- 作者: 村上 春樹,フジモトマサル
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/07/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/07/24
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単行本のオビに「累計1億PV突破 超人気サイトが単行本と電子書籍に!」と書いてあって、「PV」っていうのは、もう略語として世間的に認知されている、と新潮社は判断しているのだな、とちょっと驚きました。
PVって、「プロモーションビデオ」じゃないのか。
ちなみにこの電子書籍版、「村上春樹作品、日本初の電子化」なのだそうです。
細かいことを言うと、『文藝春秋』に掲載された短編が、雑誌ごと電子化されていたことはあったんですけどね。
村上春樹ファンとしては、さて、どちらを買おうか、と悩んだ末に、結局、両方買ってしまいました。
実は先に「電子書籍版」を買ったのですが、紙のほうも欲しくなってしまって。
質問内容的には、電子書籍の「コンプリート版」には、単行本に収録された質問も含まれているので、「電子書籍版だけで良いだろう」と思ったのですが、紙の本の質感と、率直なところ、3716問は、あまりにも圧倒的なボリュームなので、読み疲れてしまうところもあって。
いくら「多いほうがお得」とはいえ、僕もずっとこればかり読んでいるわけにはいかないし、読んでも読んでも残りが減らない、というのは、嬉しくもあり、つらくもあるのです。
面白そうなものとか、興味のあるテーマだけ「拾い読み」すれば良いのでは?と思われるかもしれませんし、僕もそう考えていました。
でも、僕は「そこに本があると、隅々まで読まないともったいない、というタイプ」みたいです。
この電子書籍を前にして、実感しました。
それに、単行本を手にとってみると、「どういう基準で、この3716問から473問を選んだのだろう?」と興味がわいてきて。
いやまさか、先にボリュームが多いほうを購入しておきながら、少ないほうまで買うことになろうとは、自分でも予想外です。
もともとネットで行われていたということもあり、読みやすさでは、むしろ電子書籍版のほうが上かもしれません。あのサイトそのままの感覚で読めますし。
紙版は、単行本としてはやや大きめのサイズで、なんと四段組み。けっこう目が忙しい。
個人的には、電子書籍慣れしている人であれば、電子書籍版のほうが良いだろうな、とは思います。
村上春樹ファンがスキマ時間に何問分か読むにはちょうど良さそうだし。
これを読みながら考えていたのですが、こういう「とりあえず全部入り」みたいなものこそ、読者が「面白かったやりとり」みたいなものにオンラインで付箋をつけていって、「みんなのオススメの質問をピックアップする」という機能があると便利かも。
純粋に「他の人は、どういうのを面白いと感じているのだろう?」というのは、興味もありますし。
この「紙版はベスト盤、電子書籍版は全部入り」というのは、こういう形式の本だからこそできるのかもしれませんが(小説で両者の分量が8倍も違う、というのは難しいと思うので)、なんとなく停滞していた「紙の書籍と電子書籍の差別化」に、一石を投じるものでしょう。
ましてや、「あの村上春樹」の本なのだから。
電子書籍の初期には、村上龍さんが『歌うクジラ』で、「音や映像と小説の融合」に挑戦されたこともありましたが、最近はなんとなく「既存の本をKindleで読めるようにすれば十分」という感じになってきていたんですよね。
実際のところ、電子書籍を読むシチュエーションには「音が出てもらうと、ちょっと困る」という場合も少なくないのですが、新しいメディアに対して、あまりにも保守的であったのも事実です。
写真集とかでも、紙版では「物理的な制約」があるものでも、電子書籍版では「たくさんの写真を収録する」ことが可能なはず。
ただ、「なんでもたくさん入れればいい、というものではなくて、『これを見てほしい』というのを選ぶのが写真家の仕事」でもあるのかもしれません。
あまりに母数が多くなると、今回の僕のように、「キュレーターに選んでほしい」と感じる人のほうが多いのではなかろうか。
興味深い試みが詰まっている作品なので、村上春樹ファンの皆様は(それ以外の方も)、ぜひ。
しかし、3716問、読むだけでもこんなに大変なのに、回答した村上さんは大変だっただろうな……
kotoripiyopiyo.com
個人的には、このエントリでも紹介されていた、この村上さんの回答が大好きで、いつも「機関車が来た!」と自分に言い聞かせております(残念ながら、逃げおくれて、よくはね飛ばされていますけど)。
(夫婦喧嘩で仲直りするコツは? と聞かれて。2通分)
あなたが平謝りに謝るしかないじゃないですか。コツもへったくれもありません。もう大人なんだから、そんなわかりきったことをいちいち質問しないでください。ただひたすら頭を下げて謝りましょう。それがいちばんです。情けない? 何を甘いこと言ってるんですか。謝っているところをテレビ中継されないだけ、ありがたいと思わなくちゃ。
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あのですね、こちらに向かって驀進(ばくしん)してくる機関車に向かって怒鳴ったりはしませんよね。それとだいたい同じことだと思われたらいかがでしょう? 無駄なエネルギーは使わないようにして、身の危険は素早く避ける、これしかありません。人生の知恵です。がんばって平謝りしてください。
ああ、たしかにこれぞ、人生の知恵。