いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

『大戸屋』VS 『コロワイド』の「リアル半沢直樹」と『やよい軒』の野望


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 ついにコロワイドによる大戸屋の敵対的TOB(公開買い付け)成立か……
 このTOB、最初の期限にはコロワイド側が目標としていた株数を確保できず、目標数を下げて期間を延長していたんですよね。

 途中でコロワイド連結子会社の「しゃぶしゃぶ温野菜」の福島県郡山市の店舗が爆発事故を起こしたり、大戸屋側は「オイシックス・ラ・大地」との業務提携の発表や、株主に対して、「大戸屋の味とコンセプト」を守るための協力を呼びかけたりもしていました。


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まあでも、悩んでいた個人株主も、最終的にはかなりの割合の人が「株が高く売れるなら、この際、コロワイドTOBで売っておくか」という判断をしたのも理解できます。

投資目的で買っている人にとっては、このTOBの価格で、最近の業績が良いとは言えない大戸屋の株を売れるのは願ってもないことだし、いくら大戸屋のファンだって、お金の魅力に抗うのは難しい。新型コロナの影響がそう簡単におさまるとは思えないので、大戸屋の業績が劇的に改善していく見込みは乏しい。
現経営陣は「いまの大戸屋の伝統を守りたい」と言っているのですが、ずっと改革を拒んできたからこの業績なんだろ、という気もしますし。

コロワイドによるTOBがなかなかうまくいかなかったことをみても、大戸屋を支持する人は多そうなので、コロワイドじゃない会社に助けてもらう、というやり方もあったのではないか、とも思うんですよ。
考えてみれば、大戸屋そのものの未来を考えれば、コロワイドの資本とシステムをうまく取り入れて、大戸屋をもう少し稼げるようにするという選択肢もあったのではなかろうか。
でも、創業家との因縁みたいなものも絡んで、「とにかくコロワイドの言いなりにだけはなりたくない!」という感情が優先されてしまったように見えるのです。

結局、株主に提示されたのは、オイシックス・ラ・大地との部分的な提携と「大戸屋を守るために協力してください」という呼びかけだけ。

むしろ、これでよく、多くの大戸屋の株主たちはここまでコロワイドに転ばなかったな、と感心してしまいます。

ギリギリのところで揉めたら、もっと買い付け価格が上がる、という思惑もあったのかもしれませんが。

いまの時代の人にとっては、リアル半沢直樹という感じなのでしょうが、僕は、昔『課長・島耕作』で、企業買収のために島耕作が電話にかじりついて「こうなったら、もういくらでも買うぞ!」と株を集めていた場面を思いだしました。なんのかんの言っても、島耕作はけっこう僕も人生に大きな影響を与えているような気がします。主に、課長だったときの島耕作

正直、いち顧客としては、このTOBは成立してほしくなかったんですよ。
僕は大戸屋がけっこう好きですし、コロワイドがやろうとしている「店舗運営の効率化」によって、『大戸屋』が『やよい軒』になってしまうだけではないか、と思っていたのです。
いや、『やよい軒』が嫌いってわけじゃないけれど、同じような定食チェーンばっかりになってはユーザーとしては寂しい。
やよい軒』の「いちおう、野菜を乗せておきました」みたいなサラダに比べると、大戸屋のサラダはドレッシングも含めてずっと美味しいと思うし、魚料理も多彩です。
席に座れば、冷水と温かいお茶を同時に持ってきてくれるのも気が利いている。


でも、あらためて考えてみると、僕が定食屋に入るときには『やよい軒』を選ぶことが多かったのです。僕が生活している範囲では「やよい軒」のほうが数が多いのは確かなのですが、その店舗数の差以上に、『やよい軒』を利用する頻度が高かった。
 味に関しては、大戸屋のほうが少し美味しいし、健康的でもある、と思ってはいるのです。値段も『やよい軒』で「しょうが焼き定食」しか食べない、というのなら『やよい軒』のほうが安いのでしょうけど、同じようなメニューは、同じくらいの価格です。
 『やよい軒』では「ごはんお代わり無料」がセールスポイントなのですが、年のせいか、かなりお腹が空いているときでも、大戸屋の「ごはん大盛り・300g」でお腹いっぱいです(『大戸屋』でも、ごはんのお代わりができる店もあるようです)。
 定食のおかずは上品で美味しいのだけどボリュームが……という声にも配慮したのか、最近は、「鶏と野菜の黒酢あん定食」の鶏4個から6個への増量、というようなメニューのバリエーションもできました。

