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”To write a diary is to die a little.”

映画『TENET テネット』を観て思い出した「タイムトラベルもの」7選


 クリストファー・ノーラン監督の映画『TENET テネット』を観ながら、正直「映像はすごいが、理屈はよくわからん。ただ、最後はドラえもん映画でこういうオチを観たような気がする、と思ったんですよ。
 作中では、「これはタイムトラベルではない」というような説明がされていたと記憶しているのですが、「時間がなぜ逆行するのか」「どういう条件下でそれが可能になるのか」が僕には最後まで理解できず、まあ、「考えるよりも感じろ」ということなのでしょう(これも作中に出てきました)。

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あらためて考えてみると、僕はこれまでの半世紀近い人生のなかで、たくさんの「タイムトラベルもの」の作品に触れてきたのです。
小説、漫画、映画、ゲーム……
僕は生きていてこれまで「タイムトラベルしてきた人」に会ったことがありませんし、たぶん、ほとんどの人はそうだと思うんですよ。
でも、「タイムトラベル」を題材にしたコンテンツは、本当にたくさんあるのです。

というわけで、『TENET テネット』はよくわからなかったけれど、僕に影響を与えた「タイムトラベルもの(あるいは「時間」をテーマにした作品)を7つ紹介してみたいと思います。


(1)夏への扉

夏への扉

夏への扉


 たぶん中学生くらいのときに読みました。
 当時の僕は『ログイン』とかで安田均さんのSF紹介記事を読んで、『銀河ヒッチハイク・ガイド』とかにかぶれていたんですよね。


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 しかしまあ、正直言って、ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐもの』とかは、当時の僕にはあまりよくわからず、とりあえず読んだという事実に満足だけしていたのです。
 そんななか、海外SFで、「わかる!おもしろい!」と思ったのがこの『夏への扉』だったんですよ。

 大人になってから読んだら、「なんて主人公に都合の良い話なんだ、うまくいきすぎだろこれ!」と苦笑したのですが、最初に読んだ時代の僕自身が、まだ希望に溢れていたのかもしれませんね。でも、本当に読後感が素晴らしく良い本です。ちなみに、『星を継ぐもの』は何年か前に再読したときは、ものすごく面白かった。


(2)時をかける少女

時をかける少女 (角川文庫)

時をかける少女 (角川文庫)

時をかける少女

時をかける少女

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video


 原田知世さん主演の映画版。原作は筒井康隆さんの小説なのですが、ツツイストの僕にとっては、筒井さんがいつも「長年稼いでくれている作品」だと仰っているのが印象に残っています。一時は、映像作品が若手女優の登竜門的な役割を果たしてもいたのです。
 僕の記憶に残っているのは原田知世さん版なんですよ。
 『ザ・ベストテン』で、原田さんがこの映画の主題歌で出演するたびに「あーいーはー かーがーやーくーふねぇー」のところで音程を外していたんだよなあ。

 最近では、細田守監督のアニメーション映画のほうを思い出す人が多いかも(原作とは完全に別物ですが)。

時をかける少女

時をかける少女

  • 発売日: 2018/04/25
  • メディア: Prime Video



(3)タイムシークレット(ボンドソフト)

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 タイムトラベルを題材にしたゲーム、というのが、マイコンゲーム創成期にはけっこうたくさんあったのです。アップル2のフロッピーディスク両面使用6枚組の『タイムゾーン』なんて、当時「アドベンチャーゲーム」に憧れていた僕は死ぬまでに一度はやってみたいなあ、と思っていたのです(今なら、やろうと思えばできなことはなさそうですが)。
 この『タイムシークレット』、ゲーム雑誌の後ろのほうの白黒広告ページにひっそりと現れた、ボンドソフトという無名の会社が発売したゲームなのですが、山下章さんが『マイコンBASICマガジン』で紹介したのと、口コミで「面白い」ということで、かなりヒットしたようです。当時、僕が持っていたシャープX1のテープ版でも遊べたのがありがたかった。ちなみに、続編の『タイムトンネル』も発売されています。無名の会社が、白黒広告ページからヒット作を生み出したボンドソフト、どこへ行ってしまったのだろうか……


(4)流星ワゴン

流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)


 重松清さんの作品のなかで、いちばん好き。
 重松さんの作品は、読んでいて、「読者を泣かせようとしすぎるのが鼻につく」感じがするのですが、この流星ワゴンは、ちょうどうちに子供が生まれる時期だったこともあり、ものすごく心に沁みました。

夏への扉』が、「タイムトラベルが希望をもたらす話」なら、『流星ワゴン』は、「人は、そう簡単に過去や自分自身から逃れられない」ということを考えさせられる小説なんですよ。そのもどかしさが、人生の重み、みたいなものなのかもしれません。でも、それはそれで、みんなそうなんだな、って、読んだら何か「肩の荷が下りる」ような作品です。

