いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

朝日新聞「平成の30冊」への雑感


book.asahi.com
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 「平成の30冊」か……
 もうすぐ「平成」も終わりを迎えるわけですし、こういう企画も出てきますよね。
 平成になったときには、「将来、『昭和生まれ』なんて若者にバカにされるなんて嫌だな」と思っていた僕なのですが、あらためて考えてみると、昭和の倍くらい平成という時代を生きていて、いまの年齢を考えると、人生の主な期間を平成に過ごした人生になりそうです。

 
 この記事を見かけたとき、「平成ベスト」として挙げられるような本なら、30冊のうち20冊、せめて半分くらいは読んでいるだろう、と高をくくっていたんですよ。

 でも、ランキングをみると、実際に読んだのは、10冊だけでした。
 この有識者が選んだランキングは、いわゆる「ベストセラーランキング」とは別の観点でもありますし。
 
 ベスト3、1位『1Q84』、2位『わたしを離さないで』、3位『告白』。
 あの、湊かなえさんのイヤミス
 と思ったのですが、町田康さんのほうでした。
 ああ、「本屋大賞」の最近のノミネート作のなかで、僕が唯一未読だった『告白』。その話をするたびに、多くの人が、『告白』こそ、読んでおくべき本なのに!と言ってくれたのを思い出します。

 ランキング的には、朝日新聞の「忖度」というか、アンケートに答えた有識者の「人脈」みたいなものも感じるのと、このアンケートそのものが、「平成」という30年間の「期間」に発売された優れた本を挙げるものなのか、「平成」という「時代」を象徴するような「平成らしい」本を挙げるべきなのか、わかりづらいところがあるのですよね。
 
 村上春樹さんでいえば、作品としては『ねじまき鳥クロニクル』のほうが、僕にとっては「より素晴らしい小説」なのですが、「『平成』を象徴する一冊」と考えるのなら、やはり、『1Q84』になるでしょう。時事ネタが織り込まれていたり、大ベストセラーになったりした、という話題性も含めると。
 『わたしを離さないで』も、ドラマとして、小説としての読み応えとともに、「生命を試験管から生み出したり、遺伝子をつくりかえたりすることができる時代の『生命倫理』を問う」という、現代的(あるいは平成的)な内容も含めての2位なのだと思います。
 『告白』は、湊かなえさんのほうが、「平成的」ではあるかもしれません。
 

 ちなみに、既読の作品は『1Q84』『わたしを離さないで』『火車』『銃・病原菌・鉄』『博士の愛した数式』『ねじまき鳥クロニクル』『コンビニ人間』『マークスの山』『もの食う人びと』『蒼穹の昴』の10作でした。
 

 この中で、感想を書いたことがあるものを御紹介しておきます。


第1位 1Q84
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第2位 わたしを離さないで
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第4位 火車
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第7位 銃・病原菌・鉄
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第8位 博士の愛した数式
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第11位 コンビニ人間
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 ある意味「朝日新聞らしい」ランキングなのと、エンターテインメント系はスルーされているのが寂しくもあるので、次は、僕自身の「平成の10冊」を挙げてみたいと思います。「30年という期間」ではなく、「平成という時代」を振り返ることができる本について書いてみたい。
 個人的には、「『平成』を象徴する本」として、最初に思いついたのは『電車男』なんですよ。
 僕にとっての「平成」は、「インターネットと個人主義(というか、家族主義の崩壊)の時代」だったので。


1Q84 BOOK1-3 文庫 全6巻 完結セット (新潮文庫)

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わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

告白 (中公文庫)

告白 (中公文庫)

電車男 (新潮文庫)

電車男 (新潮文庫)

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