昨夜、『Qさま!!』の3時間スペシャルを視ていました。
有名進学校の「超高校級の勉強家」たちが、難しい問題からどんどん解答していき、最後には簡単な問題しか残らなくなっているのをみて、「ああ、僕はこの高校生たちの倍以上生きているんだがなあ……」なんて、やや暗い気持ちになったりしながら。
うちの息子は、こんなふうにはなれないだろうな……
（なったらなったで、いろいろ考えてしまうところもありそうだけど）
選抜された東西メンバーのハイレベルな戦いに圧倒されつつ視ていたのだけれど、途中から、僕はひとりの出演者が気になってきたのです。
それは、伊集院光さん。
『Qさま!!』では、他の出演者がわからないような難しい問題を答えられる「エース」のポジションにいるのが、ロザン宇治原さん、やくみつるさん、宮崎美子さん、村井美樹さんなどの「インテリ芸人」（やくさんは「芸人」なのか？というのは考えると長くなりそうですが）たち。
基本的には「おバカ比べ番組」ではないので、それなりに答えられるはずの人が出演している番組なのですが、問題もけっして簡単ではありません。
そのなかで、長年レギュラーである伊集院光さんのポジションは「試験問題的なものでは宇治原さんや村井さんにはかなわないけれども、生物に関する知識や発想の豊かさで、他の人には解けないような難しい問題にも答えてしまうことがある曲者」という感じなのです。
10人のメンバーがいて、後ろのほうに「できる人」が配置されるというシフトでは、７〜９番目くらい、といったところが定位置です。
その伊集院さん、昨日の番組では、高校生たちのレベルの高さもあって、真ん中からやや前半くらいの順番で解答していたのです。
そして、今回はとにかく時間を消費しないように一番易しい問題を短時間で消化することに徹していたんですよね。
それをみて、「ああ、この人は全体を観て、そのなかでの自分の役割をきちんと果たすことができる賢明な人なんだなあ」と僕は思ったのです。
『Qさま!!』って、基本的には「賢いアピール」が重視されがちで、「インテリ芸人」はなるべく難しい問題に答えようとするのです。
伊集院さんも、ふだんのこの番組内では、けっこう難しい問題に挑戦することが多いのです。
というか、後ろのほうの順番だと、難しい問題しか残っていませんしね、問題のレベルが高くなればなるほど。
昨日の「超高校生」たちはすごくレベルが高かったのです。
だから、「難しい問題は、彼らに任せる」というのが、正しい戦略のはず。
ところが、全体のレベルをみて、そのなかでの自分の役割を的確に判断するというのは、そんなに簡単なことじゃないのです。
普段、中軸を任されている「インテリ芸人」たちは、プライドもあるし、つい「自分にとってのリミットに近いような難しい問題」に答えようとしてしまう。
そして、時間を浪費してしまうのです。
普段４番を打っている選手は、オールスターの中では自分がいちばん打てないバッターであっても、バントするのには抵抗があるのです。
ところが、伊集院さんは、昨日の番組内では、淡々とチームにとっての「つなぎ役」に徹していました。
ときにはポイントゲッターになることもある伊集院さんだけに、その献身っぷりが、なんだかとても印象的だったんですよね。
宇治原さんとかやくさんとかは、「難しい知識をひけらかす芸」をこの番組内では要求されているので、つなぎ役に徹することはできないのはわかっているのです。
ただ、昨日の番組のなかで、「今回の自分の役割はこれだ」ということを自分で判断して、ふだんとは違う役割を意識的に果たしていたのは、伊集院さんだけだったように思われました。
だから、目立っていたんですよね。「いちばん簡単な問題をパッと答えるだけの存在」だったのに。
ちなみに、伊集院さんは、以前、西村賢太さんと玉袋筋太郎さんとの「同級生鼎談」のなかで、こんなことを仰っていました。
「子供のころは近所で賢い子供として通っていたのに、いつのまにか0.68倍の高校にも落ちてしまった自分が、人生逆転するには落語家にでもなるしかないと思っていた。そんな自分が東大とか京大とか出ている人たちと一緒の『インテリ』の枠の中に入れられるのは、それはそれでひとつのギャグというかネタとして成り立っているんじゃないか」
こういうスタンスで、「インテリ芸人」とか呼ばれてしまう自分を客観的にみているからこそ、あの番組のなかでも「自分のポジション」を柔軟に判断できているのかもしれません。
「インテリと呼ばれて、その気になっている人」は、自分のプライドを守るために、かえって全体にとってはマイナスな行動をとってしまうこともある。
「自分の立ち位置の見極めのうまさ」が、伊集院さんの芸人としての成功の原因でもあるし、「賢明さ」でもあるのだなあ、とあらためて感じた番組でした。
あくまでもこの番組内だけのことですし、やくさんや宇治原さんがこれみよがしにバントするのも、それはそれで違う、という話ではあるんですけどね。
