いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

夏と花火と「わたしのはてなブックマーク」



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はてなブックマーク』20周年、おめでとうございます。

「おめでとうございます」と書きながらも、僕がその言葉を口にする白々しさに、複雑な感情もあるのです。
このエントリも、公開しようかどうか迷った挙句に、締め切りギリギリに公開することになりました。
書いたものを出さない、というのはもったいない、とも、つい、考えてしまって。


僕は『はてなダイアリー』ベータ版から『はてな』に棲んでいる文章書きなので(「ブロガー」とか自分でいうのは、いまだになんだか気恥ずかしいんです)、『はてな』のサービスの移り変わりもずっとみてきました。

はてなハイク』など、途中で終わってしまったサービスも少なからずあり、『はてなダイアリー』と『はてなブログ』が併存していた時代を知らない人も、『はてなブログ』ユーザーには、けっこういるのではないでしょうか。

僕ももう人生の折り返し点を過ぎた50過ぎの中年男になりましたが、あらためて考えてみると、人生の半分くらいをインターネットと共に歩んできた、ともいえますね。
たくさんお金を稼げたわけでも、人気ブロガーになれたわけでもなく、それでも、人と深く付き合うことが苦手な僕にとっては、環境が変わっても、自分のブログが常に「ここ」に存在するというのは、生き延びるための杖jになってくれたように思います。


正直なところ、『はてなブックマーク』に関しては、ネガティブな感情のほうが強いですし、それを何度も何度も自分のブログで書いてきました。


fujipon.hatenadiary.com

このエントリについたブックマークコメントがこちら。

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懐かしいブックマーカー、ブロガーの名前もあり、今でも現役の人もあり。


fujipon.hatenablog.com


こんなエントリもありました。
「炎上商法」だったら未曾有の大成功なんでしょうけど、僕は本当に嫌いだったんですよ、『はてなブックマーク』。大勢の人が、「ターゲット」を見つけると、ここぞとばかりにネガティブな言葉を投げつけ、その無責任さを指摘されると「俺たちはつるんでやっているわけじゃない、個人の感想です」「間違いを指摘してやっているだけだ」。

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はてなブログ』は「ネガコメがつきやすく、ネット初心者には怖いところだ」と言われていた時期もありました。

僕も長年ネットをやってきて、わかってきたこともあります。
他者へのコメントというのは、その人自身のこれまでの経験とか立場とか、そのときに置かれている状況とか気分によってかなり変動するもので、虫のいどころが悪いときに読んでしまったがために、あるいは、自分の「逆鱗」みたいなところに触れる内容だったために、きつい言葉を使ってしまう、ということもあるでですよね。
残念ながら、相手の状況はこちら側からは見えないので、見えている言葉だけで判断するしかない面もあるのですけど。


ブログをはじめて以来、僕はずっと「ブックマークのネガコメユーザー」に敵意を抱き、怨嗟のエントリを書き続けてきたのです。
今から思うと、「そんなにいちいち相手にするなよ」と当時の自分に言いたくなるし、結局のところ、ネットでの何かへのコメントというのは、そのときの気分やポジショントークであることがほとんどです。
中には、知らないことを教えてくれたり、今後の反省材料になったりするものもあるのですが、正直、僕のメンタルでは、受けるダメージのほうがずっと大きかったのです。


はてなブックマーク』がひとつのきっかけになった人の命が喪われる事件もありました。

僕はあのとき、『はてな』は、『はてなブックマーク』をやめるのではないか、と思ったのです。
近年の『はてな』という会社の収益の柱は、ブログサービスではなくなってきています。


近年のはてなの経営については、以下のエントリをご参照ください。

fujipon.hatenablog.com


はてなブックマーク』って、一昔前は、批判が集まる怖さとともに「とにかく3つブックマークを集めてホットエントリ入りするのが、たくさんの人に読んでもらえる攻略法」みたいな、ネットで成り上がるためのツールとしても認められていたのです。

