いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

インターネットが「エイプリルフール」を殺した20年の軌跡


 やっと4月2日になりました。
 4月1日、エイプリルフールって、ずっと苦手だったんですよね。
 「嘘をついていい日」ということで、何か気の利いた嘘をつくことが求められているようで、相手も「どうせ今日言っていることは嘘なんだろう」と身構えているなかで会話をするのはめんどくさい。

 学校に行っていたときも嫌だったなあ……
 と思い出した気分になっていたのですが、よく考えてみると、4月1日は春休みで、学校には行っていないはず。
 記憶というのは、いつのまにか改変されている、ということなのでしょう。

 インターネットの黎明期、1990年代後半から、2000年代にかけては、さまざまなエイプリルフールネタが登場していました。

timesteps.net
gigazine.net


 ちなみに、後者に関しては、ちょうど10年前の2011年ではなく、なぜ、2010年のまとめ記事をリンクしたのかというと、2011年で検索しても、エイプリルフールネタがほとんど出てこない?

 なぜ?と考えかけてようやく気が付きました。
 2011年の3月11日に東日本大震災が発生して、まだ1か月も経っていない時期は「エイプリルフール」のお気楽なネタを書けるような状況ではなかった、ということなのでしょう。
 たった10年で、あんな衝撃的な記憶でさえ、すぐには思い出せなくなっていたのです。

 僕は2000年くらいからネットで日記を書いたり、個人サイトをつくったりしてきたのですが、20年前くらいの個人サイトのエイプリルフールって、ちょっとしたお祭りムードだったのです。
 「結婚しました!」「実は男(女)でした!」、そして定番だったのが「このサイトを閉鎖します(止めます)」という「閉鎖宣言」。

 4月1日になると、人気テキスト系サイトには、「実は…… 今日で閉鎖します!!(フォント弄りで大文字)」がトップページに表示されていて、そのサイトの掲示板には「やめないでください!」みたいなコメントが溢れかえっていて、うんざりしていたのを思い出します。
 「4月1日」というのを利用して、ファンの忠誠心を試すような管理人と、そんなミエミエの魂胆に「引っかかってあげている」信者たち。平和ではあるけれど、めんどくさいというか鬱陶しいなあ、と。まあ、「自分の葬式をみてみたい」という願望は多くの人間が持っているのかもしれませんが。

 個人的には「嘘をついていい日の嘘や冗談」なんていうのは、関わるだけ時間の無駄だとしか思えないのです。
 そして、「エイプリルフール」という慣習も、バレンタインデー以上に、年々下火になってきているように感じます。
 これは、僕が年齢的にそういうものと疎遠になっているというのが大きな要因の可能性もありますが。
 でも、僕の子どもたちには、僕が子どもだった頃のように「4月1日だから、何か気が利いた嘘をつかなきゃ」みたいな感覚はなさそうです。

 もしかしたら、インターネットというのが日常的なものになったことで、エイプリルフールというのは廃れてきたのではないか、とも思うんですよ。

 ひろゆきさんが、「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」と、西鉄バスジャック事件に関するインタビューを受けた際に言ったのが2000年。

 インターネットが変えたもののひとつは、「真顔で嘘をつく人(立派そうな大人から『名無しさん』まで)に、日常で接する頻度が圧倒的に増えた」ことなのかもしれません。

 だから、ふつうの人たちは、4月1日に、わざわざ他人の嘘に付き合うのがめんどくさくなった。

 その一方で、ちょっとしたミスや誤字などで大きなバッシングを受けるリスクを負っている企業サイトなどにとっては、エイプリルフールは、「ガス抜きができる日」という感覚が残っているのではなかろうか。
 それでも、平和なウソや冗談じゃないと「エイプリルフールだからって、こんな嘘が許されるわけないだろう!」と責められる可能性は十分ありそうですよね。

 僕自身は、嘘をつくのもつかれるのも、ネタに付き合うのもめんどくさいので、近年の4月1日は、極力ネットから離れる日にしています。あわただしい時期だし、転勤初日、なんてこともありますしね。

 でも、2000年代初めの、個人サイトでの

「閉鎖します!」
「やめないで!」
「エイプリルフールネタでした。ごめんなさい」
「よかった!安心しました!」

みたいな「お約束」が、今となっては、ちょっと懐かしくもありますね。
ああいうのは、インターネットがまだ「小さく開かれていた時代」であればこその光景だった。


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