うーむ。
率直に言うと、お盆明けにナゴヤドームで3連敗した時点で、「今年はダメかな……」と思ってはいたのですが、上位3チーム(ヤクルト・巨人・阪神)も、どこかが突き抜けるほどの強さもなく、9月8日からの起死回生の5連勝(2引き分けを挟む)などもあって、なかなか諦めきれなかったのですけどね。
9月18日からの「勝負の12連戦」で、いきなり最下位・中日に連敗スタートで、ここまでわずか1勝しかできず、6敗。それも、得点は、1点、2点、4点、3点(勝ち)、2点、0点、0点。いやほんと、今年のカープ打線は酷いにもほどがある。
4月くらいまでは、「打線は水ものっていうし、まあ、そのうち打ちまくる時期も来るだろうよ」って思っていたんですけどね。もしかしたら、12月とか来年1月くらいに「打ちまくる時期」がやってくるのかな。残念ながら、ペナントレース終了には間に合いそうにありませんが。
カープファンにとっての至福の瞬間は、なんといっても、去年の年末の黒田博樹投手の復帰が発表されたときでした。
今年いっぱいでメジャーリーグへの挑戦が既定路線といわれている前田健太投手とのダブルエースに、2年目の飛躍が期待された大瀬良、ずっと前から追いかけていたという新外国人の左腕ジョンソン、この人が5番目に名前が挙がるなんて贅沢だなあ、という野村祐輔に、復活を期す福井。
新守護神のヒースに、去年の前半戦を支えた一岡が復帰し、今村、中崎もいる。
これは、24年ぶりに「優勝」できるのでは……
「カープ女子」など、カープブームが巻き起こり、結果的に、観客動員数は球団史上最高を記録しています。
こんな豪華な投手陣がいて、丸、菊池という日本代表クラスの野手もいて、なぜ、カープはこんなことになってしまったのか?
ネット上で僕がみている範囲のカープファンサイトでは、緒方孝市監督の采配への批判が目立ちます。
ただ、長年カープを見つづけてきた僕からすると、ネットでファンの「評価」が可視化されるようになってからの、山本浩二、ブラウン、野村謙二郎という歴代の監督はいずれも「史上最低」とか「ダメ監督」「ヤメロ」などと言われていたわけで、結局のところ、誰が監督をやったら勝てるのか、誰がやっても同じなのではないか、というような気もしてくるのです。
誰を出しても打てなきゃ、采配云々の問題じゃないしね。
今年に関しては、開幕前にエルドレッドが怪我で離脱し、カープ史上最高年俸の外国人野手として期待されていたグスマンも開幕直後に怪我をして長期離脱。ロサリオは虫垂炎で復帰に時間がかかり、緊急補強したシアーホルツは最初は全く打てず、ちょっと打ち始めたら熱中症やら背中の張りやらでフル出場できず。
そもそも、左打者だからといって、相手が左投手だと外されてしまう程度の「助っ人」ってどうなのか、と。
丸も菊池もバッティングに関しては期待を裏切ってしまい、唯一の「予想以上」は、阪神から帰ってきた新井さん。
この人がいなかったら、どうなっていたことか……しかし、後半戦になると疲れもあるのか新井さんも打てなくなったのですが、最初は「戻ってきても使わない」みたいなことを言っていた緒方監督も、新井さんに固執して傷口を広げてしまいました。
そりゃ、ファンに人気があるし、外し難いのもわかるんだけどねえ。
そもそも、カープの外国人野手は、そこそこ守備走塁も良いシアーホルツを除けば、みんな「ファーストか外野しか守れず、外野を守らせるとすると外野守備がかなりリスキーになる」という、似たような選手ばかりなんですよ。
で、新井さんがファーストを占めてしまうと、さすがにライトレフトの両翼に「グスマンとロサリオ」というわけにはいかず(って、実際にやって、とんでもないことになった試合もあったんですが)、守れない外国人選手は、外野にせいぜい1人しかレギュラーでは出せない。それでも、エルドレッドが後半戦はときどき打ってくれたから、まだこの順位におさまっているわけですが。
他の野手は「全く打たない」あるいは「大差で勝っているときだけ、帳尻合わせのように打つ」選手ばっかり。
ちなみに、今シーズンのカープは、チーム防御率は2位、チーム総得点数は3位だそうで、データだけみれば、なんでこんなに勝てないのか、と言いたくもなります。
