この話の続きなど。
最初に言っておくと、この振り込め詐欺事案が解決された、というニュースは出ていないし、これが発覚する前に発表された「10周年記念優待の『300株以上所有で25000円分のデジタルギフト」が実施されるかどうかのアナウンスもなされていません。
(企業側から「やめます」と言わないということは、やる気だと考えるべきなのか、株関連の掲示板やSNSなどでも議論がつづいています。「それでもやります」という発表もされていないので、どちらに転んでもおかしくない状況だと思います)
このニュースを聞いたときに感じたのは、ちょっとタイミングがおかしくないか?だったんですよ、正直なところ。
東証グロース上場10年で、時価総額40億円に満たない、という状況を考えれば、上場維持のために株価を上げる対策として、記念優待を出す、というのはわかるし、これまでもそういう会社はいくつもありました。
とはいえ、その直後に、この11億円詐欺の話が出てくると、『はてな』側が、「資金はまだあるし、会社は大丈夫です」とアナウンスしたところで、「本当に大丈夫なのか?」とみんな思いますよね。
新興IT企業で、技術力が売りの『はてな』が、こんな巨額の詐欺に引っかかってしまった、ということは企業としてのセキュリティ体制に問題がありそうだし、「この会社に自社のサービスを任せてだいじょうぶなのか?」と顧客も不安になってしまう。
そもそも、時価総額36億円の企業で、11億円も振り込む事案というのは何だったのか?
三菱商事や三井物産ような商社の担当社員なら、個人の裁量でそのくらいの金額を緊急で動かすことだってありそうな気がするけれど、『はてな』の規模で、誰か個人の担当者、あるいは少数のグループがこんな大金を動かせるのか?何に使ったの?
そうなると、なんらかの内部のトラブルや犯罪行為の可能性も疑われるし、それはそれで企業の信用にかかわります。
詐欺に引っかかったにしても、自作自演にしても、『はてな』にとっては、ネガティブな評価にしかつながらない。
僕はこの11億円の話を聞いたとき、「これで『はてな』の株はストップ安だな、どこまで下がるんだろう?」と思ったんですよ。どうせ100株ホルダー、もうすでに20万円の含み損だし、最悪上場廃止になってもあと10万円の損。もう乾いた笑いしか出ません。
発覚した翌取引日は予想通りのストップ安の881円。まあそうだよね。何連ストップ安になるのかな。500円も切るかもな。もしあまりにも安くなったら、いちかバチか200株買い増して300株の優待もらえればラッキー、もらえなかったらネタにして忘れるか、などと考えていました。
ところが、その翌日には取引成立となり、『はてな』はあんな不祥事があったのに底堅いというか、けっこう買う人もいるんだな、と思った次第です。
『はてな株』は、2026年5月1日の終値が892円。記念優待フィーバーからはだいぶ下がりましたが、2026年初頭と同じくらいの株価を維持しています。
壊滅的な値下がり、ストップ安連発には5月2日の時点では、なっていません。
これは、『はてな』という企業への応援なのか記念優待目的なのか?
あるいは、11億円失っても、このくらいの価値はある、という評価なのか?
もしかしたら、これで財務が厳しくなったことにより、『はてな』を子会社化する大企業が出てくるのではないか、というTOB(株式公開買付)での値上がりを期待する人々が買っているのか?
これまでのいきさつを考えれば、KADOKAWAや集英社、サイバーエージェントなどが「はてな買収」を狙う可能性もあるかもしれません。任天堂っていうのも、ゼロじゃないかも(証拠とかは一切ないので僕の妄想として聞き流してください)。
世の中には偶然、とか、間が悪い、っていうのはもちろんあるのですが、それにしても今回の『はてな』に関しては、タイミングが悪かった。
僕は正直、この一連の動きをみて、「もしかしたら、記念優待は、あらかじめ11億円のことを知っていた関係者による、『株価暴落の予防策』だったのではないか?」と疑ってしまいました。
本当に出るのか不透明な状況ではありますが、少なくとも「無配当」よりは、売る側としては投げ売りするのが惜しくはなると思いますし、先に株価が上がっていたことによって、下値も今年の年初レベルでもちこたえられた。
不祥事をもし会社側が知っていて、あるいはその可能性が疑われていた時点で、それを隠して優待で株価を上げようとしたのなら、そこで買った人たちは、高値で掴まされたと憤るはず。
うーん、『はてな』は被害者ではあるのだけれど、なんだかよくわからない、というか納得できない状況が多すぎる。
『はてな』は、そんなに邪悪な会社じゃないと、何度か(メールや文章の仕事で、ですが)内部の人とやりとりをした僕としては信じたいし、ずっと応援はしているのだけれど、捜査が続いているとはいえ、11億円は戻ってこないことが前提で、今後の事業継続ができるのか、優待は出せるのか、くらいは正式にアナウンスしてほしい、とは思っています。
それと同時に、「株価」とか「投資をしている人たち」の思考に底知れなさというか、こんな状況でも株を買う人がいるのか、と驚いているのも事実です。
調べてみると、同様の企業を対象とした振り込め詐欺にあった事例はけっこうあるみたいで、『はてな』自作自演説も考えすぎかな、と思い、そのあと、「いや、その詐欺が流行っていることを利用して、内部で計画的に行われた可能性も否定できないな」と自分で打ち消す。
「真実はいつもひとつ!」と言うけれど、事実はひとつでも、真実は人間の数だけある。
「僕は江戸川コナン、探偵さ」
と、あからさまに映画の影響を受けた呟きを発してみたくもなるのです。
この状況で、『はてな』の株を売るのはわかるけど、買う人は、TOB狙いじゃなければ、どうして買おうと思うのか、もうわけわかんないよ、株って、投資家って怖い!
