昨夜、こんな記事をみて、いろんなことを考えていました。
そもそも、伊集院光さんは反省すべきなのか、反省すべきなら、それは何に対してなのか。
プロの喋り手として、犯罪者を擁護する発言を公共の電波に乗せてしまったことなのか、自分に人を見る目が無かったことに対してなのか。
この大久保佳代子さんの「ちょっと訂正いいですか?」というのも読むと、高橋さんという人は、少なくとも芸人仲間たちからは愛され、信頼されていたのだな、というのが伝わってくるんですよね。
伊集院光さんは「自分の人を見る目の無さを思い知らされた」と仰っていますが、僕も40年以上生きてきたのだけれど、生きれば生きるほど「人ってわからない」と痛感させられます。
みんなけっこう「自分は人を見る目がある」って思っているのかもしれないけれど、本当にそうなら、日本で3組に1組も離婚するわけがない。
伊集院さんの発言に関しては、「伊集院さんも被害者」なのではないか、と思うのです。
その一方で、もしラジオで伊集院さんが「僕も騙されました。被害者のひとりです」と発言したら、間違いなく「炎上」していたはずで、伊集院さんは「ネット時代の民意の機微」を熟知している人だなあ、と、斜に構えた「感心」もしてしまったんですよね。
こういう「真摯さ」も含めて「芸」だと言えなくもない。
ネット社会というのは、他人をけっこう簡単に世界に繋がっている場所で「評価」「断罪」しやすくなっているのです。
そして、責任の所在は、ものすごく曖昧になってしまっている。
ごく少数のフォロワーしかいない一般人が「○○銀行が潰れるらしい」とツイートしたのが、有名人の目に留まってリツイートされ、多くの人がそれを拡散して大騒ぎになったとします。
もちろん、そのデマを生んだ最初の人が「責任者」として断罪されるのだろうけれど、それを信じて(あるいは面白半分で)リツイートした人たちは「無罪」なのか?
スルーされるはずのデマだったのに、ある有名人がリツイートしたおかげで多くの人に読まれたとしたら、その有名人は「被害者」なのか、「加害者」なのか?
芸能人や報道関係者、文筆関係者などは、「伝えること」でお金をもらっている人たちですから、リツイートも含めて、責任があると僕は思う。
でも、「ネット有名人」レベルだったら、どうだろうか?
最初に発言した人は「自分も噂として聞いただけ」だし、「こんなに広めるほうが悪い」と考えるかもしれない。
広めた人たちも「騙すほうが悪い」と思うかもしれない。
ネットでは「拡散」することが簡単になったけれど、それは、すごく危険なことでもあるんですよね。
騙されるだけではなく、誰でも「加害者」になるリスクがある。
「常に自分は被害者」だとみなしていたり、「みんなが悪いと決めてしまったものを尻馬に乗って叩く」ような人もいます。
それが「ネット時代に自分が傷つかずに済むための処世術」なのです。
今回の高橋容疑者の事件についてのこんなまとめを読みました。
momoclonews.com
個人的には「頭の中で妄想すること」は罪でもなんでもなくて、「現実で他人を傷つけること」はアウト、という線引きは、けっこう明確なものだと思うのです。
それはそれで、「じゃあ、妄想を言葉にして世の中に撒き散らすこと」はセーフかアウトか、みたいなことも考えずにはいられないのですが。
このサイトのなかで紹介されていた、『ももクロ』のファンたちからみた、高橋容疑者の姿を読んでいて、僕はまたいたたまれなくなりました。
なんだかなあ。高橋さんが性風俗店で風俗嬢に「申し訳ない」から性交渉できなかったし風俗店には行かない、って話を思い出す。自分が直接的に女性を傷つけたり嫌がらせたりすることを過度に嫌って恐れていた人が、歪みに歪んでこういうことになってしまったのはあまりにつらいし悲しい
— イリ (@momk01) December 26, 2015
私は女だけど、キンコメ高橋さんに対してはもう嫌悪より悲しみしかない。父親のうん千万の借金肩代わり母親の自殺痴漢冤罪世間の嘲笑や侮蔑に耐え続け、それを死にそうになりながら笑いに変えて、不幸だらけの人生をよくここまで生きてきた、私も石を投げることはできない
— イリ (@momk01) December 26, 2015
特定の誰かの尊厳を滅茶苦茶に傷つけるような犯罪だったら完全に嫌悪感と失望しかなかったんだろうけど、高橋さんのお金で仕事をされている性風俗の風俗嬢に「申し訳ない」と思う性的倫理観や嫌がられたくない傷つけたくないっていう意識を思うと、なんかもう脱力する、虚無感がすごい、ただただ悲しい
— イリ (@momk01) December 26, 2015
この犯罪者がキングオブコメディ高橋さんじゃなきゃ、絶対にこんな気持ちにはなってない。だから高橋さんを知らない人がドン引きするのも面白がって中傷するのも理解できないわけがないし、そりゃまあ当然そうなるわなって感じ。
— イリ (@momk01) December 26, 2015
高橋容疑者がやったことは犯罪だし、被害者には経済的・精神的な苦痛を与えているはずです。
けっして「しかたがない」で済まされることではない。
