僕はこの記事を読んで、すごく感心したのです。
とくにこの部分。
「言葉の選び方」も洗練されていた。「幸せになってね」と願うファンに向けて「ありがとう」と感謝しつつも、「ももち節」で返した言葉が一例だ。
「私は見ての通りビジュアルもいいし、愛嬌(あいきょう)もあるし、運も持っているので」
「ビジュアル」は「いい」、「愛嬌」は「ある」、「運」は「持っている」。主語と述語が、全て違う。非常にきれいな、テンポの良い日本語になっている。自分もそうなのだが、こういった時「ビジュアルもいいし、運もいいし」「愛嬌もあるし、運もあるし…」など述語が重なりがちだ。ステージ上や、記者からの質問に対して瞬発的にフレーズを返せるというのは、「日本語力」が高いと言えるかもしれない。
僕はこうしてブログを書いているのですが、ときどき、以前のものを読み返して、反省することがあるのです。
「……だと思う」「……じゃないかと思う」と「思う」が続いていたり、語尾に「……なのです」三連発になっていたりすることがある。
そういうのって、けっこう読み返してみると見つかるんですよ。なんで推敲したときに気付かなかったのか。
そういう「自分の考えを書いたとき」用に「思った」「考えた」「感じた」「……のような気がする」などを基本的にはバランスよく、少なくとも、2回続かないように配置しよう、という意識は持っています。
読む側として、「面白いことが書いてあるのに、読みづらいブログ」って、文の終わりがみんな「思う」になっていることがあるんですよね。
そういうところに気がつくかどうかって、けっこう大きいのではなかろうか。
ただし、この「……と思う」「……と考える」も、個人ブログで、あえて書く必要があるのか、という問題もあります。
ここに書いてある時点で、僕が思ったことや考えたことなのは明白だから。
接続詞の「そして」「しかし」などが多くなりがちなのは、自分でも、ムダだなあ、と反省しています。
大概は、接続詞が無くても違和感がないか、かえって邪魔になっている。
その一方で(これも、「しかし」「でも」などが続くときの言い換えとしてよく使います)、こういうのを入れることによって、ちょっと話し言葉っぽい雰囲気になるような気もします。
「文章がうまい」ことをアピールしたくて、やたらと難しい単語を使ったり、凝った言い回しをしたりする人って少なくないのです。
しかしながら、「ひとつの文は極力短く、主語と述語をひとつずつにすること」と、「同じ述語を続けて使わないこと」「不要な接続詞を削ること」のほうが、読んでもらうためには大事だと思うんですよ。
僕の場合、読み返して修正することが多いのですが、嗣永さんは、リアルタイムでの会話のなかで、「主語と述語がすべて違っていて、聞き心地の良い日本語を選択している」のです。
これは、本当にすごい。
ずっと前に、テレビでインタビューを受けたことがあるのですが、日ごろ、「マスコミやメディアなんて、偉そうにしやがって、ケッ!」と思っていた(はずの)僕は、マイクを向けられたとたんに「自分が求められているコメントをしようとして、しどろもどろになる、舞い上がった中年オヤジ」になってしまいました。
そりゃ、嗣永さんは芸能人で、プロだし、慣れているというのはあるのでしょうけど、ここまで完璧な言い回しができるのはすごい。
「同じ述語だと、なんだかすっきりしない」と感じていて、「こういう場合、どう言えば心地よくなるのか」を普段から考えているのでしょう。
この記事の場合は、そこにスポットライトをあてた取材者も「良い耳をしているなあ」と思います。
ちなみに、このやりとり、WEBに掲載されていた一問一答では、こうなっているのです。
www.nikkansports.com
-今後は
「卒業を決めたのは、アイドルと同じくらい興味のあった幼児教育というものがあって、こういう決断をしたので、しっかりお勉強したいなって思いますし、ファンの方から『ももち絶対に幸せになってね』って言葉をかけてもらったんですね。でもまあ私はビジュアルもいいし、愛嬌(あいきょう)もあるし、運も持っているし、大丈夫な気がするので、私は何よりも、ファンの皆さんの幸せを祈っています」
元のやりとりのほうが、嗣永さんの「自分のことよりも、ファンの幸せを祈っている」というメッセージが強く伝わってきますよね。
自信満々に自分褒めをしているようで、最後に「大丈夫なので」ではなくて、「大丈夫な気がするので」と、ちょっとだけ不安ものぞかせているところが、見事だよなあ。
AKB48が「未完成なアイドルの成長や葛藤をコンテンツにして成功した(人もいる)」ことを考えると、嗣永さんは、いまの時代のアイドルとしては、「完成品でありすぎた」のかな、とも思うのですけど。
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