いつか電池がきれるまで

”To write a diary is to die a little.”

「結婚」について考えるための、7人の作家のことば

参考リンク(1):「結婚したくない人」の気持ちがわかりません - 体調わる子の毒吐きブログ

参考リンク(2):釣り解説"「結婚したくない人」の気持ちがわかりません" - 斗比主閲子の姑日記


最近は「炎上商法」のみならず、「炎上」に「消火活動」までセットになっているみたいで、なんてマッチポンプな世界だ!などと思いつつも、これもひとつのきっかけなので、便乗して「結婚」について、さまざまな作家が言及したものを集めてみました。
といっても、あんまり歴史的な名言として知られているもの(「結婚は人生の墓場である」とか)ではなくて、最近の言葉ばかりです。
ちなみに、最後の村上春樹さんの言葉以外は、僕が2013年に読んだものです。
(本のタイトルのところは、それぞれの本の感想へのリンクになっています)


『女子漂流 ーうさぎとしをんのないしょのはなしー』での、三浦しをんさんの言葉。

 でも、正直に言おう! 私はどうしても、どうしても、モテに興味が持てない!(シャレではない)。入浴も男受けする服もトークスキルも、心底どーでもいい! もっとほかに、自分にとって重要なこと(漫画とか)があるような気がしてならないのだ!


 しかし、ひとと会ったときには、それなりに話を合わせるようにしている。「モテ」や「恋愛」や「結婚」に興味がないと断言するのは、この社会においてはなんとなく少数派かなという気がして、勇気が出ないからだ。


 そこで、「いいひとがいたら、むろん交際や結婚もやぶさかではない」という態度を取ってきた。そんな態度を取っても、「圧倒的にモテない」事実は覆らないのだが、周囲と違和を生じさせないためには、「恋愛戦線から脱落するのをよしとはしていない」というポーズが重要だと思ったのである。「モテにも恋愛にも結婚にも興味ないなんて、ド変態にちがいない」。そんな無言の圧力を勝手に感受し、実体のない「世間」に対して予防線を張ってきたのだと言えよう。


「自意識」や「他人の目」から自由になりきるのは、たぶん不可能だろう。だが、うさぎさんと話して、ちょっと勇気が出たというか、吹っ切れた。


町山智浩さんの『トラウマ恋愛映画入門』の「ブルー・バレンタイン」の回より。

「『赤い影』は、結婚二十年目の風景だ」ニコラス・ローグは1996年のインタビューで製作の動機を語っている。


「恋愛の初めは、カップルの一人が『今日は窓を開けたまま寝たいな』と言うと、もう一人は『あなたがそうなら、いいわよ、ダーリン』と優しく受け止めるだろう。しかし、結婚して十年も経つと『その窓閉めてよ! 子どもが風邪ひいちゃうでしょ!』と怒鳴るようになる。私は恋愛と結婚生活の違いに興味がある。結婚生活はパラダイスだとされているけれども」


林真理子さんの『野心のすすめ』より。

 野心は、恋愛欲、結婚欲、性欲とも結びついている。野心が希薄になっているから、少子化が進んでいるということもあるのではないかと私は考えています。とはいえ、よく言われる「草食系男子」の増加や、男性の経済力の低下だけが原因だと思っているわけではありません。


 結婚相手を高望みする野心を失った女性にも問題があるのではないか。


 もちろん、女性がバブルの頃のようにやみくもに「三高」男性を求めなくなったことについてはとても健全な時代になったとは思います。しかし、男性の職業や年収などにはさしてこだわらず「私を好きになってくれる、優しい人なら」という女性たちがなかなか結婚できないのはなぜでしょうか。


 私が考える答えはいたってシンプルです。女性が「ハードルが低い」と思うような男性には、心をすっかり奪い取られるほどの魅力がないからだと思います。


津村記久子,深澤真紀さんの『ダメをみがく: “女子”の呪いを解く方法』より。

深澤真紀:たとえば私が講演に行くと、聴衆の女性が「先生はいつもすっぴんなの?」って聞いてくるから「テレビに出るときはメイクされてしまいますけど、普段とか講演のときはすっぴんですね」って言うと「結婚してないでしょう?」「いえしてますよ」「じゃあ、そんなことだと旦那に逃げられるわよ」って。「そうなんですかね。うちの夫は化粧してる女が苦手みたいです」って答えたら、「それはね、先生、男のや・さ・し・さ」って言われましたけど(笑)。