でも、この高橋容疑者の「風俗嬢に対する潔癖さ」を読んで、なんだかとてもやるせない気持ちになって。
僕自身、ずっと異性(女性)が苦手で、話しかけるときも緊張ばかりで、なかなかうまく付き合えず……という時期が長かったのです。今は結婚もしているし、マシにはなったはずなのだけれど、あの頃の「自分なんか、誰にも相手にしてもらえないんじゃないか」という痛みの記憶は、まだ残っています。
制服フェチ、女子高生好き、というのは、「ノーマルではない」けれど、それが「生身の女性とうまく接触できない、相手を『聖域』みたいにしてしまって、近づけない」、でも「その煩悩を完全に超越できるほど強くない」という葛藤の末に、ああいう「制服を盗む」という行為に向かってしまったのだとしたら、なんて痛ましいのだろうか。
「普通に恋愛できる」「普通に異性と接触できる」というのは、「普通」の人にとっては、あたりまえすぎて疑問を抱く余地がないこと、なのだと思います。
誰しも最初は緊張もするし、そうそううまくいくものじゃない、というのも事実だけれど、大部分の人は、そのハードルを超えられるし、超えてしまうと「みんなそういうものだ」と考えてしまう。
だからといって、「レイプするよりマシなんだから、制服泥棒くらい許してやれよ」というわけにはいかないのだけれども。
「女性として生きることのリスク」みたいなものを描いた本をたくさん読みました。
ごく普通に生きている女性が、たった一回の性行為で、大きく人生が変わってしまうことは、けっして少なくない。
朝、「おはよう」って、家を出ていった女性が、帰り道でレイプされてしまうことだってある。
女子学生が、合コンでお酒を無理に飲まされて「合意のうえで」男と寝てしまう。
僕は男なので、そういう「一度踏み外してしまうことのリスク」って、正直、若い頃から、考えたことがなかった。
僕自身、女性に対するコンプレックスが強かったので、そういうことの加害者にもならなかった。
ただ、「男だけの空間」になると、「アイツを酔わせてヤった(セックスした)」みたいな話は、悪事ではなく、「武勇伝」になりがちなのです。
「ゲームとして」考えている人さえ存在する。
向こうもそれを望んでいた。それも人生経験だろう。まあ、ものの弾みだ……
そういうのも人生の一面なのかもしれません。
そこから発展する恋愛っていうのもあるから、一概に悪いとも言えない。
それでも、「ずっとモテなかった僕」は、そういう話に「乗る」のが苦痛でした。
もちろん、女性側にも「女だけの空間」での符牒、みたいなものがあるのだとは思う。
あけすけに男を値踏みしたり、性に関する話もしているのかもしれません。
どちらかの性が加害者であり、被害者であるというのは「違う」のだろうけれど、女性側のほうが、無理矢理に性行為をされること、それに伴って身体や心を傷つけられること、妊娠することなど、「リスク」が高いのは事実でしょう。
今年、「恋愛工学」っていうのが流行りましたよね。
恋愛は駆け引きであり、テクニックを使えば、いろんな女性を「モノにする」ことができる、と謳っていました。
実際にそれで「うまくいった」人がいたからこそ、あれだけ話題になったし、本も売れた。
でも、そういうふうに「異性を一時的な快楽とテクニックを試すための道具」として消費するのは、「無罪」なのだろうか?
「合意のうえ」だし、「大人どうし」だから、刑罰を食らうような「犯罪」ではないのはわかる。
それでも僕は、「そういうのは自分にとっては愉しくないだろうな」としか思えない。
こういうのって、「綺麗事」みたいだし、実際にそうなのかもしれないけれど、僕はそういうふうにしか考えられない生き方をしてきたし、それは急には変えられない。
そもそも、高橋さんが風俗嬢に「申し訳ない」と思っていたとしても、風俗嬢側としては「こっちは仕事としてやっているんだから、そんな同情なんて迷惑」でしかないのかもしれない。
それこそ、「同情するなら金をくれ」だ。
相手を選べばいい、のかもしれなけれど、それこそ「人ってわからない」ものです。
結局のところ、こういう問題というのは、人それぞれの「許容範囲」みたいなものがあまりに違いすぎて、「他人に迷惑をかけたかどうか」という基準で判断していくしかないのでしょうね。
でもさ、「ゲームとして一人の女性と寝て致命的に傷つけるのと、制服600着を盗むのと、どちらが重い罪なのだろう?」とか、僕は考えてしまうのです。
前者が「犯罪者」として裁かれることはない。
むしろ女性のほうが「油断しているからだ」と責められることすらある。
女性が同性を責めることもある。
そういう「メジャーな男の性欲」みたいなものに対しては、世間はけっこうおおらかなんですよね。
それは、良いとか悪いとかじゃなくて、「現実」です。
自分でも何が言いたいのかよくわからくなってきたのですが、そういう世の中で生きていくというのは、「マイノリティ」にとっては、けっこうややこしいというか、めんどくさいのだよなあ。
……というほど僕自身はマイノリティでもなくて、中途半端に、ただ「いたたまれない」と呟いているだけ、なのだけれども。
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