少なくともいまの『はてな』にとっては、企業の仕事を請け負う際に、負のイメージを持たれるリスクやSNSが主役となったなかでの影響力低下も考えると、「やめてしまったほうが合理的なサービス」ではないか、と僕は考えています。
でも、それを「ネット文化の担い手としての矜持」で、続けているのが『はてな』なんですよね(ページビューによる広告収入も多少はあるとしても)。

僕は『はてなブックマーク』が悪い、と思い込んでいたけれど、2010年くらいに「はてなブックマーク」で僕が問題視していたことは、その後、SNSの発展や普及で、より広範囲の「ネット社会の問題」になっていきました。

ネットリンチ」や「炎上騒動」「レッテル貼り」「党派性」は、『はてなブックマーク』というツールと親和性が高かっただけで、人間の集団が持っている特性だったのでしょう。残念ながら、僕も同じ特性を持っていて、なるべくそれを表に出さないようになんとか生きています。
昔は「誰にも言えない自分の本音や秘密」を書いている人がたくさんいたネットが「公の場」になったのは、すごいことだなと感心するのと同時に「吐き出せなくなった言葉は、どこに行ってしまうのだろうか?」というせつなさもありますね。

はてな』がリスクの宝庫である「匿名ダイアリー」をずっと続けているのは、きっと、昔のインターネットの「残滓」を受け継ぎたいと願っている人たちが『はてな』に、まだいるからなのでしょう。

僕自身もブックマーカーのひとりです。
そして、「自分が好きなもの、人に紹介したいと思うもの」しかブックマークしないことにしています。少なくとも、この10年くらいはそうしています。



この話を続けていくと、限りなく長くなりそうなので、個人的にすごく記憶に残っている「ブックマーク」の話をして終わります(もう25日の23時15分なんですよ!読んでいる方にとっては「そんなの知るか!」でしょうけど)

fujipon.hatenadiary.com

僕は2007年に『はてな匿名ダイアリー』に書かれた、「ある個人史の終焉」というエントリが、すごく印象に残っているのです。
「子どもができる、生まれる」ということに対して、僕自身がすごくセンシティブな時期に読んだこともあると思います。
ブックマークして、何度も読み返していたのですが、このエントリは大きな反響があり、多くは好意的なものだったと記憶しているのですが、中には呪詛や批判の言葉も混じっており、結果的に、このエントリは「非表示」となりました。
不安定な時期に、そんなブックマークを当事者が読んでしまうことへのリスクも考えたのかもしれません(今だったら、「釣りだった?」的なことも、ちょっと想像してしまうのですが。世知辛いインターネットです)。

でも僕はずっと、『はてなブックマーク』に助けられてもきたんですよね。
ブログの営業的に、というのはもちろんなのですが、このエントリへのブックマークコメントは、今でもときどき読み返して、ひとりで当時のことを思い出してしんみりしたり、ニヤニヤしたりしています。


fujipon.hatenadiary.com
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僕はダメな親で、自分の親の愛情に向き合うことができなかったし、自分の子どもに対しても、申し訳ないことばかりです。
でも、このエントリと、あのとき、ブックマークコメントで温かい言葉をかけてくれた人たちには、すごく感謝しています。おかげで、なんとかここまでやってこられた。そんな気がしています。
子どもたちは、息災です。

誰かが思いつきで放った言葉が、相手を致命的に傷つけることもあるし、誰かの心を温め続けることもある。


はてなブックマーク』も、SNSも「道具」でしかない。
そして、世の中にはいろんな人がいて、いろんな状況下で、短い言葉しか使えないなかで、やり取りをしている。


「思いは言葉に。」
はてなブログ』のページの一番上に、書かれている言葉です。


はてなブックマーク」20周年、おめでとうございます。「思いを言葉にすること」の意味と意義を守り続けてきた人たちに、感謝を込めて。


(⇑ この上に「わたしのはてなブックマーク」にまつわるエピソードを書いて投稿してください)


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