いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

某中年男性、BSプレミアム『ベスト・アニメ100』の結果に困惑す。

昨日、5月3日、NHKプレミアムで、こんな番組が放送されていました。
www.nhk.or.jp


この結果をみて、僕は正直「これが、いまの『ベストアニメ』なのか……」と思った、というか、驚いたというのが率直な感想です。


念のため、投票方法も御紹介しておきますね。
誰を対象に、どんな集計をしているかで、こういうのは大きく結果が左右されると思うので。

「ベスト・アニメ100」は、2017年に日本でアニメが初めて公開されてから100周年を迎えることを記念したNHKの企画「ニッポンアニメ100」の一環として実施。特設サイトで1910~2010年代の作品の中から一日3作品(同一作品は無効)投票できる。


正直、このベスト10に選ばれているアニメ作品、僕は1本も観てません。
勉強不足で申し訳ない。でも、勉強するために観るようなものじゃないしなあ。
だから、「なんでこんな新しい作品ばっかりなんだよ!」とか言いたいんだけれど、それは昔の人間の怨嗟の声でしかないのだろうと諦めてもいます。
なんのかんの言っても、最近『ガールズ&パンツァー』と『GANTZ:O』くらいしか観てないものなあ、アニメ(どちらもすごく面白いです)。
そういえば、映画館で『夜は短し歩けよ乙女』も観たな。そういえば『君の名は。』とかスルーなのかこれ?(57位に入っていました)
TIGER & BUNNY』って、『おさるのジョージ』とか『ひつじのショーン』みたいなやつ? あっ、『しまじろう』か! 虎も兎もいるし(たぶん全然違う)


ちなみに、僕がよく知っている作品のなかでも最上位は『銀河英雄伝説』(13位)でした。うむうむ、よくがんばったねユリアン。なあに、順位なんて気にすることはないさ、われわれの祖先は、よくわからないけど10億年ぐらい前は、 地球の原始海洋のなかでクラゲみたいにぷかぷか浮かんでいたらしいね。
14位にエヴァンゲリオン、17位『機動戦士ガンダム』。


……ものわかりの良いオッサンを演じてみるつもりだったけど、どこの虎の穴か兎の骨かわからんような作品が、『銀英伝』や『エヴァ』や『ファーストガンダム』や『ドラえもん』の上にいるのは、解せん!


この手の企画のたびに言われることなのですが、一般視聴者を対象のWEB投票で、決めたルールに厳格に集計すると「最近の作品が上位にきやすい」のは間違いないと思うのです。
いやまあそりゃそうだよね。いまの中高生でも『エヴァ』くらいは観ているかもしれないけれど、『ファーストガンダム』や『銀河英雄伝説』は未見の人も多かろう。
『銀英伝』って、最初は宅配ビデオのOVA(オリジナルビデオアニメ)として発売されていたんですよ。で、家にビデオテープで送られてくるのです。
1話2500円×26話(第1期)で、65000円(だったそうです。当時中学生くらいだった僕は買えなくて、のちにレンタルビデオで観ました)。


このランキングをみながら、僕はこう考えていたのです。
本当に「ベストアニメ」を決めるのであれば、「熱心に毎日投票していた人たちの作品への熱意や愛着がその順位に反映されすぎるのは、問題があるのではないか」と。
WEB投票にあまり慣れていなかったり、積極的ではない、オールドファンの意見は軽視されるシステムで、「ベストアニメ」を決めてほしくない。
……とは言うものの、「これが、今、アニメを熱心にみて、応援している人のランキングなんだ!」と言われると、それはそれで尊重すべきなんだろうな、とも思い直しているのです。
少なくとも、今、いろんなコンテンツを買い支えている人たちの意見は、こういうものなのだという前提に立たざるをえない。


「昔の名作」は僕にとってはものすごく大切なものだけれど、それで最近の作品を否定するのは、ほとんど水田わさびさんの『ドラえもん』を観ていないにもかかわらず、「やっぱり『ドラえもん』は、大山のぶ代さんの声じゃないとね」と訳知り顔で語っている人みたいなものだから。


……とはいえ、人というのは、「自分が体験・経験してきたものこそ、素晴らしいものである」という呪縛から、なかなか逃れることができない。
僕にとっての昔のゲームとか、まさにそうだものなあ。


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最近、『はてな』で「傑作とは何か」ということが語り合われていて、大変興味深く読んでいました。
僕個人のスタンスとしては、「個人的に大好きな作品」がそれぞれの人にあるのと同時に、「多くの人に支持され、また、影響を与えた『マスターピース(傑作)』というのは存在しているし、そうあるべきではないか」と考えています。
スターピースだから好きじゃないといけない、というつもりはなくて、「その時代を語るときの「定点」というか多くの人の「共通の基盤」となるような作品」は必要ではなかろうか。
最近の純文学やエンターテインメントの作家が書く小説では、『ドラえもん』とか『ドラゴンボール』『スラムダンク』の有名な場面やセリフって、注釈無しで使われています。
そういうふうに「同世代人の常識」になっていくような、みんなが「とりあえず知っていて、好きか嫌いかを語れる作品」みたいなのが「マスターピース」なんですよ、たぶん。
でも、映画とかだと、「いちばんヒットしている映画」って、わりと、何年かしたら、すぐ忘れてしまうような作品が多いんですよね。とくに邦画のドラマの延長みたいなやつだと。
本でも、『KAGEROU』とか、覚えてますか?


まあでも、「順位」をつけると、「傑作かどうか」以上に荒れやすいですよねそれは。このベストアニメも、上位に入っている作品に「箸にも棒にもかからない」というのはなさそうですし。


僕はアイドルにそれほど詳しいわけじゃないんですが、AKB総選挙をみて、ああいう「お金を出せば一人で何票でも入れられる」なんてシステムは不公平なんじゃないか、と思うのだけれど、実際に結果が出てみると、案外、「ああ、こういう順位なんだな」と納得させられてしまうのです。
なんのかんの言っても、お金や手間をかけている人の意見というのは、けっこう正しいのかもしれません。


こういうのって、民放でよくやっているような「有識者による投票」や「同業者による評価」も、それはそれで「予定調和的」な感じになってしまうし、本当に難しい。


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この「声優ランキング」も、山寺宏一さんの技術には脱帽するけれど、声優として演じてきたキャラクターの印象では、野沢雅子さんより上で良いのかなあ、とか、考えてしまいます。
評価軸というのは、人それぞれ。
ただ、だからこそ、こういう「最大公約数としてのランキング」みたいなものが、何から観たら良いのかわからない僕のような人間には、ありがたいところもあるのです。
ある映画評論家が「良い映画の何が良いのかわかるためには、つまらない映画も含めてたくさん観ておくことが必要」というような話をされていました。
そのために『ギャラクシー街道』や『R100』を観ろ、というのはいかがなものか、とは思うのですが(『大日本人』は、僕には割と面白い)、みんなが「つまらない!」と言うものも、観ておくと、それはそれで、自分なりに「引き出し」が増えるような気はします。


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まあ、こういうのは、「こんなランキングはおかしい!」って言い合うのもまた、愉しみのひとつ、だと割り切るべきなんでしょうね。
いっそのこと「経済効果順」みたいなランキングにすると、みんな納得するんじゃなかろうか。
その場合、1位は何だろうな……『ドラえもん』か、『ドラゴンボール』あたり?


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