いつか電池がきれるまで

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『SUPER FRIDAY』で、吉野家の大行列に並ばずにはいられないソフトバンクユーザーの心理学

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無料の牛丼に並ぶのに割高な携帯料金を払い続ける”携帯ユーザー”の知能問題|やまもといちろう(1ページ目) - デイリーニュースオンライン


 大学時代に、車のガソリンを入れるときに、いつも車で1時間くらいかかる、安いガソリンスタンドまで行く、という後輩がいたのです。
 楽しそうにその話をするのを聞き流しながら、僕は内心、「それで得するガソリン代と、そこまでに使うガソリン代、そして要する時間を考えると、それ、かえって損なんじゃない?」って思っていたんですよね。
 いや、彼もどちらかというと、そうやってドライブに出かけることを楽しんでいた節もあったのですけど。


 僕もソフトバンクの携帯電話を使っていて、あの「SUPER FRIDAY」のクーポンを受け取りました。
 2月2日の夜、仕事帰りの夕方に吉野家に行ってみたのですが、店内には大行列が!
 うーむ、牛丼並盛、380円、捨てるのは惜しいが、あの行列に並ぶのもちょっと……
 というわけで、その場は通り過ぎたのですが、用事を済ませたあと、21時半くらいになって、もう一度吉野家の近くを通ったのです。
 なんか駐車場に人がけっこういるけれど、大行列にはなってないみたい。
 使えるのは22時までだし、もう、さすがにお客さんもいなくなったのかな。


 そう思いつつ、駐車場に車を停めると、店の前で店員さんが、「ソフトバンクのクーポンのお客様」に、1週間使える無料券を配っていたのです。
 結局、それをもらって帰ってきたのですが、あらためて考えてみると、吉野家の店内やドライブスルーに1時間くらい並んで牛丼並盛を1個もらうよりも、この無料券のほうが、はるかに便利ですよね。
 1週間のあいだなら、どこの吉野家でも使えるらしいし、自分で食べたいタイミングで使えばいいし、行列に長時間並ばなくてもいい。
 これって、最初から、「1か月に4杯牛丼が無料になるクーポン券」を配布して、期間内ならいつでも使えるようにしてくれればよかったのでは……
 ちゃんとした「無料券」が用意されていること自体、ソフトバンク吉野家も、こういう「売り切れ」を想定していた、ということでもありますし。
 それにしても、あの日の店員さんは大変そうだったな。バイト代とかは、割増になっていたのだろうか。
 結局、あの『SUPER FRIDAY』って、一定の期間にお客が集中して大混雑し、話題になることまで想定して行われているキャンペーンなのでしょうね。
 わざと席数を減らして、行列をつくらせるラーメン店のような。


 そもそも、現金値引きにしてもらえれば、浮いたお金で好きなものを食べたり買ったりすればいいだけの話ではあります。
 でも、1か月に1000円携帯料金が割引になっても、今月の牛丼並盛1杯無料ほどには盛り上がらないし、話題にもならないと思われます。


 僕自身、クーポンが送られてきたときには、「いい歳のおっさんが、380円のために行列に並べるかよ、ケッ、だいたい、そのお金って、もともとの料金に含まれているんだろうよ」とか、斜に構えていたんですよ。
 しかしながら、当日になってみると、「そういえば、牛丼並盛1杯無料」なんだな、と気になってくるのです。
 食べ物って、それについて考えているだけで、食べたくなってきませんか?
 僕も吉野家の牛丼を食べたくなってしまったのです。
 いや、待て、わざわざ380円のために、こんな混雑する日に行かなくても、明日でも明後日でも良いじゃないか。
 でも、そうなると「今日なら無料のものを、わざわざお金を払って食べる」ことに抵抗を感じてしまう。
 僕が他メーカーのユーザーで、手元にクーポンがなければ、「どうだっていい」し、そのくらいの価格のものを「タダでもらう」ために長時間並んだり、日々のルーチンを崩すなんてばかばかしい、と思うんですよ。
 ところが、手元にクーポンがある状況だと、「これを使わないと、自分だけが損をしてしまうのではないか」という気持ちが、沸々とわいてくる。
 そう、僕は、牛丼並盛が「もらえる」というよりは、もらわないと、「自分だけが損をするのではないか」という感情にとらわれてしまったのです。
 客観的にみれば「コストパフォーマンスが悪い行動」なのは百も承知なのだけれど。
 もちろん、こういう「お祭り」に参加したい、という野次馬根性も無いとは言えない。
 そういう意味では、よく考えられたキャンペーンではありますよね。
 希望者は申し出ればクーポンが送られてくる、とかであれば、ここまで混雑しないはず。
 行動心理学によると、人は、一度手にしてしまったものを失うことを恐れる生き物なのだそうです。
 もらえるはずの1万円をもらえないより、今もっている1万円を落として失うほうが、精神的ダメージがはるかに大きいのだとか。
 どちらも同じ「1万円のマイナス」なのに。


 金銭感覚、というのは人それぞれ、でもあるんですよね。
 「オマハの賢人」として知られる、投資家・ウォーレン・バフェットさんに、こんなエピソードがあるそうです。

 バフェットとビル・ゲイツが大学で公開対話を行った時、「100ドル札を落としたら拾いに戻りますか。貧しい学生に拾わせてあげますか」と質問された。バフェットは「もしビルが10セント落として出て行ったら、私が拾う」と答えた。


 バフェットさんであれば、落ちている100ドルを拾う時間を節約して他のことに使ったほうが、理論上はコストパフォーマンスが良いはずです。
 それでも、バフェットさんは「10セントでも拾う」と答えた。
 すごい人の金銭感覚というのはよくわからないな、と思うか、そういう「徹底した倹約志向」を持ち続けることは、理屈の上でのコストパフォーマンスよりも大事だ、と解釈すべきなのか。


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