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(5)戦国自衛隊

新装版 戦国自衛隊 (角川文庫)

新装版 戦国自衛隊 (角川文庫)

戦国自衛隊

戦国自衛隊

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video


 近代兵器で武装した現代の軍隊が戦国時代にタイムスリップし、戦国時代の鎧武者たちと戦う、という作品。原作小説は半村良さん。戦国時代の合戦の戦場をヘリコプターが飛んでいる映像を記憶している人は、けっこういるのではないかと思います。
 いやそんなのまともに戦ったら、近代兵器のほうが強いに決まっている……のですが、相手も工夫をしてくるし、自衛隊側も(というか、この設定だとすでに「自衛隊」じゃないですけど)近代兵器や物資の補給・補充がないという致命的な弱点がある。そんななかで、彼らは、戦国時代でどうふるまい、歴史はどう変わるのか……
 荒唐無稽!という言葉がこれほど似合う作品もそんなにないと思うのですが、エンターテインメントとして、本当に素晴らしい作品だと思います。


(6)11/22/63

11/22/63 上 (文春文庫 キ 2-49)

11/22/63 上 (文春文庫 キ 2-49)

11/22/1963

11/22/1963

  • 発売日: 2017/04/12
  • メディア: Prime Video
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 このかなり長い小説は、「過去の事件に介入することによって、歴史を変えようとする男」の話なのです。
 そして、その「変えようとする歴史の分岐点」が、1963年11月22日、テキサス州ダラスで起こった「J・F・ケネディ暗殺」。
 スティーヴン・キングさんは、この作品で「やりなおしは可能だけれど、その回数には限界がある」というルールを説得力のある形でつくりあげています。
 タイムトリップそのものに「説得力」なんてないだろ、と仰る方も少なからずいるとは思うのです。正直、僕もそうだったんですよ・
 でも、この『11/22/63』は、当時(1960年前後)の南部のアメリカの情景を徹底的に丁寧に描き出すというディテールの力がすごいんですよ。
 そうか、いまから半世紀前のアメリカの南部って「こういうところ」だったのか、と納得せずにはいられません。
 タイムトラベルした主人公が、過去の世界でお金を稼いだ方法には、「なるほどなあ」と感心してしまいました。タイムトラベラーも、用心深くないと生き残れない。



(7)STEINS;GATEシュタインズ・ゲート


 みんな大好き(そして僕も大好き)『シュタインズ・ゲート』。このゲームが高く評価されているというのを聞いて、PSPではじめて遊んだときには、『2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)』などのネットスラングがテキストに溢れていて、「今のゲーマーたちは、これを『解読』できるのか?こんな世界についていけるのか?」と驚きました(まあ、僕はついていけるんですけど、というか、まだ「電気街だった頃の秋葉原」の記憶もありますし、というか、今の「オタクの聖地」のイメージのほうが、馴染めないところもあって。

 『テネット』を観て、理論が理解できなくても、その「わからないこと」を含めて受けれてそれなりに楽しむことができたのは、『シュタゲ』を通過してきたことの影響がけっこう大きかったと思うのです。
 ひとつの失敗に対して、過去に戻ってやり直す、という作品はたくさんあるのだけれど、これほど「歴史の改変に失敗し、そのことに苦悩する主人公」を描いた作品は僕の記憶にはありません。観れば観るほど「失敗ルートに置き去りにされた人たち」のことを、ふと考えるようになってしまっていたのです。
 まあでも、結局のところは、キャラクターの魅力が、類似作品との知名度・評価の差なのではないか、とも思います。

 個人的には『CHAOS;CHILD』とかも好きなんだけどなあ……グロテスクだけど。

CHAOS;CHILD - PS4

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  • 発売日: 2015/06/25
  • メディア: Video Game



<おわりに>
 こういうのを書くと、「なんであの作品が無いんだ!」と怒る人が出てきるので書いておきますが、この7作がベストだという気持ちはさらさらなくて、僕の個人史のなかで、いま記憶に残っている「タイムトラベルもの」でしかありません。だから、「なぜアレが無いんだ!」という方は、ぜひおすすめのタイムトラベルものを僕に教えていただければと思います。

 これを書いていて、タイムトラベルものなんて、腐るほどある、と思いきや、案外、「これ!」という作品が浮かんでこなかったのも事実で、それは、僕自身にとっては「意外」だったんですよ。

 あと、『ターミネーター2』みたいに「タイムトラベルをするキャラクターはいるけれど、どうも違うような気がした」ものもあったことを追記しておきます。
 もともと、ちゃんとした定義や基準があって選んだものではないのだけれども。


ベンジャミン・バトン 数奇な人生(字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
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メメント (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
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時空の旅人

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  • 発売日: 1986/12/26
  • メディア: Video Game

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