いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「時短営業のコンビニを成功させる方法」は存在するのか?


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 このエントリを読んで、僕は考え込んでしまいました。

皆さんなら時短営業のコンビニを成功させるためにどういう営業や戦略が有効だと思いますか?


 そんなのいくらでもやりようはあるんじゃない?


 そう思ったのですが、難しいよねこれ。

 
 僕がまず思い浮かべたのは、身近にある「時短営業でも、うまくいっている(であろう)コンビニ」だったのです。
 それは、大きな病院の中にあるコンビニ。
 病院内のコンビニって、早朝や深夜は閉まっていることがほとんどです。働いている人間からすれば、当直中とかに開いていてくれればいいのに、とは思うのですが。
 病院内コンビニというのは、朝やお昼にはすごく混雑することが多いんですよ。
 なにしろ、患者さんやその家族、病院の職員など、そう簡単には病院外に出られない顧客をたくさん抱えているので。
 逆に、早朝や夜間は患者さんも気楽に買い物に来ることはできないし、スタッフの人数も減る。外部から来る人も少ない。
 人が多い時間帯と少ない時間帯が明確で、対象者は限られているけれど、その人たちには、他に選択肢がほとんどない。
 おそらく、こういう環境でなら、コンビニの時短営業は、うまくいくのではないでしょうか。
 
 同じようなことは、駅の中のコンビニにも言えそうです。
 駅が閉まっている時間帯は、コンビニも閉まっていることが前提になっています。
 お客さんは、一度改札口をくぐってしまうと、そこから外に買い物に出るのは面倒ですし。

 あと、田舎には、けっこう、「お客さんがほとんどいないように見えるのだけれど、なぜか細々と営業している時短営業のコンビニ」が、ちらほらあるんですよね。
 セブンイレブンとかローソンとかじゃなくて、デイリーヤマザキとか。
 たまに入ってみると、置かれているのはお菓子とか飲み物、雑誌が多くて、お昼時でも弁当コーナーには商品がほとんどない。
 仕入れを絞って、僕が子どもの頃に近所にあったような、「いろんなものが売られている、たばこ屋+駄菓子屋+α」みたいな店も、田舎では少数ですが「コンビニ」として生き残っているのです。
 本部のマージンが少なくて済むチェーンとか、仕入れを「売れて長持ちするもの」に集中することができるとか、条件さえ合えば、「小商い」で、「時短営業」でもやっていくことが可能なようです。
 もっとも、そういう店がこれからも生き残っていけるか、と問われたら、「そもそも、なんで今も生きているのかわからない」という感じではあるのですが。

 冒頭のエントリのコンビニ(たぶんローソン)の時短営業が、なぜうまくいかなかったのか、については、僕はその店のことは知らないので、断定することはできないのですが、良い場所みたいなので、地代(家賃)が高すぎた可能性はあると思うんですよ。
 僕は田舎のコンビニに行くことがほとんどなのですが、もともと自分の土地だったところでコンビニをやるのと、家賃を払ってやるのとでは、コストが違いすぎます。
 そして、「時短営業だと昼間の売上が落ちる」ということも踏まえて考えると、家賃というのは、24時間営業でも時短営業でも同じでしょうから、かなり不利な条件になるはずです。
 
 個人的な見解としては、ローソンのお弁当って(おにぎりはさておき)、セブンイレブンに比べると、けっこう「弱い」感じもするんですよね。
 最近、僕の近所のローソンでは、店内キッチンがある店が増えてきているのですが、裏を返せば、これまでのローソンのお弁当では、期待していたほどの集客が得られなかった、ということなのだと思います。
 僕にとってのローソンは、SBIネット銀行のカードをATMで使える、からあげクンがなんとなく食べたくなることがある、というのが選ぶ理由で、それ以外は、「セブンイレブンとどちらか選べるなら、まずセブンイレブン」なんですよ。
 ごめんローソン。


 ちょっと話が逸れてしまいましたが(いつものことだけど)、基本的に、人は、24時間営業のコンビニと時短営業のコンビニでは、24時間営業のほうに安心感を覚えて「常連」になりやすい、ということなのでしょう。
 冒頭のエントリでは、こんな記事も紹介されていました。


gendai.ismedia.jp


 いつでも開いている、というのは、商品の入替も頻繁に行われていて、なんとなく商品が新鮮なイメージもある。
 一度「閉店しているところ」に遭遇すると、なんとなく足が向きにくい、というのもあるのかもしれません。

 あと、「広々とした店内」とか「中でゆっくりしている人たち」の存在は、コンビニとしては、かえって入りづらさにつながるのかもしれない、という気がしました。
 これは、なかなかうまく説明できないし、僕がそう感じる、というだけの話なのかもしれないけれど。

 
 僕もこれを読んで、結局のところ、コンビニの時短営業って、限られた条件(前述したような、閉じられた場所とか、近所の人のための、よろず屋化したマイナーチェーン店とか)でしか、成り立たないのではないか、と思ったのです。
 
 多くの人は、インターネットの記事を読んだときは、宅配便の再配達の多さやコンビニ経営者、病院の当直医の疲弊に共感し、「彼らをなんとかしてやってくれ!」と思うけれど、自分自身が利用者になったときには、「再配達料を求められる宅配便業者」よりも、「再配達無料」の業者を好ましく思うし、夜中のコンビニに「開いててよかった」とホッとするはずです。
 救急病院にだって、「昼間は仕事で来られないから」と、夜中に風邪薬を処方してもらいに行く。

 「社会」に対する怒りや憤りと、個人的な事情や利便性は、多くの場合、切り離されてしまいます。
 働いている人たちにとって、どんなに「ブラック」であっても、24時間営業のコンビニと時短営業のコンビニが同じ地域で勝負すれば、基本的に勝つのは前者です。
 「働いている人たちのために、時短営業にしよう」という「意識の高いコンビニ」だから、そちらを選ぶ、というお客さんは、ほとんどいないはず。
 
 正直、コンビニの時短営業がもっと広まり、うまくいくためには、コンビニ業界全体が足並みをそろえて自主規制するか、なんらかの法的規制が行われるしかないのでは、と僕は思います。
 個性的な品ぞろえで対応しようとするのは、「コンビニ」であることのメリットを失うリスクもあるでしょうし。
 ただ、コンビニの24時間営業には、消費者にも、その時間にしか働けない人にとってもメリットはあって、すべてが「悪」とも言い切れない。

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 こういうデータをみると、本部にこんなにロイヤリティを取られるのであれば、よほどの売り上げがないとコンビニという業態を続けていくのが難しいのは事実なんですよね。
 個々の店の努力よりは、本部がロイヤリティを下げるほうが、救われる店は多くなると思われます。

 正直、僕の発想では、「自由競争下で、時短コンビニを成功させる」という方法が思いつかなかったのです。
 僕も、誰か良い方法を思いついたら、教えていただきたい。

 病院内などの「顧客を限定したコンビニ」が増えてきたというのも、これまでの基準では、もう、新しく出店できる場所がなくなってきているから、ではないかと。
 これだけ人手不足が深刻でも、コンビニ業界のマーケティングの専門家たちが知恵を絞っても、「時短営業は難しい」。
 僕が思いついた解のなかで実現できそうなのは、アマゾンがアメリカで実験的にやっているような「無人コンビニ」くらいなんですよね。それでも、商品の陳列などはすぐに無人化できるとは思えないし、防犯面での不安もある。
 シンプルに「コンビニはもう飽和していて、新規参入は難しい。ましてや、時短営業なんて」としか言いようがないのかな……


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