TSUTAYAの閉店ラッシュが止まらないみたいです。
いや、「止まらない」というよりは、もう「戦略的撤退モード」に入っているのか。
最近、比較的近場のショッピングモールに入っているTSUTAYAが、毎週金曜日から日曜日の「新作・準新作DVD半額クーポン」を毎週アプリで送ってきていて、そんなに週末の集客が厳しいのか……と思っていたんですよね。
かなり大きなショッピングモールで、週末は駐車場に停めるのも出るのも時間がかかるので、わざわざここに返しに来るのは面倒だな、と思われてしまうのが大きいのではないかと。
買い切りの書店はそこそこにぎわっていても、レンタルの場合は、とくに最近はアマゾンプライムやネットフリックスなどのオンデマンドのサービスが普及しているので、「返しにいくめんどくささ」というのが、以前より強く感じられるようになってきています。
どんどん店舗の大型化がすすみ、ショッピングモール内につくられることが多くなっているTSUTAYAに比べると、ゲオは、僕が住んでいる地域では、ロードサイドの小さな店舗が多いことが、かえって強みにつながっているように感じます。ちょっと寄って店の近くに車を停めて、サッと借りたり返したりできる、というのは、ショッピングモールのTSUTAYAに比べると、かなり敷居が低いのです。
最近は、DVDレンタルを利用するのは、高齢者や子供連れするのは、が目立つこともあり、生き残るのは「出入りしやすいコンパクトな店」なのかもしれません。
アメリカ・カリフォルニア州に本社があるネットフリックスの創業者リード・ヘイスティングス氏がネットフリックスというビジネスを思いついたのには、こんなきっかけがあったそうです。
1985年にスワジランドから帰国したヘイスティングス氏は、すぐには仕事につきませんでした。時はインターネットの勃興期。彼は、帰国後スタンフォード大学に入学しコンピュータ・サイエンスを学びました。厳しい勉強に耐えながら晴れてMBAを取得、卒業後はネット関係の小さな会社に就職します。その会社で仕事をしているうちに、ネットフリックスのビジネスのアイディアが生まれました。ある時レンタルビデオ店からDVD「アポロ13」を借りたのですが、返却が遅れ延滞料として40ドル請求されてしまいます。「なんて高い延滞料だ。みんな同じ思いをしているに違いない、それならここにビジネスチャンスがあるぞ」。そう思ったのが、ネットフリックスの創業のきっかけです。1997年のことです。社名の由来は「ネットの映画館(フリックス)」。将来映画流通はネット配信が主流になることを、ヘイスティングス氏は予見していました。
ヘイスティングス氏は、最初は宅配便を使っての月額定額制のビデオレンタルをはじめて成功を収めたのですが、郵送のコストが高いことに気づいて、ネット配信に転換していきました。
ネットでの映像配信の当初の問題点として、テレビ局や映画会社などが、コンテンツをなかなか使わせてくれなかったことがありました。映画は劇場公開から、DVD発売(レンタル)、テレビ放映、衛星放送という順番で、最後にようやくネット配信されていたのです。
それならばとネットフリックスは、オリジナルのドラマやバラエティなどのコンテンツ制作に乗り出していったのです。
ネット配信のドラマでは、最初から1クール(12話)分が一度に配信され、「一気に見ることができる」、あるいは、テレビ番組に比べて、表現の規制が緩く、制作者がつくりたいものをつくれる、というようなメリットもあったのです。
デビット・フィンチャー監督が制作し、ネットフリックスが2013年に配信した『ハウス・オブ・カード』は大ヒットし、ネット発のドラマは大ブレイクしていったのです。
潤沢な予算で、自分がつくりたいものをつくれる、ということで、有名な監督や俳優も、ネット発の作品にどんどん流れ込んでいきました。
その一方で、「ノミネートの権利を得るために、映画館で申し訳程度に1週間公開されるだけ」のネット発の作品が、アカデミー賞の対象になってもいいのか、というような反発が既存のメディアから起こってきてもいるようです。
『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督のNetflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』は、アカデミー賞で、監督賞・外国語映画賞・撮影賞の3部門を受賞しました。
ネットでの映像配信が変えたもの、というのは、「コンテンツを借りたり返したりするめんどくささを無くした」だけではなくて、自分たちのプラットフォームに視聴者を呼び寄せるための、オリジナルコンテンツの隆盛なのです。
これはもう、世界的な潮流になってきていて、日本でもAmazon Primeオリジナルの『ドキュメンタル』や『バチェラー・ジャパン』など、オリジナルコンテンツが発信されてきています。
ネット配信は、レンタルの代替ではなくて、映画、テレビ、ビデオソフト・DVDに続く、新しい映像メディアになってきているのです。
個人的には、「もうしょうがないよね」という感じではあるのですが、どれを借りようか悩んでいる子どもの姿を微笑ましく感じたり、新作がどのくらい借りられているのか、映画館ではあまりヒットしなかった作品が、レンタルでは全部貸し出し中になっているのを見て、「映画館で観るほどではないけれど、借りてなら観たい」というのはこういうものなのか、と感心したりできなくなるのはちょっと寂しいので、レンタル店という選択肢も残ってくれるに越したことはないと思っています。でも、難しいよねそれは。
僕が小学生の頃、家庭用ビデオというのができて、「テレビ番組を録画しておけば、リアルタイムじゃなくても観ることができる」ようになったことに驚き(何度も録画を失敗して泣いたけれど)、中学生の頃にレンタルビデオショップが近所にできて、観たい映画を観たいときに観ることができることに感動し、大学に入って、近所のレンタルビデオ屋の会員になって、ちょっと大人になったような気がしたのを思い出します。
ネット配信が当たり前の時代に生まれた人たちは、これから、どんなことを体験していくのだろうか。
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