優待だって、出たとしても今回限りなら、25000円の優待を5万くらい損してもらうことになりかねないのに。
ちなみに、某AIに「はてな株は買っていいと思う?」と質問したところ、「あなたの投資スタンスだと、静観が正解です。リスクが高い銘柄に手を出さないほうがいいですよ」と、至極まっとうな答えが返ってきました。
投資なんていうのは、他人の言いなりになっていては、大きく勝つのは難しいんですけどね。
イーロン・マスクさんが大嫌いな「空売り」でも仕掛けようかと思ったのですが、正直、これから『はてな』がどうなるのか僕には全然わかりません。株価が逆行高する可能性だって、無いとは言い切れない。
『はてな』は人に寄り添った技術でインターネットを賑わせてきたし、サイバーエージェントやnoteになっていても、全然おかしくなかった。というか、サービスの質そのものは、いまでもnoteよりも優れていると僕は思っています(慣れている、という前提はありますが)。
この『少年ジャンプ+』の成功の過程を描いた本のなかに、『はてな』が出てくるんですよ。
この「ジャンプルーキー」という投稿サービスは、「はてな」と組んだからこそ成功できたと籾山は考えている。読者側も投稿者側も無料の投稿サービスは、それ自体で利益を生むのは難しい。出版社側にとっては、新人発掘というメリットがあるが、開発会社にとってそれ単体としての旨味は少ない。何しろ、作品の広告収入は100パーセント投稿者に還元するという利益度外視、投稿者ファーストの仕組みを導入しているのだ。
「このプロジェクトを始めたときに、いろんな会社の人が、こうすればもっと利益が上がりますよみたいなことを言ってきたんですよ。でも僕らは目先の利益は考えてなかった。それは『はてな』さんも一緒で。いいサービスをつくりたい。イケてるサービスをつくりたいっていうのが根底にあったんです」
「はてな」には「インターネットが良い場所になること」をもっとも優先事項とする哲学が流れていると石田は言う。
「インターネットにとって良いことかどうかっていう判断が先にくるから、目先の利益という観点はけっこう後ろになっちゃいますね。利益が出るけどインターネットに悪いことだからやりませんって素直に言える会社だと思います。それはおそらく『ジャンプ+』の方々も同じで、だから籾山さんはうちとは相性がいいと言ってくださるんだと思います。
電子書籍系アプリは、いかに効率良くユーザーが欲しいものに出会えるかが大事だ。だが、川口が入った頃の「ジャンプ+」は、そうした視点が不十分だった。データを見て、タップ率の良し悪しによって配置を入れ替えていくようなロジカルな運用がなされていなかったため、まずはその改善に着手した。そこで川口がいい意味でカルチャーショックを受けたのが「ジャンプ+」の方針だった。
「いかに読者をいっぱいつくって、サービスを大きくして、またその作品が人を呼び、人が作品を呼び、ムーブメントをつくれるかっていうのを第一目標に掲げているので、通常の電子書店ではあり得ない考え方が少なくないんです。基本的には、通常の電子書店は、どうしても売り上げが一番の目標になるので、ともすれば、ユーザーの利便性を損なうUI(ユーザーインターフェース)改修をやりがちなんです。でも、『ジャンプ+』は、とにかく読んでもらうというのが目標。ユーザーに気持ちよく使ってもらうのを考えたら、売り上げとぶつかる部分が多いけど、『ジャンプ+』って、基本それがないので、設計していて面白いし、細野さんの理念が、すごいわかりやすいんです」
固有名詞がわからないと思いますが、よかったらリンク先のエントリを(もちろん本も)読んでください。
とにかく、『はてな』は「インターネットが良い場所になること」を優先してきた企業で、だからこそ、『note』になれなかったのではないか、とも思うのです。
僕にそれを言う権利はないのは百も承知ですが(このサイトも広告だらけなので、なるべく近いうちに是正します)、『はてな』への疑念と、応援したい気持ちが、いま、せめぎあっているのです。というか、正直な気持ちとしては、『はてな』には、『はてな』でいてほしい、ただそれだけです。
それでも、食べていかなきゃいけないし、上場企業であれば「成長」しないと市場から見放されてしまうからなあ。
結局、みんながコンテンツにお金を払わないから、広告だらけのインターネットになってしまったわけだし。
ただ、今回の事案を追いかけていて、『はてな』を「インターネットが良い場所であること」を応援している人って、いまの時代でもたくさんいるんだなあ、とも実感しているのです。