 そういえば、最近、『やよい軒』の期間限定メニューで、「彩野菜と鶏の黒酢あん定食」というのが登場したんですよ。


www.yayoiken.com


大戸屋の「鶏と野菜の黒酢あん定食」をけっこう食べている僕も、「お手並み拝見」とばかりに頼んでみたのですが、見た目といい味といい、「これなら、わざわざ大戸屋に行かなくてもいいや」という仕上がりだったのです。


(ちなみに、こちらが『大戸屋』の「鶏と野菜の黒酢あん定食」)

www.ootoya.com


 僕も長年、いちユーザーとして定食業界に関わってきましたが、ここまで他者の看板メニューをパクった(もとい、模倣した)メニューを見たことはありませんでした。良いのかこれ。でも、「料理レシピには、基本的に著作権はない」そうなので(僕が食べて「よく似ている」と思っただけで、黒酢あんのメニューは、みんなこういう味なのかもしれないし、ちゃんとした舌の人が食べれば「全然違う」のかもしれないけど)、『やよい軒』が「かあさんのチキン煮」とかを相次いで『大戸屋』よりも安く出すことも可能なはずです。


 なぜ、『大戸屋』よりも『やよい軒』を選んでしまうのか?
 僕の個人的な見解としては、『大戸屋』というのは「ちゃんとしている」のだけれど、そのために、少し敷居の高さも感じるのです。
 食券を買ってテーブルに置いておくだけでオーダーを受けてくれる『やよい軒』のほうが、いちいち言葉を交わして確認される『大戸屋』よりも気楽だし、この新型コロナ下の世の中では「口を開かなくてもいい」というのはちょっと安心でもあります。ご飯のお代わりにしても、「じゃあ大盛りで」と店員さんに言うより、『やよい軒』自慢の「おかわりマシーン」を使うほうがハードルが低い。
やよい軒』には、スマホをいじりながら食べている人がけっこういるけれど、大戸屋にはあんまりいない。思えば、水とお茶を店員さんが一緒に持ってくる、というのは「大仰なだけで効率を下げているだけ」にも思われます。セルフでいいよね、もう。オーダーから出てくるまでに時間がかかるのは「ちゃんと店内で調理している」という大戸屋の特徴なので、差別化のためには必要なのだと思いますが、「ちょっと時間がかかる」とか「レジで待たされる」というのは、僕みたいな食にそれほどこだわりがない人間にとっては、けっこう影響があるのです。なんとなく、オッサンひとりだと入りにくいんだよなあ、大戸屋

 とはいえ、前述したように、僕は大戸屋やよい軒の二番煎じになることを望んではいませんし、下手にその路線に舵を切ろうとすると、「高くて遅くて不味くて敷居の高いやよい軒」的なものになりかねないと危惧しています。
 いやそもそも、コロワイドは何を狙っているのか。
 大戸屋コロワイド的に、効率重視で運営しようとするのであれば、それは大戸屋の個性を殺すことになりかねず、そうなると、なぜ大戸屋を買ったのかわからなくなってしまう。ブランド名が欲しかったのだとしても、このTOBで、話題にはなったけれど、あまり良い話題だとは思えませんし。

 先日、『大戸屋』に行ってみたら、メニューがかなり少なくなっていて、大戸屋大戸屋なりに、効率化とかコストダウンを意識しているのだろうな、と感じました。テイクアウトにもだいぶ力を入れているみたいです。

 おかずの肉系の増量メニューとか、ごはん大盛り無料とか、けっこう、できそうなことはすでにやっているんですよね、大戸屋
 ただ、少なくなったメニューをみて、僕は少し寂しくもなったのです。定番メニューばかり、期間限定や店舗限定がほとんどなくなってしまうと、「今度はこれを食べに来ようかな」という「フック」が無くなってしまうものなのだな。そのつもりで来ても、また「鶏と野菜の黒酢あん定食」とか、いつものやつを結局注文してしまうのだとしても。

 とりとめもなく書いてしまいましたが、大戸屋資本力に負けた、のだと思います。
 ただ、それと同時に「コロワイドにだけは買われたくない」という気持ちだけがビンビン伝わってきて、株主に「コロワイド抜きの希望を感じられる未来予想図」を示そうとしなかったのが、いちユーザーとしては残念でした。
 プレナスの『ほっともっと』と『やよい軒』もそうなんだけれど、系列に入ると、やっぱり「なんだかどの店も似たような味」になってしまうんだよなあ。大戸屋には、そうなってほしくないけれども。


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