのです。待ち時間がもったいない、と思ったから、ネット予約したのだから。

 でも、店側からすれば、テイクアウトのお客さんが予約時間より遅れるのはよくあることだし(僕だって道が混んでいて7時間通りに着かない、なんてことはよくあります)、そこで冷めた商品を出したくない、というポリシーもあったのかもしれません。


店側は、予約時間に遅れたお客さんから「これ、冷めてるじゃないか!」ってクレームを受けたことがあったのかもしれないし。


 ものすごく腹が立った、とかクレームを入れる、というほどの話ではないのですが、同じ現象に対しても、そうなった動機というのは、説明されないとこちら側からはわからないことがある。

 「温かい、美味しいカレーを食べてもらいたい」という「善意」に基づくものであっても、相手は「なんで予約してたのに待たされるんだ……」と苛立つこともある。
 こちらに時間の余裕がないときなら、なおさらでしょう。

 予約した時間に来ないお客さんもいるから……と言われても、「だからといって、ちゃんと予約時間に来た人まで待たされるような仕組みにするのはおかしいのではないか」と、自分が時間通りに着いたときには言いたくなる。

 これなら、直接店に行ってテイクアウトを注文しても同じくらいの待ち時間だったのでは……とも思いました。

 結局、「つねにこういう待ち時間が生じる」のか、「今回だけだったのか」もわかりません。
 
 ただでさえ、最近イライラしやすいので、こういうときは、「美味しいのを食べてもらいたかったのだろう」と思うことにしています。
 そう「思うことにしている」のです。
 運転していて、猛スピードで煽ってくるような危ない運転の車を見ても、「親の死に目に会えるかどうかの瀬戸際なんだろう」と思うことにしています。

 まあ、こういうことを書いている時点で、それがうまくいっている、とは言い難いわけですが。

 果たして、あの待ち時間は「怠惰」だったのか「誠意」だったのか?

 ちゃんと説明すればいいのに、と言いたいところですが、毎回、「熱々をお出しするために、お客様が来られてから準備をしております」とか説明されるのも煩わしいし。

 結局のところ、世の中には、解釈のしようによって、善意とも悪意とも受け取れることがたくさんあるのです。

 でも、善意でやっているときほど、やっている側が、それが相手に「悪く解釈される」可能性を想像するのは難しくなります。

 実際は「説明したらわかってもらえる」こともあるけれど、「あらかじめ好感を持っている相手のやることは善意からだと思い込みやすい。逆もまた然り」なのですが。


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