まあ、すべてを緒方采配のせいにしてしまえばラクなのかもしれないけれど、前半戦のエルドレッドをはじめとする怪我人が痛かったのは事実だし、抑えを予定していたヒース、セットアッパー候補の一岡をはじめとするリリーフ陣が総崩れではありましたし、運も悪かったのかもしれないけどさ。
それにしても、何かあったら、先発枠を奪い取るはずだった、九里、武内、篠田、中村恭平、戸田とか、もうひどい、あまりにひどい。出てくれば確実に5回4失点以上で、しかも、一度失敗したらすぐに二軍行き。そりゃ、精神的にもきつかろう。
緒方監督ら首脳陣は、「まだ代わりがいる」と、とっかえひっかえしたのかもしれませんが、その結果、どんぐりの背比べになってしまい、先発投手として一本立ちした人は誰もいなかった。
野村祐輔とかをみると、なんのかんの言っても、プロで10勝したことがあるようなピッチャーは、二軍のエースとは大きな差があるものだな、と痛感します。
今年の野村は、良いときが少なかったのだけれど、それでも、「調子が良ければ、それなりに抑えられた」のだから。
ドラフト2位で、「なんでこんな大学でもまともに投げていないピッチャーを指名したんだ!」と非難囂々だった(というか、僕も文句言ってました)藪田投手は、大器の片鱗をみせてくれて、プロのスカウトの眼力ってすごいんだな、と感心しましたけど。
とはいえ、5回4失点グループなんだよな、藪田も。
冷静になって考えると、黒田復帰によるお祭り騒ぎの陰で、去年の後半戦で露呈された「リリーフ投手総崩れ」と「貧打」に関していえば、ほとんど対策がなされていなかったんですよね。
ドラフトも1位野間選手は、守備走塁に秀でた、良い選手だとは思うのだけれど、カープには似たような「俊足巧打型」の選手はたくさんいたのです。
今年が優勝の最大のチャンスと考えていたのなら、腑に落ちない指名ではありました。
まあ、1位で有原投手を引き当てていれば、ねえ……
「黒田」という目玉にばかり目がいって、カープというチームの本当の問題点、リリーフ投手の質・量の不足と中心となれる打者の不在を見ようとしなかった。
丸や菊池も、去年以上に今年は打てる保証なんて、どこにもなかったのに。
そもそも、チームの力も、去年がピークだったのではないか、という気もしてきます。
3位(5割以下)、2位と僅差の3位(貯金あり)、とくれば、今年は2位、あるいは優勝!とか考えてしまいますが、チームの力のピークが、常に「優勝」とは限らない。
その戦力不足を、緒方監督の采配が助長してしまいました。
残念ながら、緒方監督は、選手を「適材適所」で使うことができなかった。
もちろん、期待に応えられない選手の実力不足はあると思う。
でも、「選手が力を発揮しにくい起用」が頻繁にみられていたのは事実です。
最近の例として、9月22日のヤクルト戦(神宮)について書いてみます。
この試合、首位ヤクルトとカープのゲーム差は4.5。
残り試合数を考えると、かなり厳しい数字ではありますが、この2連戦で連勝すれば、まだ可能性はある。
ヤクルトの先発は石川、カープはローテーションの谷間の戸田。
戸田先発については、ローテーション的にも、まあしょうがないなあ、というところです。
この先発の顔合わせの時点で「今日は厳しいか」というのが本音ではあるのですが、それでも、まだ優勝の可能性も残っている試合なので、一縷の望みを託して観戦していました。
初回、戸田はまずい守備に四球などもあり、いきなり2失点。まあ、こんなものだろうな、と。
しかし、2回の表、エルドレッドがホームランを放ち、1−2と1点差になりました。
2回の裏、戸田はまた四球連発で、1死満塁にされながらも、運良く(としか言いようがない内容で)無失点にしのぎます。
そして、3回の表、戸田に打順がまわってきました。
2回の裏、0点で抑えたのは奇跡だったのだから、この奇跡を活かすためには、ここで代打を出して、3回からはピッチャー交代、だよね。
……9番、ピッチャー・戸田。
えええええええっ!!
2回までで、首位ヤクルトと1点差なんですよ。
もちろん不利ではあるけれど、まだ絶望すべき状況ではない。
連戦でリリーフがきついのは百も承知だし、大瀬良やヒースを3回から投げさせろ、とは言わない。
飯田でも江草でも、監督がこれまで「敗戦処理」だと見なしてきたピッチャーでも、少なくとも今日のこのフラフラの戸田よりはマシな可能性が高い。
このままだと、ダラダラと点を失ってしまうのは目に見えているのに、なぜ続投なの?
