上記のエントリを読みました。
いま1歳半の次男が、ちょうど『アンパンマン』にハマっておりまして、僕もよく一緒に見ているんですよね。
なかなか満足してくれない子どもたちが、なぜか画面に釘付けになる『アンパンマン』。
親としては、アンパンマンにいくら感謝してもし足りないくらいです。
TSUTAYAに行っても、『アンパンマン』のDVDは「貸し出し中」が多くて、きっとうちみたいな家庭も多いのだろうな、と想像してしまいます。
各話の最後の「アンパ〜ンチ!」「バイバイキ〜ン」ピューーン(飛び去っていくバイキンマン)
「バイキンマン、待ってよ〜(ドキンちゃん)」
という流れはまさに様式美というか、これ毎回セル画(最近は、セル画じゃないんでしょうけど)を使い回しているんじゃないか、と疑念を抱いてしまうくらいです。
でも、何度もみていると、この「お約束」が、なんだか心地よかったりもするんですよね。
次男にとってどうなのかは、わからないけれども。
この「なぜアンパンマンはバイキンマンを殺さないのか」という疑問を抱いている人は少なからずいるみたいで(だって、けっこういつも酷い目にあわされているし、全然懲りませんからね、バイキンマン)、やなせ先生は、著書のなかで、その理由らしきものを語っておられます。
『人生、90歳からおもしろい!』(やなせたかし著/新潮文庫)より。
ところでインタビューの時に必ずといっていいぐらい聞かれるのは、「今までつくってきた多くのキャラクターの中で何が一番好きですか?」という質問で、これが実に答えにくい。
なにしろアンパンマンシリーズだけで2300ぐらいある。このすべてにそれぞれ思い入れがあるから、どれかひとつにしぼると他のキャラに嫉妬されるじゃないですか。
どれが好きとはとても言えない。キャラは全部自分の愛する子どもたち、運、不運、売れる売れないがあって、一度だけで消えてしまう短命の者もあるが、作者としてはみんな可愛い。
しかし成功したキャラということになると、アンパンマンは別格としてやはりバイキンマンがとびぬけていますね。
最初にはただ敵役をつくろう。食品の敵だからバイキンだろうとごく軽い気持ちで蠅を擬人化したような感じで描いたのです。
バイキンが敵役で登場してメーンキャラをはっているのは世界中でアンパンマンシリーズだけではないのかな?
ところがこれがズバリ適中!
なぜかといえば、生きるということはバイキンとの戦いを避けて通ることは不可能!
それではバイキンを全滅させればいいのかといえば、その時は人間そのものも死滅してしまう。パンも酵母菌、イースト菌がなければつくれない。しかしインフルエンザ菌とかいろいろ怖いバイキンもいて戦わなくてはいけない。健康であるということは善玉菌と悪玉菌のバランスが良好な状態。
これは国家の成立についてもいえることで、独裁、専制はファシズムの危険がある。
だから、アンパンマン対バイキンマンの戦いは永久にくりかえされるわけで、そこにバイタリティーが生まれる。
かなり強引なキャラも多いアンパンマンなのですが、「バイキンマン」に対する、やなせたかし先生の思い入れは、かなり強いみたいです。
酵母菌やイースト菌が「バイキン」なのかどうか、というのは疑問ではあるのですが、菌の善悪なんていうのは人間にとって役に立つか、という人間側の都合でしかないのも事実です。
人間としては、バイキンにやりたい放題にさせてはおけないけれど、絶滅させてしまうのもまた「不健康」なのだ、というのが、やなせ先生の考えだったのでしょう。
もちろん、それはひとつの「理念」みたいなものであって、現実的には「いちいち悪役をつくっていては、新しい敵役をつくるのも大変だし」みたいなのとか、『ドラゴンクエスト』で、堀井雄二さんが、敵を「たおした」ではなく、「やっつけた」と表示するのにこだわった、というような「子どもに対する気配り」もあるのだとは思うのだけれども。
ちなみに、すっかり薄汚れた大人になってしまった僕は「これ、いちばんタチが悪いのは、バイキンマンじゃなくて、ドキンちゃんじゃないのか……」と思うことが多いんですよね。
「○○と遊びたーい!連れてきてよバイキンマン!」
「ええーっ、なんで俺が」
「オ・ネ・ガ・イ、バイキンマン!」
「しょうがねえなあもう……」
たまには断れよ、バイキンマン!!
自らの手は汚さず、バイキンマンをケイマン諸島のように利用して、悪事ロンダリングを繰り返しているドキンちゃん!
子供たちは、峰不二子の前に、ドキンちゃんを目の当たりにしているのです。
こんなワガママでカワイイ女の子に奉仕し続けているバイキンマンには、男の人生の悲哀が詰まっているような気がしてなりません。
それじゃ、バイバイキ〜ン!
オイドル絵っせい 人生、90歳からおもしろい! (新潮文庫)
- 作者: やなせたかし
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/08/27
- メディア: 文庫
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