 その人はバツ3だそうで(笑)、中途半端な男経験がある人ほど、そういうことを言いたがる。でも世の中に30億いる男の中から1人としかつきあってなくても、100人とつきあったって、しょせん誤差レベルですからね。世の中のすべての男がわかるわけではないし。しかしほんとに、女性のこういう相互監視というか「ちゃんと化粧しろ」みたいなのは大変ですよ。


西原理恵子さんの『スナックさいばら おんなのけものみち』より。

(「結婚する男の最低条件って、何ですか?」というお題に、東京都の33歳女性・既婚から送られてきたメッセージに関して)

 結婚のサイテー条件は「定職」。定職ですよ、定職。朝起きて、決まった時間に出勤して、仕事! 社会への適応力! もう、いい年してアルバイトとか、社会保険入ってないとか、年金払ってないとか、職場に給料前借りしているとか、うんざり!

 この不況でしょ。ぶっちぎり。ダントツだったの。「働かない男はもう、まっぴら!」というご意見が。


 えびこさんも、痛い目みたんでしょうか。大事よね~、働いてるって。てゆうかココ、ハズして何とれっていうの。人生の基本だもん。きっとね、旦那がリストラされたとか求職中とかでツライ時期を耐えてる方も、いっぱいいらっしゃると思うんです。ああ、みなさんの悲鳴が聞こえるー。


乙武洋匡さんの『自分を愛する力』より。

(奥様は早稲田大学に現役合格し、弁護士の資格をとるために勉強していた優秀な女性だったという話に続いて)

 しかし、そんな彼女にも弱点があった。小さな頃から、人づきあいが苦手だったのだ。小学生の頃はクラスメイトとウマが合わず、休み時間になると図書室にこもって本を読んだり、図鑑をながめたりしているのが唯一の楽しみだったという。中学時代も、おしゃべりする間柄の友人は何人かいたが、どこかで孤独を感じていたのだそうだ。高校生になって、「ようやく自分のことを理解してくれる友人に出会えた」そうだが、それでも彼女が自己肯定感を抱くまでには至らなかった。


 彼女が司法試験に向けて勉強に励んでいた理由も、「私のような人間が、結婚してだれかと暮らしていくことなど考えられない。長い人生、どうせひとりで生きていくことになるのだから、しっかりとした収入を得られる仕事につこう」というものだったというから、じつに興味深い。


 そんなところに、僕がひょっこり現れた。彼女とは、まるで正反対。手も足もないのに、なぜか自己肯定感に満ち満ちているーー。じつは、僕らが出会う前、彼女は一度だけ大学のキャンパス内で僕と目撃したことがあったという。もちろん、僕がまだ『五体不満足』で世に知られるずっと前のことだ。


「なんか友達にいっぱい囲まれてて、楽しそうに笑う人だなあって」


村上春樹さんの『村上春樹 雑文集』より。

安西水丸さんの娘さんの結婚式に、村上春樹さんが寄せたメッセージ)


 かおりさん、ご結婚おめでとうございます。僕もいちどしか結婚したことがないので、くわしいことはよくわかりませんが、結婚というのは、いいときにはとてもいいものです。あまりよくないときには、僕はいつもなにかべつのことを考えるようにしています。でもいいときには、とてもいいものです。いいときがたくさんあることをお祈りしています。お幸せに。


 とりあえずこうして並べてみたのですが、まとまりのない感じになってしまいました。
 でも、「結婚」っていうものについては、本当に「人それぞれ」だとしか言いようがないんですよね。
 三浦しをんさんみたいに「そもそもあんまり恋愛に興味がないというか、恋愛よりも優先すべきことが自分にはある」と考えている人もいれば、「ずっとそう思っていたけれど、なぜか結婚しようと思う相手がみつかった」というケースもある。
 経済力や性的な魅力を求める人もいれば、安心感を求める人もいる。
 結婚してずっと幸せだという人もいれば、時間が経てば離れていく、という人もおり、「同じ相手との結婚生活のあいだにも、幸せだったり、そうじゃなかったりもする」こともある(というか、たぶん大部分の人は、そんなものじゃないかと)。


 結婚するのもしないのも、どんな結婚生活をおくるのかも、「万人向けの正解」っていうのは、たぶん、無いのだと思います。
 だからこそ「結婚」について語るのは難しいし、これまでも多くの人がいろんなことを言ってきたのです。
 とりあえず、それぞれの人が、自分なりの正解らしきものに辿り着ければいいんでしょうけどね。
 


トラウマ恋愛映画入門

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野心のすすめ (講談社現代新書)

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ダメをみがく: “女子”の呪いを解く方法

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自分を愛する力 (講談社現代新書)

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村上春樹 雑文集

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