いや、緒方監督が、心を鬼にして、「今日はリリーフ陣休養のために、戸田を生贄にして最後まで、何球でも投げさせる」と覚悟しているのなら、話は別ですよ。
でも、結局戸田は4点を失い、ピンチを残して降板してしまった。
なぜ、勝負がついてしまってからの継投になったのか?
勝負も、リリーフ投手のモチベーションも失ったあとでの、まさに敗戦処理。
中4日で40歳の黒田を投げさせてでも欲しかったはずの「1勝」を、なぜ、ローテーションの谷間だからといって、簡単に投げ捨ててしまうのか。
今シーズンの緒方采配をみていると、「選手にできないことをやらせようとして、結果を出せなければ『無能』の烙印を押している」ように感じました。
野村祐輔というピッチャーがいて、彼はそんなに球威はないけれど、丁寧なピッチングを心掛けていれば、5回、100球くらいまでは、そこそこ抑えることができる試合が多いのです。
ところが、緒方監督は、「ちょっと相手打線にタイミングがあってきているな」「球威が落ちてきているな」と観ている僕にもわかるような状況でも「これまで抑えているから」と続投させ、野村は大量失点してしまう。
そこで「アイツは粘りがない、ダメだ」みたいな結論を出しているようにみえるのです。
そりゃ、ピッチャーがみんなマエケンとか黒田とかジョンソンみたいに「相手を完璧に抑えて、完投能力もある」のなら、苦労はしませんが、もちろん、そんなわけはない。
5回までで降板させれば、「5回無失点」と「好投」になったはずのピッチャーを、あえて、打たれるまで続投させて、「7回4失点のダメピッチャー」にしてしまう。
「5回までなら抑えられるピッチャー」は、「完投できないダメな選手」なわけじゃなくて、「5回まで抑えてくれる、貴重な戦力」なんですよ。うまく起用できれば。
ソフトバンクの工藤監督の手腕が褒めそやされているのを、僕は「あの巨大戦力があれば、誰だって優勝できるだろうよ」と苦々しく感じていたのですが、先日、工藤監督に地元のラジオ局が取材したのを聞いて、考えをあらためました。
工藤監督は、リリーフを使う際に、なるべくプレッシャーがかからないように、ピンチになってからではなく、回の頭からの登板になるようにしていたし、選手のコンディションにも気を配っていたのです。
同じリリーフでも、ノーアウトランナー無しからと、ノーアウト1塁2塁からとでは、かかるプレッシャーは段違い。
緒方監督の起用は、選手を「見切る」タイミングが遅れることによって、ピンチを拡げ、リリーフも投げにくくしていたのです。
もちろん、ソフトバンクとは根本的な戦力差はあるんだけれど、選手を必要以上に消耗させる起用があまりにも多かった。
前述の、ドングリの背比べのダメ先発候補たちも、もうちょっと腰を据えて何回かチャンスを前半の余裕がある時期に与えておけば、一人くらいは化けたかもしれません。
「適材適所」って、「それぞれの人に、得意な仕事をやってもらう」ってことですよね。
仕事をあてはめるだけで良いほど有能な人材が揃っていれば言うことありませんが、なかなかそうはいかない。
ある人が「ここまではできる」「これ以上は無理」の見極めって、ものすごく大事だし、それこそが指導者の腕の見せどころなのです。
うまくいくと自信もつくし、やる気も出る。
毎回、失敗するところまでやらせて「お前はダメだ」と言われれば、自信を失い、萎縮してしまう。
勝負所で、どうしてもバントを成功させたい場面なら、バントが得意な選手を代打で出せばいいのに。
今年は、他球団もひたすらモタモタしていたし、本当にチャンスだったと思うんですよ。
期待が大きすぎただけに、カープファンの僕にとっては、失望と絶望、そして怒りの年となりました。
もちろん、緒方監督が、すべて悪いわけじゃない。
大瀬良のセットアッパー、中崎のクローザーなんて、僕は無謀だと思っていました。
結果的に、なんとか最後のほうまでチームが5割くらいで持ちこたえられたのは、この配置転換が奏効したからでしょう。
ある種の信念というか、同じことを続けられる執念みたいなものが、うまく働くこともある。
そもそも、選手層も薄かった。
ヤクルトみたいに、誰かが怪我をしていても、必ず他の選手が出てくるようなチームでもなかった。
ただ、緒方監督に「できないことを無理にやらせない」采配がふるえていたならば、もう少しマシな結果になっていたのではないか、と無念でなりません。
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